「いちごの植物工場ではハチが飛ばないけど、受粉はどうすればいいの?」と悩んでいませんか?
- 植物工場はLEDだから紫外線がなくてミツバチが飛ばない
- 受粉しないといちごの実がきれいにできない
- ミツバチは糞や死がいが発生するから異物混入の恐れがある
- 既存のいちごの植物工場はどうやって受粉しているの?
こんな悩みや疑問がある方は、ぜひ最後までお読みください。
10年ほど前までは、「いちごの植物工場では紫外線がないからハチが活動しない。そのため、きれいな形のいちごができない…。」と言われていました。
しかし、今ではいちごの植物工場でも受粉させる方法がいくつもあります。
弊社はいちごの植物工場での生産を研究しています。
これまでに6社に対して、いちごの植物工場のコンサルティングを実施してきました。
その知見からいちごの植物工場を始めたい方や運営中の方のお悩みにご回答します。
セイヨウミツバチで受粉
いちごの完全閉鎖型の植物工場では、セイヨウミツバチを使うことがあります。
ビニールハウスでのいちご栽培では、セイヨウミツバチを使うことが最も多いです。
セイヨウミツバチの巣箱は1箱に4,000〜8,000匹が入っています。
植物工場ではハチは飛ばない?
「でも、LEDでは紫外線が出ないからセイヨウミツバチは飛ばないのでは?」と思うかもしれません。
10年ほど前までは、植物工場では紫外線がないからハチで受粉ができないと言われていました。
しかし、植物工場の構造や光源の種類、LEDの種類によってはセイヨウミツバチでも受粉が可能です。
UV-A(近紫外線)を出すライト
例えば、UV-A(近紫外線)を出すライトを利用する方法があります。
ただし、栽培株数や栽培室の温度、セイヨウミツバチの頭数などによっても受粉の成功精度に差が生じます。
LED照明には紫外線をほぼ照射しないタイプと紫外線を含むタイプがあります。
市販されているLED照明の多くは、紫外線を含みません。
しかし、近紫外LEDまたは紫色LEDにより、赤色・緑色・青色の蛍光体を光らせる方式の場合には、紫外線を発生させます。
引用元:LEDは紫外線が出る?
ハウス栽培でも紫外線カットフィルムだとハチは飛ばない
ビニールハウスのいちご栽培でも、紫外線を完全にカットしたフィルムで被覆するとセイヨウミツバチは活動しません。
しかし、紫外線を数割カットした程度のフィルムで被覆すると、セイヨウミツバチは活動します。
セイヨウミツバチを活動させるためには、少量の紫外線があれば十分なのです。
また、天候(日射量)や気温でもセイヨウミツバチの活動は変化します。
クロマルハナバチで受粉
いちごの室内栽培の植物工場ではクロマルハナバチも使用できます。
ただし、北海道ではクロマルハナバチの使用が禁止なので、北海道では使用できません。
クロマルハナバチは巣箱に数十匹が入っています。
クロマルハナバチは過剰訪花に注意
クロマルハナバチはセイヨウミツバチよりも活動量が多いので、必要な頭数は非常に少なくなります。
大雑把にいうと、クロマルハナバチ1匹でセイヨウミツバチ20匹くらいの訪花を行います。
逆に言うと、使用頭数が多いと、いちごの花が過剰訪花によって傷んで実が奇形になります。
最近ではクロマルハナバチの頭数が少ない巣箱も販売されています。
クロマルハナバチは巣門の開閉で調整
クロマルハナバチを使うときは、巣門の開閉で活動頭数を調整できます。
クロマルハナバチはセイヨウミツバチよりも活発に活動する温度が低いので、低温で管理する施設には合っています。
また、セイヨウミツバチと同様にクロマルハナバチも紫外線がまったくない環境では活動しません。
何らかの方法(施設や光源)で紫外線を確保する必要もあります。
ヒロズキンバエ(ビーフライ)で受粉
いちごの閉鎖型の植物工場では、ビーフライというヒロズキンバエを受粉に使うこともあります。
ヒロズキンバエは、ビニールハウスでのいちご栽培でも使用されています。
ヒロズキンバエは紫外線がまったくない環境でも活動します。
そのため、紫外線量を気にする必要がありません。
定期的な追加が必要
ただし、施設内では繁殖しないので2週間おき程度の間隔で、追加する必要があります。
また、2〜3週間程度で寿命を迎えるので、ハエの死がいが発生します。
・羽化の早さは個体差があります。時期によっては、ほぼすべての蛹が羽化するのに2週間以上かかることがあります。
・ビーフライの寿命は2~3週間と短く、ミツバチと比べてハウス外に逃亡しやすいため、1~2週間ごとに継続した導入をお勧めします。
引用元:ビーフライ&ビーフライヤー
農薬に特に弱い
セイヨウミツバチやクロマルハナバチも農薬の影響を受けますが、ヒロズキンバエは特に強く影響を受けます。
そのため、ヒロズキンバエを使う場合は農薬(殺虫剤)の使用は極力控える必要があります。
スピノエース顆粒水和剤とディアナSCは、殺虫効果が高く散布後2週間以上は羽化した成虫への影響が残りますので、ビーフライ利用中は使用できません。
また、合成ピレスロイド剤もビーフライ成虫に対して著しく高い殺虫効果を示します。
引用元:ビーフライ&ビーフライヤー
人間の手作業(障害者雇用)で受粉
いちごの植物工場では、人間の手作業により受粉を行う場合があります。
人間による受粉作業は、「人工授粉」と呼ばれています。
人工授粉には梵天(耳かきの反対側のフワフワ)や柔らかい筆を使います。
梵天は花粉の受粉用のものがおすすめです。
障害者雇用では作業が多いことはメリット
作業はパート雇用などの従業員が行う場合もありますし、障害者雇用の障害者が行う場合もあります。
障害者雇用の場合は、たくさんの障害者を雇用することが重要なので、受粉作業があることが逆にメリットになります。
そのため、障害者雇用をしている植物工場では、手作業で人工授粉を行うことが多いです。
人工授粉の頻度
いちごの花が受粉できるのは、開花後2日目から4日目の三日間のことが多いです(温度などの条件で変化します)。
そのため、受粉作業は2日に1回程度の頻度で行います。
ゴールデンウィークやお盆休み、年末年始休業などの連休中にも、人工授粉が必要です。
他の品種の花粉で受粉させて良い
複数のいちご品種を育てている場合は、その花粉を混ぜて他の品種に受粉させて問題ありません。
いちごは花粉が実の味や見た目に影響しないからです。
風(ブロワー)で受粉
いちごの植物工場では、風を使って受粉させる場合もあります。
風を起こすためには、ハンドブロワーなどの機械を使います。
ハンドブロワーはバッテリー式の物を選べば、片手で持ち運べます。
人間がハンドブロワーを手に持ち、施設内のいちごの花に風を送ることで受粉させます。
受粉と奇形の関係
いちごの花は雄しべの花粉が雌しべの柱頭に付着することで受粉します。
雌しべの柱頭は1個の花に100本ほどあり、それぞれが独立しています。
すべての柱頭に花粉がつくと、きれいな形のいちごができます。
花粉がついていない柱頭があるが、奇形になります。
振動(手作業か超音波)で受粉
いちごの植物工場では、振動によって受粉させる場合があります。
振動によって受粉するメカニズムは、振動で雄しべの花粉が飛び、その花粉が雌しべの柱頭につくからです。
振動させる方法は、手作業で花を揺する方法と機械で振動させる方法があります。
超音波で振動させる機械もあります。
●特定波長の超音波からの振動で、非接触で授粉を行うことができます。
●周波数や焦点距離を任意に変更することも可能です。
●ハンデイタイプなので、片手で授粉作業を行うことができます。
●バッテリー内蔵なので、電源の接続の必要はありません(1回のバッテリー充電で約3時間稼働)
振動で農業イノベーション
振動は最近の農業業界で研究が盛んになっており、受粉だけでなく害虫の寄生防止効果の研究も進んでいます。
例えば、トマト栽培でコナジラミが寄生しにくくなるそうです。
振動を与えたトマトのタバココナジラミ幼虫の密度は振動を与えなかった対照区と比較して、およそ40%低下することが明らかになりました。
次に、オンシツコナジラミについて、宮城県農業・園芸総合研究所のトマト栽培施設内において300Hzの振動を与えたところ、振動区のオンシツコナジラミ幼虫密度が対照区の50%以下に抑えられました。
受粉ロボットで受粉
いちごの植物工場で受粉ロボットを普及させるために、研究開発を行っている企業もあります。
HarvestXという会社です。
カメラでいちごの花を撮影し画像解析して、梵天を掴んだロボットのアームで花に人工授粉をさせるようです。
トマトやキュウリ栽培でも収穫作業を行うロボットを開発している企業があります。
また、イチゴですと、収穫ロボットや選別パック詰めロボットがあります。
「HarvestX」は人工光型植物工場でのイチゴの生産過程において、「植物の管理」「授粉」「収穫」の自動化を行い、衛生的で安定した生産と収量増加を実現するソリューションです。
引用元:HarvestX
イチゴ植物工場の受粉方法まとめ
今回はイチゴの植物工場で受粉させる方法をご紹介しました。
10年ほど前までは「イチゴの植物工場は受粉させることが課題」と言われていましたが、最近ではその課題は解消されています。
植物工場でのイチゴの受粉で悩みの方は参考にしてみてください。
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