「植物工場って一体なんだろう?」と疑問に思っていませんか?
- 植物工場の基本的なことを知りたい
- そもそも植物工場って何?
- 植物工場にはどんな種類があるの?
- 植物工場ではどんな野菜が作られているの?
こんな疑問をお持ちの方はぜひ最後までお読みください。
植物工場は、近年注目を集めている農業の一形態で、室内の人工的に制御された環境で野菜を育てる技術です。
この記事では、植物工場の基本的な仕組みから、そのメリットやデメリット、技術や種類まで詳しく解説します。
さらに、今後の可能性や課題についても考察します。
弊社はこれまでに6つの植物工場事業に対して、コンサルティングを行ってきました。
これまでの知見を元にして、植物工場の基本を解説します。
植物工場とは何か?その基本的な仕組み
植物工場は、特定の環境条件を完全にコントロールすることで、効率的に野菜を生産する施設です。
ここでは、植物工場の定義や歴史、そして主なタイプについて説明します。
植物工場の定義と歴史
植物工場とは、室内において人工的に光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分などの栽培環境を制御し、通年で安定的に作物を生産するシステムを指します。
この技術は、1970年代に日本で始まり、当初は研究目的で開発されました。
以降、技術の進歩に伴い、商業的な利用も増えています。
閉鎖型と太陽光利用型の違い
植物工場は大きく分けて、完全に人工光を使用する閉鎖型と、太陽光を併用する太陽光利用型に分けられます。
閉鎖型は、外部環境に依存せず、安定した生産が可能ですが、エネルギーコストが高くなりがちです。
一方、太陽光利用型はLEDを使わないのでエネルギー効率が良いものの、天候による影響を受けやすいという特徴があります。
水耕栽培とLED照明の利用
植物工場では、土を使わずに水と養液で植物を育てる水耕栽培が主流です。
この方法は、土壌に依存しないため、病害虫のリスクを減らし、清潔な栽培が可能です。
また、光源としては植物の成長に最適な波長の光を放つLED照明が使用されており、これにより太陽光がなくても植物を栽培できます。
植物工場で野菜を育てるメリット
植物工場には、従来の農業にはない多くの利点があります。
ここでは、その主なメリットについて見ていきます。
天候に左右されない安定生産が可能
植物工場は、天候や季節に関係なく、一年中安定した生産が可能です。
これにより、農産物の供給が安定し、価格の変動を抑えることができます。
さらに、自然災害のリスクも低く、食糧供給の確保に貢献します。
ビニールハウスを使ったハウス栽培も天候の影響を受けにくいですが、完全に影響を受けない訳ではありません。
植物工場は温暖化や猛暑、ゲリラ豪雨、干ばつ、大雪などの異常気象の影響を受けません。
高品質な野菜が得られる
植物工場では、栽培環境を厳密に管理することで、常に高品質な野菜を生産することができます。
病害虫の発生リスクが低いため、農薬の使用を最小限に抑えることができます。
ただし、病気や害虫の発生がゼロという訳ではありません。
また、温度調整ができるので、成長速度や収穫時期をコントロールすることができ、計画的な生産が可能です。
植物工場で野菜を育てるデメリット
一方で、植物工場にはデメリットも存在します。
ここでは、主な課題について説明します。
初期コストとエネルギーコストが高い
植物工場の設立には、施設の建設や機器の導入に大きな初期投資が必要です。
また、人工照明や空調設備などのエネルギー消費が高く、ランニングコストも増大します。
これらのコストを回収するためには、効率的な生産体制や市場の確保が求められます。
そして、それが難しいため、赤字の植物工場が多いのが厳しい現実です。
植物工場を運営する会社が倒産することもよくあります。
技術や管理に専門知識が必要
植物工場の運営には、栽培技術や環境管理に関する高度な知識が必要です。
また、システムの維持やトラブルへの対応にも専門的なスキルが求められます。
これにより、技術者の育成や継続的な研修が必要不可欠となります。
室内で野菜を育てるための植物工場の技術
植物工場では、高度な技術が導入されています。
ここでは、特に重要な水耕栽培技術、LED照明と光制御技術、栽培環境のモニタリングと自動化システムについて解説します。
水耕栽培技術の概要
水耕栽培は、土を使わずに水と養液を使って植物を育てる方法です。
養液は植物が必要とする栄養素を含んでおり、根から直接吸収されます。
これにより、土壌に依存しない清潔な栽培が可能となり、病害虫のリスクを減らすことができます。
また、栄養素の供給を正確にコントロールできるため、効率的な生育が可能です。
LED照明と光制御技術
LED照明は、植物の光合成に必要な特定の波長の光を放つため、効率的な成長を促進します。
さらに、光の強さや照射時間を制御することで、植物の成長速度や収穫時期を調整することができます。
これにより、計画的な生産が可能となり、収穫量を最大化することができます。
ただし、無料で使える太陽光とは違い、イニシャルコストもランニングコストもかかります。
太陽光と比べるとLEDの光は弱く、強い光を求めるとコストが増えます。
栽培環境のモニタリングと自動化システム
植物工場では、温度、湿度、二酸化炭素濃度、光の強さなど、栽培環境を常にモニタリングするシステムが導入されています。
これにより、最適な生育環境を維持し、トラブルが発生した場合には迅速に対応することができます。
また、これらのシステムを自動化することで、人手を減らし、効率的な運営が可能となります。
植物工場の種類とその特徴
植物工場には、いくつかの種類があり、それぞれに特有の特徴があります。
ここでは、完全閉鎖型(人工光型)、太陽光併用型、スプラウト生産工場について解説します。
完全閉鎖型(人工光型)
完全閉鎖型(人工光型)の植物工場は、外部の太陽光を一切利用せず、すべて人工照明で植物を育てます。
一般的に、「植物工場」といえば、この完全閉鎖型(人工光型)を指します。
このタイプの工場は、外部環境に依存しないため、天候や季節に左右されることなく、安定した生産が可能です。
エネルギーコストが高くなる一方で、最も制御された環境で高品質な野菜を生産することができます。
太陽光併用型(太陽光利用型)
太陽光併用型の植物工場は、人工照明と自然光を併用して植物を育てます。
ビニールハウス栽培の中でも、栽培面積が1ha(10,000㎡)以上の大型施設を指すことが多いです。
これにより、エネルギーコストを抑えつつ、安定した生産が可能となります。
ただし、天候に影響されやすく、季節による変動を考慮する必要があります。
スプラウト生産工場
スプラウト生産工場は、発芽野菜(スプラウト)を専門に生産する工場です。
例えば、かいわれ大根、豆苗、ブロッコリースプラウトなどがあります。
スプラウトは成長が早く、短期間で収穫が可能なため、生産効率が高いのが特徴です。
また、栄養価が高く、健康食品として人気があります。
植物工場で育てられる主な野菜の種類
植物工場では、多種多様な野菜が育てられています。
ここでは、代表的な葉物野菜、スプラウト類、果菜類について紹介します。
葉物野菜(レタス類)
植物工場で最も一般的に栽培されているのが、レタスなどの葉物野菜です。
これらの野菜は、成長が比較的早く、安定して収穫できるため、商業的に非常に人気があります。
植物工場で生産されている野菜のほとんどは、レタスなどの葉物野菜です。
また、栄養価が高く、サラダや料理の付け合わせとして広く利用されています。
スプラウト類(かいわれ大根、豆苗)
スプラウト類は、短期間で収穫できるため、効率的な生産が可能です。
かいわれ大根や豆苗などが代表的で、これらはサラダやトッピングとして広く利用されています。
特に、ビタミンやミネラルが豊富なため、健康志向の消費者に人気があります。
広い意味で植物工場ですが、一般的には「スプラウト工場」と呼ばれています。
果菜類(イチゴ)
植物工場では、イチゴなどの果菜類も栽培されています。
イチゴは通常、ビニールハウスで育てられることが多いですが、植物工場では、季節を問わずに安定して供給できるのが大きなメリットです。
また、病害虫のリスクが低いため、品質の高い果実を生産することができます。
ただし、栽培や販売が難しく、黒字になっている植物工場はありません。
植物工場の今後の可能性
植物工場は、都市部での食料供給において大きな役割を果たす可能性があります。
ここでは、その可能性について考察します。
都市部での食料供給に貢献する可能性
都市部では、人口の増加に伴い、食料供給の課題がますます深刻化しています。
植物工場は、都市内で効率的に野菜を生産できるため、食料供給の安定に貢献する可能性があります。
また、輸送コストの削減や、フードマイレージの低減にも寄与します。
異常気象に対応
現在、地球全体で温暖化が急速に進んでいます。
その影響で日本でも、夏の猛暑、線状降水帯の発生、干ばつの発生、台風の大型化、冬の暖冬、大雪などの異常気象が発生しています。
異常気象が発生することで、露地栽培やハウス栽培の野菜や主食作物の生産に問題が起きています。
植物工場では異常気象の影響を受けないので、異常気象でも食料を安定供給できます。
植物工場の課題
植物工場の普及には、いくつかの課題が残されています。
ここでは、エネルギー効率の改善とコスト削減の課題について説明します。
エネルギー効率の改善が課題
植物工場の運営には大量のエネルギーが必要であり、その効率を向上させることが課題となっています。
特に、人工照明や空調設備のエネルギー消費を抑えるための技術革新が求められています。
また、再生可能エネルギーの利用や、省エネ型の設備導入が検討されています。
正直、植物工場は電気代が高すぎます。
実は大規模な植物工場があるのは、原発の近辺などの「電気代特区」に集中しています。
コスト削減
植物工場の設立と運営には高額なコストがかかるため、その削減が大きな課題となっています。
技術の進歩やスケールメリットを活かすことで、コストの削減が進められていますが、依然として高い投資が必要です。
これに対する対策として、効率的な生産システムの構築や、資金調達の方法の検討が進められています。
大規模な植物工場を作ろうと思うと、十数億円が必要です。
それだけの金額を用意するのは大変です。
まとめ:植物工場とは?室内で野菜を育てる仕組みや種類
植物工場は、天候に左右されない安定した野菜の生産を可能にする画期的な技術です。
閉鎖型や太陽光併用型、水耕栽培やLED照明など、さまざまな技術が組み合わさり、効率的な生産が行われています。
デメリットとしては初期コストやエネルギーコストの高さが挙げられますが、技術の進歩により、これらの課題も徐々に解消されつつあります。
今後も、都市部での食料供給や持続可能な農業の実現に向けて、植物工場の重要性はさらに増していくでしょう。
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