いちごは炭疽病や萎黄病などの病気やウイルスが、水、虫、空気を介して子苗へ伝染します。。
そのため、炭疽病や萎黄病、ウイルス病が一度発生すると、その被害が農園全体へ広がります。
農薬を使うことで病原菌の拡散をある程度は抑えることができます。
しかし、農薬を使っても炭疽病や萎黄病、ウイルス病を完治させることはできません。
そのため、ウイルスフリー苗を使う必要があります。
弊社代表の宮崎は大学院生時代にイチゴのウイルスフリー苗を作成し、種苗会社や農家へ苗を配布していました。
今回はウイルスフリー苗とウイルスフリー苗を作る手段である茎頂培養(メリクロン)を解説します。
茎頂培養には品種の権利保有者の許諾が必要
いちご品種のメリクロン作成には、品種の権利保有者の許諾が必要です。
とちおとめのように品種登録の権利が切れた品種を使用するか、権利保有者から許諾を取ってから行ってください。
いちごのウイルスフリー苗とは
いちごのウイルスフリー苗とは、茎頂培養によってウイルスや病原菌を除去した健康な苗のことです。
それに対して、一般的な苗はウイルスや病原菌に多少は感染しています。
ウイルスフリー苗は作成に費用と手間がかかるため、普通は出回っていません。
ホームセンターやネット通販で販売されているいちごの苗は、ほぼすべてが普通のランナー苗です。
ウイルスフリー苗を手に入れたい場合には、種苗会社へ注文する必要があります。
イチゴのウイルスフリー苗のメリット
ウイルスフリー苗のメリットは、ある種の病気のリスクをなくせることです。
特に炭疽病(炭そ病)はいちごで最も被害が大きい病気です。
その炭疽病を根本的に完治させる方法は、基本的にはウイルスフリー苗を使うことしかありません。
ただし、種子繁殖型品種の場合には、種から育てることで病原菌やウイルスを除去できます。
しかし、日本で出回っている種子繁殖型品種は3品種ほどしかないので、利用できない品種のほうが圧倒的に多いです。
そのため、日本全国の多くのいちご農園でウイルスフリー苗が使われています。
イチゴのウイルスフリー苗のデメリット
ただし、ウイルスフリー苗にもデメリットがあります。
苗の値段は品種により異なりますが、市販のもので一苗500円ほどかかります。
さらに市販されていない品種のウイルスフリー化を業者へ発注すると、数十万円の費用が必要です。
ウイルスフリー苗の作り方
ウイルスフリー苗を作る場合には、茎頂培養(メリクロン)と呼ばれる技術を使います。
茎頂培養とは成長点にある茎頂分裂組織を切り出し、無菌状態で培養することです。
茎頂培養はメリクロンとも呼ばれています。
業者は茎頂培養で作成したウイルスフリー苗を無菌状態で増殖させ、その苗を販売します。
この培養と増殖、順化と呼ばれる過程には1年から2年ほどの時間が必要です。
ウイルスフリー苗の購入方法
いちごのウイルスフリー苗を購入したい場合には、種苗会社のウェブサイトから注文できます。
すでにウイルスフリー苗が作成されている品種の場合には、すぐに受け取ることも可能です。
しかしウイルスフリー苗が作成されていない品種の場合には、作成に時間とお金が必要です。
一般的には、ホームセンターやネット通販ではウイルスフリー苗は販売されていません。
苺の茎頂培養(メリクロン)の方法
苺の茎頂培養の方法を動画を使って解説します。
次に茎頂培養に必要な道具を紹介します。
特に重要なのが実体顕微鏡とメス、針です。
メリクロンのためにメスと針を作りましょう。
浸漬液と噴霧液の二種類の殺菌液を用意します。
植物培養の種類によって殺菌方法が異なるので、今回はメリクロン用の処方を使います。
茎頂分裂組織の切り出しから、寒天培地への置床の流れを解説します。
切り出し作業は実体顕微鏡を覗きながら操作します。
培地の殺菌処理を先にやっておくのが大切です。
実体顕微鏡の台の上で作業します。
写真はランナー子苗を使用した場合です。
この段階までは手と肉眼で作業します。
慣れてくるとあと2枚くらいは葉と葉原基を手で除去できます。
寒天培地の上に置床したイチゴの細胞です。
実体顕微鏡越しの映像を使って、茎頂分裂組織と葉原基の切り出し作業を説明します。
20倍から40倍の実体顕微鏡を覗いて、このような映像を見ながら作業します。
この切り出し作業で切り取る組織の大きさで、除去できる病原菌やウイルス(ウイロイド)が変わります。
実体顕微鏡越しではこのように見えています。
茎頂分裂組織付近を青く染色するとこのように見えます。
茎頂分裂組織(成長点)が花芽分化した場合には、花芽が見えます。
花芽分化の検鏡作業では、このような花芽を観察します。
こちらは葉原基なしで切り出した茎頂分裂組織です。
こちらは葉原基付きの茎頂分裂組織です。
いちごの細胞をLEDの光で培養する方法を説明します。
私は植物栽培用のLEDを使っています。
コンタミと呼ばれる雑菌の混入と増殖が起きてしまいました。
こちらが培養がうまくいったウイルスフリー苗です。
葉と根が発生しています。
葉が大きく育ち、順化をできる大きさになりました。
切り出しと置床、培養がうまくいかないと、このように枯死します。
その苗をいきなり外に出すと枯れるので、順化という作業を行います。
いちごのメリクロンのやり方まとめ
今回はいちごのメリクロンのやり方とウイルスフリー苗について解説しました。
いちごのウイルスフリー苗を使うことは、病気のリスクを減らし農薬の使用量を減らすことに繋がります。
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