今回のテーマは本当に今年はイチゴ不足なのか、なぜクリスマスケーキのイチゴが足りないのか、このような話をしていきたいと思います。

最近はテレビのニュース番組や新聞などでイチゴ不足ですとか、イチゴの値段が高騰していますとか、クリスマスケーキにイチゴが足りませんという話をしています。

さて、それは本当にそうなっているのか、それともフェイクニュースなのか、今回は検証してみたいと思います。

それから、本当にイチゴ不足が起きているとしたら、なぜ起きているのかという話もしていきます。

クリスマスケーキ用の花房

それでは、まずはクリスマスケーキ用のイチゴがどんなものが使われているのかを紹介していきます。

まずは「花房」というものです。

イチゴは花がたくさんまとまって出てきます。

そのことを「花房」と言います。

その中でもイチゴは促成栽培と夏秋栽培という栽培方法がありまして、その促成栽培の早生品種の第一次腋花房と言われてるものがクリスマスケーキ用によく使われています。

それから中には促成栽培の晩生品種の頂花房と言われてるものも使われることがあります。

それから割合としては少ないんですが、夏秋栽培の収穫期間を延長したものも使われることがあります。

特に今年は猛暑で夏場の収穫量が減ってしまったので、クリスマスまで収穫時期を引っ張って長くして出荷しているというところが多いです。

クリスマスケーキ用に使われるもので1番多いのは1番の促成栽培の早生品種の第1次腋花房だと思います。

クリスマスケーキの花房内の実

次にクリスマスケーキ用の花房の中でどういった実が使われるのかを紹介します。

先ほども説明した通り、花房の中には色々な実がありますので、どんな実が選ばれているのかを紹介します。

1番果2番果というのは大きな実です。

1番最初に咲くのが1番果、2番目に咲くのが2番果です。

この1番果と2番果はケーキ用のトップに使うのには大きすぎるので、スライスしてサンド用として使われることが多いです。

それから3番果以降の実については中くらいのサイズなので、ケーキのトップに使うことが多いです。

ケーキのトップに使われているのは15〜20gぐらいのサイズのものが多いと思います。

こう聞いても分かりにくいと思うので、こちらの写真を見てみてください。

大きすぎる実はケーキのトップに使えない

イチゴの実がぶら下がっていますが真ん中にある大きな赤いイチゴ、これが1番果と言われるものです。

イチゴは同じ花房の中ですと最初に花が咲いた実が1番大きくなって最後に咲いた実が1番小さくなります。

なので最初に大きな実が取れて次に中ぐらいが取れて次に小さな実が取れてという感じで、どんどん1つの花房の中で見ると実が小さくなっていきます。

最初に取れる実は大粒になるので、例えば桐の箱に入れて高級イチゴにして売ったり、またはスーパーで大粒のイチゴとして販売するのに向いているんですけれども、これをケーキの上に乗っけてしまうとアンバランスになってしまうんですね。

この実の大きさは例えば30gとか40gとかすごく大きいので、ショートケーキの上に乗っけるとケーキが小さく見えてしまうというかバランスが非常に悪いので、そういう大きなイゴについてはケーキ用としてはあまり使われていません。

もし使うにしてもスライスしてスポンジの間に挟んでいることが多いです。

なのでイチゴのケーキに使う特にクリスマスのケーキに使うとイチゴのサイズは15〜20g程度のものが多くなっています。

イチゴの納品時期

次はイチゴの納品時期について説明します。

クリスマスケーキを販売するのはクリスマスイブの12月24日だと思うんですけれども、それよりも前にイチゴは納品します。

特に納品のタイミングとして多いのが12月の19日から22日頃だと思います。

これはもちろんケーキ屋さんによっても違いますし、ケーキ屋さんに販売する間に入っている中間業者の数によっても違ってきます。

そのケーキ屋さんはイチゴを早めに受け取って冷蔵庫にたくさん貯めておいて、クリスマスの前にケーキをたくさん作る時にどんどん使っていくという流れになっています。

もしくは中間流通業者の方が大量に冷蔵庫に貯めておいて、クリスマス前に一斉に吐き出すみたいな場合もあります。

市場卸売価格(全市場の総計)

ではここからは価格の推移について見ていきましょう。

こちらは農林水産省の青果物日別取扱統計結果と言われているものを私の方でグラフ化したものになります。

こちらでは全国の市場卸売り価格の全市場総計の過去5年間のデータをグラフ化しております。

こちらの期間は12月15日から12月24日までです。

年数は2019年から2023年までになっています。

2023年については12月18日までのデータが記載されております。

それぞれ色別で分かれておりまして、ここで見ていただきたいのがそれぞれの年の価格が一番高い日はいつなのかというところです。

例えば、オレンジ色が2020年なんですが、値段が最も高いのは12月22日でした。

それから、青色が2019年なんですが、値段が最も高いのが12月21日でした。

2021年も12月21日が最も高く、2022年は12月22日が最も高いという結果でした。

2023年はまだ分からないんですが、おそらく21日もしくは22日あたりが最も値段が高くなるのではないかと思われます。

このように、クリスマスの需要のピークというのは21日から22日ぐらいをピークにしています。

今年はイチゴの価格が高い

次に注目していただきたいのが2023年、今年です。

今年については12月15日から18日までのデータしかまだないんですけれども、こちらを見ていただくと、薄い青色のものが今年の価格になっています。

この12月15日から18日までの価格を見てみますと、過去4年間と比べてかなり高く推移していることが分かると思います。

15日と16日については最も高いですし、17日は市場が開いていなかったんですけれども、18日については2021年とほぼ同程度という感じですね。

かなり高額で推移していますので、12月19日以降のデータについてはまだ分かりませんが、おそらく例年よりも高額で推移していくのではないかと予想されます。

ですので、このデータから推測すると、今年のクリスマスの時期のイチゴの価格は例年よりも高くなりそうだなということが分かっていただけると思います。

2023年はイチゴ不足なのか

では次に、2023年はイチゴの不足なのかどうかという点を検証していきましょう。

こちらは市場入荷量についてのグラフになっており、2021年から2023年までの3年のデータがあります。

期間は11月下旬から12月の下旬までのデータになっています。

今年のデータはまだ11月下旬と12月上旬のデータしかなく、中旬以降のものについてはまだデータが決まっていないという状態になっています。

こちらの市場入荷量について見てみますと、青色の2021年と比べますと、オレンジ色の2022年と比べますと、グレーの2023年というのは11月下旬も12月上旬も少なくなっています。

このように、11月下旬から12月上旬だけに限って言えば、例年よりもイチゴが少なかったので、今年はイチゴ不足ですと言い切って問題ないと思います。

2023年11月下旬から12月上旬はイチゴ不足

イチゴ不足というのは実はフェイクニュースなんじゃないかみたいな話を冒頭に申し上げたんですが、11月下旬から12月上旬はイチゴの入荷量が例年よりも少なかったという事実があります。

そのため、2023年の11月下旬から12月上旬に限ってはイチゴ不足というのは実際に本当に起きたことだと言っていいと思います。

ただここからさらにもう1歩踏み込んで考えてみたいのが、じゃあクリスマスの時期はどうなのかというところですね。

クリスマスの時期もイチゴ不足なのか、それともそうではないのか見ていきたいと思います。

2023年12月15日から18日までのデータ

では2023年のクリスマスはイチゴ不足になるのか検証していきましょう。

こちらも同じようなデータを持ってきておりまして、市場の入荷量12月の15日から18日までのデータになっています。

今回は過去5年分のデータがありまして、2019年から2023年までのデータがあります。

2019年だけ入荷量が少ないんですけれども、これは市場の営業日数がこの年だけこの期間少し少なかったという点が影響しておりますので、2019年だけは例外的な数字だとお考えください。

ですので、こちらのグラフを見ていただきますと、一体何が分かるのかと言うと、実は2023年は過去5年間で最も入荷量が多いということがわかります。

ただ、この期間というのは12月の15日から18日に限った期間ですね。

この期間に限ると、今年が最も多く市場に入ってきているという点が分かっていただけるかと思います。

意外ですよね、イチゴ不足とニュースになっていますが、実は12月15日から18日の期間だけで考えると、今年が最も多い年という意外なデータが見えてきました。

2023年はクリスマスにイチゴ不足になるか

ではここからは2023年のクリスマスはイチゴが不足するのかどうか、考えていきたいと思います。

先ほどまで紹介していたデータというのは市場流通のイチゴなんですね。

大きな青果物の市場で流通しているイチゴの量を注目してみていたんですけれども、実は市場外流通と言いまして、市場を通さずに様々な業者の方が取り扱っていたりとか、ケーキ屋さんが直接取り扱っていたりとか、様々な流通経路というものがあります。

そのため実はです、この市場外流通についての量については今回触れなかったので、実は市場外流通の量が実は少なくなっていて、クリスマスにイチゴが不足するという可能性もなきにしもあらずという風に思っております。

それから市場流通についても12月19日から24日までの入荷量はまだ分からないので、19日から24日のクリスマスケーキ用に特にイチゴが動く時期に不足する、少なくなってしまうという可能性もなきにしもあらずなのかなと思っております。

ただですね、やっぱり考えてみるとイチゴが高値ってことは本当に起きていたんですけれども、品不足は今のこの12月の15日から18日の間では起きていないという風に言っていいのではないかなと思いました。

ただイチゴの価格が例年よりも高くなっていますので、そのことで買い控えは起きていそうだなと思います。

それから、冒頭にも申し上げた通り、イチゴのサイズが重要なんですね、クリスマスケーキを作るためには。

ですので確かにイチゴは出回っているんだけれども、サイズが大きすぎてケーキに合うサイズは意外と少ないみたいな、そういった可能性もあります。

なので絶対にイチゴ不足にならないという風には言いきれないんですけれども、今のところそんなに心配しなくてもいいのではないかなと思っています。

11月下旬から12月上旬のイチゴ不足の原因

では、ここからは2023年の11月下旬から12月上旬に起こったイチゴ不足の理由について考えていきたいと思います。

理由は3つあるかなと思っておりまして、1つ目は7月と8月の猛暑で苗が枯れたことで定植株数が少なくなってしまったことです。

もうこれは植えつける苗の株数が少なくなってその結果、収穫量が減ってしまったということです。

2つ目は9月の残暑で自然分化育病の早生品種の頂花房の花芽分化が遅れて頂花房の収穫が遅れ、さらに第1次腋花房も遅れてしまったという点です。

今年の9月は本当に暑かったですよね、もう7月8月と変わらないぐらい、もう8月がそのまま続いたって思うぐらい9月が非常に暑い年でした。

その影響でやっぱり花芽分化が遅れてしまったんですね。

この自然分化と呼ばれている夜冷庫とか株冷と呼ばれてるものをやらないという、そういう栽培の仕方の場合、花芽分化が遅れしまったという地域がありますので、その影響を受けたのかなと思います。

3つ目は10月の残暑で早生品種の第1次腋花房の花芽分化が遅れた、晩生品種の頂花房の花芽分化が遅れた、これも起こったかなと思います。

10月も特に前半については暑かったんですよね、10月とは思えないような暑さが最初の方続いていました。

それによって花芽分化が遅れてしまったという地域も中にはあるかなと思います。

12月中旬にイチゴが増えた理由

次は2023年の12月中旬にイチゴが増えた理由です。

先ほどのデータからも分かる通り、12月の上旬まではイチゴ不足という状態だったんですけれども、12月中旬からは例年よりもイチゴの量が多いぐらいな状態になりました。

これは一体なぜなのでしょうか。

理由としては2つ考えられるかなと思っておりまして、まず1つ目は遅れていた頂花房や第1次腋花房の収穫が始まったからです。

先ほども申し上げた通り、残暑等で今年は頂花房と第一次腋花房の花芽分化と収穫が遅れていました。

その遅れていたのがようやく追いついて、その結果多くなったということが考えられます。

それから気候も影響しておりまして、11月以降はちょうどいい気候でイチゴの生育が早まった。

これも影響してるかなと思います。

先ほどから9月10月については残暑がひどかったという話をしたんですけれども、10月の中旬以降それから11月にかけてはイチゴの生育にとってちょうどいい気候が続きました。

12月に入ると北海道、それから日本海側で寒波に襲われたりもしたので、またそこで停滞したかなと思うんですけれども、12月中については非常にイチゴ栽培に向いた良い気候だったなと思っています。

その結果、イチゴの生育が早まったりとか、着色が早まったりとか、そういう影響が12月中旬に収穫量が増えるということにつがったのではないかなと思います。

クリスマスにイチゴを確実に増やす方法

ではここから、生産者の方向けにクリスマスにイチゴを確実に増やす方法を3つご紹介したいと思います。

まず1つ目は5月から9月の育苗中に炭疽病を防ぐことです。

やはり育苗中に病気が出て枯れてしまって定植株数が少なくなってしまうと結局収穫量が少なくなるということにつながりますので、例えば農薬散布、種子繁殖型品種の利用、それからウイルスフリー苗の利用、点滴潅水の利用、これらをご検討ください。

2番目は8月から9月に花芽分化促進処理を行う。

やはりこの8月から9月に自然の花芽分化を待つというのはこの猛暑が厳しくなった、この温暖化した日本ではかなり厳しくなってきています。

じゃあその代わりに何をやったらいいのかと言いますと、例えば夜冷短日処理を行う、株冷を行う、窒素中断を行う、山あげを行う等の花芽分化の促進処理をしっかり行うことが大事かなと思います。

3番目は9月から12月に環境制御を行う。

9月に定植を行うと思うんですけれども、そこから12月までの間に加温機で温度を上げたたりとか、何かしらの冷房装置で温度を下げたり、遮光をしたり、強制換気をしたり、細霧冷房を使ったりとして、環境制御をしっかり行うこと収穫時期をコントロールすることができます。

そのため、この辺りをしっかりやっていただくと値段が上がるタイミングで出荷を増やすということができると思います。

クリスマスにイチゴ不足が起きるのかまとめ

今回は過去のデータや2023年12月18日までのデータを元にして、2023年のクリスマスにイチゴ不足が起きるのかを予測しました。

11月下旬から12月上旬まではイチゴ不足の状態でしたが、12月中旬からはイチゴの流通量が増えたので、イチゴ不足は起きないと予測しています。

ただし、イチゴのサイズが大きすぎたり、価格が高騰し、イチゴの買い控えが起きる可能性はあります。

クリスマスの時期はイチゴの卸売価格が上昇するので、収穫時期を調整して、高い価格のときにたくさん出荷しましょう。

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