※この記事は過去に投稿したブログ記事からの転載です。

「イチゴ栽培用のおすすめの高設栽培システムは何ですか?」と聞かれることが多いので、この記事にまとめることにした。

日本にはイチゴ栽培用の高設栽培システムが、数十種類も存在しています。

これは農業資材メーカーが他のメーカーと差別化を図り、次々に新しいシステムを開発した結果です。

高設栽培システムの中には私から見て、ひどいシステムもあるし素晴らしいシステムもあります。

高設栽培システムによって栽培が大きな影響を受けます。

それに、一度システムを決定してしまうと変更することは不可能です。

なので、システムの選択を誤ると取り返しがつかなくなります。

なので、高設栽培システムを選ぶときには最大限の注意をはらいましょう。

これから高設栽培システムを選ぼうとしている人には、ぜひベストなシステムを選んでください。

イチゴの高設栽培とは

そもそも、イチゴの高設栽培とは何でしょうか?

もともとイチゴは「土耕栽培」といって、地面を耕してそこで栽培されてきました。

しかし、地面にイチゴを植えると収穫などの作業を腰を曲げて行わなければならず大変で、土によって性質が違うし病気にもかかりやすいという問題がありました。

それらの問題を解決する方法として、人間の胸の高さに栽培容器を設置して、土の代わりに人工的な培地を使用する高設栽培が開発されました。

いちごの高設栽培のメリット

いちごの高設栽培のメリットは、以下の通りです。

  1. イチゴの株が胸の高さにあるので、立ったまま作業ができて楽
  2. 土の代わりに培地を使うので、土質の影響を受けないので、どこでも同じ栽培ができる
  3. 土の代わりに培地を使うので、土が原因の病気にかかりにくい
  4. 固形肥料の代わりに液体の肥料を使うことが多いので、イチゴに最適なタイミングで肥料を与えられる
  5. 栽培方法が統一できるので、マニュアル化がしやすく新規就農者に向いている
  6. 栽培方法が統一できるので、大規模化に向いている
  7. イチゴを土から離して栽培できるので、清潔感がある
  8. イチゴの収穫が楽なので、いちご狩りに向いている

いちごの高設システムのデメリット

しかし、イチゴの高設栽培にもデメリットがあります。

  1. 地面で育てる土耕栽培とは栽培方法が違うので、土耕栽培の経験が使えない
  2. 高設栽培の施工費が高いので、土耕栽培よりも導入コストがかかる
  3. 土耕栽培と違い有機質の肥料を土に混ぜることが少ないので、地面からの二酸化炭素の供給がなく、二酸化炭素を人工的に補わないと糖度が上がりにくい
  4. 高設栽培は広い通路が必要なので、農地面積あたりの収穫量が土耕栽培よりも劣る場合がある

高設栽培にはデメリットもあるがメリットも大きいので、日本のイチゴ栽培では高設栽培の割合が年々高まっています。

現在ではいちごの栽培面積の40%以上が高設栽培だと予想されています。

いちご栽培の高設ベンチ費用の1,000㎡の平均価格

いちご栽培用の高設ベンチを作っているメーカー34社の価格を比較してみました。

値段は1,000㎡あたり(10aあたり)の価格で比べています。

施工費には高設ベンチの材料代と工賃も含まれている場合が多いですが、値段は条件により大きく変わるので、あくまでも参考程度にしてください。

使用したデータは最後に紹介する本やネットに公開されているものです(弊社が把握している各メーカーの高設ベンチの価格とは違うものですが公開しているデータの方を使用しました)。

34社の施工費の平均は1,000㎡で370万円でした。

いちご農家の新規就農の場合、20アール(2,000㎡)程度の規模から始めることが多いです。

なので、実際に必要なベンチの施工費の平均額は2倍の740万円になります。

もちろん、この費用にはハウスの建設費などの高設ベンチ以外の費用は含まれていません。

10アール(1,000㎡)の施工費の比較34社

「養液栽培の新マニュアル」と「イチゴの高設栽培」という二冊の本を参考にして、34社の施工費を比較してみました。

これらの本に掲載されている数値なので、これが実際の価格ではありません。

  1. ゆりかごシステム:300万円
  2. のびのびシステム:300万円
  3. 循環式ロックウール栽培:300万円
  4. らくちんシステム:450万円
  5. カネコココファーム:510万円
  6. トライアンベリー:480万円
  7. とこはるシステム:400万円
  8. 少量土壌培地耕:220万円
  9. はればれプラント:292万円
  10. 栃木県方式:267万円
  11. 岐阜方式:463万円
  12. OPオーロラシステム:1,500万円
  13. OPとこはるシステム:470万円
  14. 苺棚式栽培システム:332万円
  15. 徳島農研方式:290万円
  16. ダイゾー式:600万円
  17. ネオサンアップ:360万円
  18. 宮城式:378万円
  19. 新潟式:150万円
  20. 立体式高設2段:450万円
  21. 兵庫方式:262万円
  22. 広島県方式:160万円
  23. イシグロ方式:350万円
  24. Berry Good system:300万円
  25. 福岡県方式:165万円
  26. 長崎型ベンチ栽培:450万円
  27. ピートベンチ栽培:150万円
  28. 熊本県方式:370万円
  29. ベリー・ザ・キット:350万円
  30. らくラックシステム:270万円
  31. 大分県方式Y型:195万円
  32. 佐賀Ⅰ型:410万円
  33. ストロンベンチ:400万円
  34. ジャット式:240万円

それぞれの高設ベンチを値段が安いものから並べ替えると、下のようなグラフになります。

価格が300万円より安い高設ベンチのメーカー

各県の農業試験場が開発した高設システムは、値段が安い傾向にあります。

  1. 新潟式
  2. ピートベンチ栽培
  3. 広島県方式
  4. 福岡県方式
  5. 大分県方式Y型
  6. 少量土壌培地耕
  7. ジャット式
  8. 兵庫方式
  9. 栃木県方式
  10. らくラックシステム
  11. 徳島農研方式
  12. はればれプラント

価格が安ければいいというわけでありません。

価格が安いと使い勝手が悪かったり、耐久性が悪かったり、収穫量が少なかったりするからです。

施工費が300万円以上500万円以下の高設ベンチのメーカー

農業資材メーカーが開発した高設システムは、値段が高い傾向にあります。

  1. ゆりかごシステム
  2. のびのびシステム
  3. 循環式ロックウール栽培
  4. Berry Good system
  5. 苺棚式栽培システム
  6. イシグロ方式
  7. ベリー・ザ・キット
  8. ネオサンアップ
  9. 熊本県方式
  10. 宮城式
  11. とこはるシステム
  12. ストロンベンチ
  13. 佐賀Ⅰ型
  14. らくちんシステム
  15. 立体式高設2段
  16. 長崎型ベンチ栽培
  17. 岐阜方式
  18. OPとこはるシステム
  19. トライアンベリー

高設ベンチの価格が10a500万円より高いメーカー

1,000㎡の施工費が500万円を超えるメーカーもあります。

一般的な新規就農の面積である2,000㎡で考えると、高設ベンチの施工費だけで1,000万円を超えます。

  1. カネコココファーム
  2. ダイゾー式
  3. OPオーロラシステム

イチゴの高設ベンチの相場の追記

「イチゴの基礎知識」という本にも高設ベンチの価格について記載があったので引用します。

  1. らくラック:250万円
  2. 杉バーク高設栽培:200万円
  3. NK毛管水耕:350万円
  4. らくらくベンチ:370万円

いちごの高設栽培システムを選ぶポイント

ここからはいちごの高設栽培システムを選ぶときのポイントを紹介します。

1.栽培槽の素材

まずは栽培槽の素材を検討してください。

素材によって保温性や通気性、排水性が変わってくるからです。

  • プラスチック製のプランター
  • 発泡スチロール製の箱
  • ビニール製のシート
  • ビニール製の袋

2.栽培槽の形状

栽培槽の形状も重要です

栽培槽が繋がっているか場合にはコストが安く、培地加温のための温湯パイプが通しやすいです。

数株ごとに分かれている方がベンチから外して移動させるのが楽で、水や培地で媒介する病気の感染を防ぐことができるます。

  • 一列が繋がっている
  • 数株ごとに分かれているか

3.廃液の回収方法

養液栽培の廃液の扱いも重要です。

この失敗により栽培がうまくいかないケースが多いので、慎重に検討してください。

当たり前ですが、メーカーがいう営業トークをそのまま信用してはいけません。

  • 廃液を廃棄するのか、廃液を再利用する
  • 廃液を回収するのか、そのままベンチの下に落とすか
  • 廃棄を回収する場合は、ベンチの内部を通すのか、それともベンチの外部を通すのか

4.一株あたりの培地量

イチゴ一株あたりの培地量にも注目しましょう。

高設栽培の培地量の平均は、一株あたり3リットル程度。

メーカーによって培地の量が異なり、最小は0.2リットル、最大は10リットルまで範囲が広い。

「培地の量が少ないとダメ、多ければいい」という訳ではありません。

培地の種類

高設栽培では培地の種類もいちごの生育に影響します。

培地についても調べてください。

  • ロックウールか、有機質の培地か
  • 一種類だけか混合培地か
  • 耐用年数は何年か
  • 培地を製造しているのはどのメーカーか
  • その培地は安定供給できるか

おすすめの高設栽培システム

最後に、私がおすすめする高設栽培システムを紹介しよう。

実際には農園ごとにおすすめする高設栽培システムは異なりますが、ここでは平均的ないちご農園の場合として考えてください。

1.長野県の全農の発泡スチロール製の箱を使った栽培システム

長野県の全農が普及している発泡スチロール製の箱を使ったシステムは、デメリットが少なくていいと思います。

・直管パイプのベンチ

・発泡スチロール製の箱

・培養土

・ドリップチューブ

2.ピートベンチ式

手作りできるピートベンチ式の高設ベンチはコストがとても安く、機能も優れています。

・直管パイプのベンチ

・不織布と防根シートの二重シート

・ピートモス

・ドリップチューブ

3.らくちんシステム

香川県を中心に普及しているらくちんシステムはコストは高いが、そのかわり機能が素晴らしい。

・天井から吊り下げ式ベンチ

・ピートモスの袋栽培

・ボタン式ドリップ潅水

・日射比例方式

4.オリジナルの栽培システムを作る

ここで紹介した3つのシステムも良いが、自分でオリジナルの栽培システムを作るのもおすすめです。

農園ごとに必要な機能は異なるので、ベストな栽培システムを作ってみてはいかがでしょうか。

その方がコストも安くなることが多いです。

いちごの高設ベンチとシステムの比較まとめ

今回はいちごの高設栽培用のシステムを紹介しました。

いちごの高設栽培は数十種類もあるので、どれを選ぶべきか迷ってしまうと思います。

実際、中には機能がよくないのに値段が高いシステムもあるので注意してください。

弊社代表が「イチゴで稼ぐ!」という本の高設栽培の解説を執筆しています。

ぜひ読んでみてください。

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