「ビニールハウスの温度が高すぎるから、どうにかして温度を下げたい!」と思っていませんか?
- 春から秋まで、ハウス温度が高すぎる
- ハウス栽培をしているから、日射は維持したい
- コストが安い冷却方法を知りたい
このような悩みを抱えている方は、ぜひ最後までお読みください。
イチゴ栽培を中心に説明しますが、イチゴ以外の作物でも参考になると思います。
この記事を最後まで読むと、ハウスの温度を上げない方法や冷却する方法を網羅的に理解でき、ハウス栽培の温度管理がうまくいきます。
ビニールハウスの換気系8個
まずはビニールハウスの換気により、熱をハウス外に排出する方法です。
ハウスの温度が上がる理由は、熱が溜まるから。
熱を外に排出できれば、外気温と同じ温度を維持できます。
1. 妻面上部に換気窓
妻面上部に換気窓を付けましょう。
妻換(ツマカン)と言います。
ハウスは側面は側窓があり、換気ができます。
しかし、妻面の上部は熱が溜まりやすく、ハウス温度を上げる原因になります。
妻面換気窓は、できるだけ面積が大きな物を付けましょう。
2. 妻面のフィルムを剥がす
妻面のフィルムを剥がすのも有効です。
妻面の出入り口を開けたり、ツマカンを開けると熱が逃げます。
しかし、フィルムが付いている部分もあるので、風通しは完璧ではありません。
妻面のフィルムを剥がしてしまうと、風通しは完璧になります。
しかも、コストはまったく必要ありません。
台風などの強風の日にはハウスが壊れる危険性があるので、フィルムを元に戻しましょう。
3. 妻面に大型換気扇
妻面に大型換気扇を付けることで、熱を外に排出できます。
熱だけではなく、湿度を外に排出する効果もあります。
4. 2段階式の大きな側窓
一般的なビニールハウスですと、側窓は1段式です。
軒高ハウスですと、側窓が2段階式になります。
2段階式の方が側窓の開放部が大きくなるので、熱を逃がしやすいです。
また、上部だけ開放したり、下部だけ開放したり、温度管理や湿度管理の手法が増えます。
5. 天窓と上向き扇風機
天窓も有効な方法です。
熱は上部に溜まるので、ハウスの屋根付近に溜まります。
天窓があれば、その熱を排出できて温度上昇を抑えられます。
また、天窓の下に上向きの扇風機を設置すると、強制的に熱を排出できます。
6. 屋根に空動扇
空動扇は、ハウスの屋根に設置する筒です。
筒を通して熱がハウス外に排出されます。
後付けできるのがメリットです。
デメリットは、換気口が小さいので、屋根にたくさん設置しないと効果がないことです。
7. 肩換気ハウス
肩換気とは、ハウスの側面と屋根の間にある肩の部分を開放することです。
屋根のフィルムの範囲を狭くして、屋根の途中まで側窓が巻き上げられるようにします。
開放部が大きいので熱が溜まりにくく、ハウス室温と外気温と近くなります。
デメリットは強風でフィルムが煽られることなので、防風ネットなどで上から固定する必要があります。
8. フルオープンハウス
フルオープンハウスは、屋根の真上まで側窓を巻き上げられるハウスです。
肩換気ハウスのさらに開放部が広くなったバージョンです。
屋根の真上まで巻き上げれば屋根がなくなり、もはやハウスではなくなります。
雨が降ると中が濡れるので、そのときは屋根を閉めましょう。
屋根や高設ベンチの遮光系5個
次は屋根や高設ベンチを遮光する方法です。
9. 外張りに遮光シート
ハウスの外張りフィルムに遮光シートを張る方法です。
外張りフィルムの上に遮光シートを張ると、太陽光の熱をハウスの中に入る前に遮断できます。
そのため、内張りに遮光シートを使うよりも、遮熱効果が大きくなります。
最近では、外張りフィルムの上に少し空間を作り、そこに外張りフィルムを設置する方法もあります。
間に空気の層を作ることで、断熱効果が高くなります。
10. 内張りや水平カーテンに遮光シート
内張りや水平カーテンに遮光シートを設置します。
効果は外張りフィルムに遮光シートを設置することよりは劣ります。
しかし、内張りや水平カーテンに遮光シートを使う方が、開閉が楽です。
外張りと内張りの両方に遮光シートを設置する方法もあります。
11. 内張りや二重カーテンに遮熱シート
内張りや二重カーテンに遮熱シートを使うことで、熱を下げられます。
保温用カーテンと組み合わせて二層で使うことで、保温と遮熱の両方ができます。
12. 外張りに遮熱塗料
ハウスの外張りに遮熱塗料を塗布すると、遮熱できます。
遮熱が必要なくなったら、除去剤を散布すれば取り除けます。
また、雨でも少しずつ落ちていきます。
13. 高設ベンチや畝にタイベックシート
イチゴの高設ベンチや畝にタイベックシートを敷くと、土の遮熱ができます。
培地の温度を上げたくない場合におすすめです。
白色ビニールマルチも同じような効果がありますが、タイベックシートの方が強い効果があります。
光の反射により、UV-Bライトによるハダニの抑制効果も高くなります。
水の気化熱利用系5個
次は、水の気化熱利用系です。
14. 散水ミスト
散水ミストは、水滴を散水できます。
植物の葉を濡らすので、病気が発生したり、気孔を閉じさせるデメリットがあります。
メリットはコストが安いことと、地面も濡らすことができる点です。
15. 濡れない細霧冷房
細霧冷房は、濡れないミストを出すことで、気化熱だけを生み出します。
メリットは植物が濡れないので、病気が発生せず、気孔が閉じないこと、作業員が濡れないことです。
デメリットは、初期費用が高いこと、ノズルが詰まりやすいことです。
16. パッド&ファン
パッド&ファンとは、ハウスの壁に濡れる素材を設置し、そこに強制的にハウス内に通風させることで、気化熱でハウスを冷やす設備です。
海外の湿度が低い乾燥地帯にある施設園芸では、パッド&ファンがよく使われています。
しかし、日本は高温多湿な気候のため、パッド&ファンの効果が出にくく、使用事例は少ないです。
17. 屋根散水
ハウスの屋根の外張りに散水チューブで散水して、屋根の温度を下げる方法です。
メリットはコストが安く、ハウス内を濡らさないことです。
デメリットは、必要な水量が多く、ハウスの周辺に水が流れることです。
18. 高設ベンチの気化熱ベンチ
イチゴの高設ベンチで、ベンチに気化熱を発生させる方法です。
保水力が高いシートを使う方法や、強制的に風を送風する方法があります。
井戸水やチラーで冷水の活用系2個
次は、井戸水やチラーを使う冷水の活用です。
井戸水は温度が年間を通じて一定です。
チラーを使うことで強制的に冷水を作ることもできます。
19. 高設ベンチの培地冷却
高設ベンチの中にチューブを埋設し、そこに冷水を流すことで培地冷却ができます。
根の生育適温は葉よりも低く、夏には暑さで根が弱ります。
そのため、根の部分だけ局所的に冷やすと根の生育が良くなります。
温水を流せば、培地加温もできます。
培地加温はこちらの記事で紹介しています。
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20. イチゴのクラウン冷却
イチゴはクラウンと呼ばれる短縮茎で温度を感知しています。
そのため、クラウンを局所的に冷やすと、イチゴの生育が良くなります。
クラウンに密着させる形でチューブを設置し、そのチューブに冷水を流してクラウンを冷やします。
エアコンの熱交換系3個
エアコンの熱交換器を利用して、ハウスを冷やす方法です。
21. 農業用エアコン
農業用エアコンを使うと、電気の力でハウスの温度を下げられます。
仕組みは住宅のエアコンと同じです。
室外機から熱を排出して、室内機から冷たい風を出します。
ハウスは直射日光が当たり、断熱性が低いので、遮光や断熱と組み合わせて使用します。
昼間は使用せず、夜間だけ使用する場合もあります。
日栄インテックの設備をこちらの動画で紹介しています。
22. 地中熱ヒートポンプ
地面の中の地下水の温度は年中一定に保たれています。
その熱を利用して、熱交換することで、ハウスの温度を下げる方法もあります。
地下水で冷やした水を使いハウス内を冷やし、温まった水は地下に戻します。
23. 局所冷却式の高設ベンチ
農業用エアコンで局所的に冷却する高設ベンチもあります。
ヤンマーさんのDN-1です。
発泡スチロール性の高設ベンチに隙間があり、そこから冷風が出る仕組みです。
こちらの動画で詳しく解説しています。
ビニールハウスの立地条件4個
そもそも、ビニールハウスを建設するときや農地を取得するときに、立地条件を考えることも大切です。
24. 標高が高い場所
標高が高い場所は低い場所よりも気温が低くなります。
標高が100m上がるごとに、気温は0.6℃下がります。
標高が1,000m上がれば、気温は6.0℃も下がります。
標高が高い場所にハウスを建てれば、ハウス室温は低くなりやすいです。
25. 緯度が高い場所
緯度が高い場所は低い場所よりも気温が低いです。
理由は太陽光が当たる角度が低いためです。
そのため、北半球に位置する日本は、北にある地域の方が涼しい気候になります。
北海道や東北など、北日本の方がハウス室温は低いです。
26. 内陸の盆地ではなく海沿いの風通しが良い場所
内陸の土地は海の海面の気化熱が伝わらないため、気温が高くなりやすいです。
海沿いの土地は海面の気化熱が風で伝わるため、気温が低くなりやすいです。
千葉県勝浦は、冷たい海水と海風によって、猛暑にならない土地として有名です。
盆地は風通しが悪く熱が溜まりやすいため、気温が高くなりやすいです。
高台など風通しが良い場所は、熱が溜まりにくいので気温が低くなりやすいです。
27. 西側に遮光ネットや防風林
ハウスの西側に遮光ネットを設置したり、防風林があると夕方の室温が上がりにくいです。
理由は、西陽を防げるからです。
農作物の栽培には、夕方よりも朝や午前の光が大切です。
そのため、西陽は防いだ方が良いです。
その他のビニールハウスの昇温対策3個
その他のハウスの昇温対策を紹介します。
28. 半地下ハウス
地面を削ってからハウスを建設して半地下状態にすると、ハウス室温を一定に保ちやすいです。
半地下状態のため、一年中一定な地温の影響を受けるからです。
冬は暖かく、夏は涼しいハウスになります。
デメリットは、朝や夕方の横からの日射が減ること、大雨の際に水没するリスクが有ることです。
29. 軒と屋根が高いハウス
軒と屋根が高いハウスの方が、ハウス温度は上がりにくいです。
熱を持った空気はハウスの上部に集まるので、軒や屋根が高ければ熱い空気が植物と離れているからです。
デメリットは、冬に室温を上げるために、燃料代が大きくなることです。
内張りや水平カーテンと併用して、体積を変えられるようにしましょう。
30. 潅水して葉の蒸散を促進
潅水すると植物が水を吸収して、葉の気孔から蒸散を盛んに行います。
蒸散を行うと気化熱により、葉の温度が下がります。
葉の温度が適正になれば、光合成が盛んになります。
気孔が開けば二酸化炭素の吸収も促進されます。
まとめ 夏にハウスの温度を下げる方法
今回はビニールハウスの温度を下げる方法を30個紹介しました。
ぜひ参考にしてハウスの昇温対策にお役立てください。
ビニールハウスの冬の燃料費を節約する方法はこちらをご覧ください。
【保存版】ビニールハウスの燃料費を節約する方法25選【イチゴの草勢は維持】
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