「アクアポニックスでいちごは栽培できるの?」と疑問に思っていませんか?
- そもそもアクアポニックスって何?
- アクアポニックスでいちごは栽培できるの?
- アクアポニックスでいちごを栽培するメリットは?
- アクアポニックスでいちごを栽培するデメリットは?
このような疑問をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みください。
アクアポニックスは、「ザ・SDGsな取り組み」としてメディア受けが良いため、大企業のCSR活動を中心に注目を集めています。
いちごのアクアポニックス栽培は、「魚の養殖」と「いちご狩り」という集客力が強く、企業のイメージアップにつながる一石二鳥のビジネスになる可能性があります。
弊社はいちごビジネスのコンサルティングを全国30軒以上に行ってきました。
アクアポニックスでのいちご栽培の試験も行っています。
その知見を活かし、アクアポニックスの基本からいちご栽培の手順や注意点、メリットとデメリットについて詳しく解説します。
アクアポニックスとは?
アクアポニックスは、水耕栽培と養殖を組み合わせた栽培方法です。
まずはアクアポニックスの基本概念と仕組み、水耕栽培との違いについて説明します。
アクアポニックスの基本
アクアポニックスは、植物と魚を同じシステムで育てる技術です。
いわば、養殖業と農業をかけ合わせた、「一石二鳥のビジネス」です。
魚の排泄物が水に溶け込み、その水が植物の栄養となります。
植物が吸収した水は、浄化されて再び魚のタンクに戻ります。
このサイクルによって、化学肥料を使わない農業が実現できます。
アクアポニックスの仕組みのポイントは循環システム
アクアポニックスの仕組みは、魚の排泄物に含まれるアンモニアを植物が利用することにあります。
魚のタンクからポンプで水を汲み上げ、その水が植物の根を通過します。
植物はアンモニアを吸収し、浄化された水が再び魚のタンクに戻ります。
この循環システムがアクアポニックスの最も重要な仕組みです。
水耕栽培との違いは肥料の由来
アクアポニックスと水耕栽培の最大の違いは、養殖魚がシステムに組み込まれているかどうかです。
水耕栽培は市販の液体肥料を用いて栄養を供給するのに対し、アクアポニックスは魚の排泄物を栄養源とします。
この違いにより、アクアポニックスは化学肥料の使用を減らすことができます。
アクアポニックス施設を紹介
こちらはアクアポニックス施設を紹介する動画です。
いちごやレタスなどの葉物野菜を栽培しています。
こちらの施設では、葉物野菜をアクアポニックスで栽培しています。
アクアポニックスでいちごを栽培する方法と手順
アクアポニックスでいちごを栽培するためには、いくつかの重要なステップがあります。
ここでは、いちごの品種選びから、苗の準備、最適な栽培システムの選択までを順を追って説明します。
栽培する環境はハウス栽培か室内の植物工場
まずはアクアポニックスをする場所を選びましょう。
一般的にはビニールハウスを使ったハウス栽培が多いです。
そのため、この記事でもハウス栽培も前提に説明します。
しかし最近では、室内の完全閉鎖型植物工場のような環境での栽培事例もあります。
植物工場の場合は、光源にLEDライトを使用し、エアコンで室温を制御します。
イチゴのタイプ選び(一季成り性か四季なり性)
アクアポニックスで栽培するいちごのタイプ選びは非常に重要です。
アクアポニックスには一季成り性タイプが適しています。
理由は日本の気候では、ハウス栽培なら秋から初夏までいちごを栽培する促成栽培が合っているからです。
夏もいちごの栽培を継続したい場合には、四季なり性タイプが適しています。
夏もいちごの栽培を継続した方が魚の糞尿処理が楽になりますが、夏はいちごの実は収穫できず、生産性が下がります。
また、気温が高い地域では夏はいちごの栽培が難しく、病気や害虫が発生しやすいです。
いちごの作型の選択(促成栽培か夏秋栽培、周年生産)
いちごの作型を決める必要があります。
作型とは、苗を植える時期や収穫をする時期のスケジュールのことです。
いちごの作型は、大きく分けて、促成栽培、夏秋栽培、周年生産の3つがあります。
作型 | 苗を植える時期 | 収穫時期 |
---|---|---|
促成栽培 | 9月から10月 | 12月から翌年5月 |
夏秋栽培 | 3月から4月 | 6月から11月 |
周年生産 | 春か秋 | 一年中 |
一般的な養液栽培では、90%以上は促成栽培です。
アクアポニックスの場合は魚の糞尿が一年中、発生するので、周年生産の相性が良いです。
ただし、周年生産の場合はハウス内の室温の維持にコストがかかり、栽培期間が長いので病気や害虫のリスクが増えます。
また、夏から秋にかけては実が収穫できない品種が多く、猛暑で枯れるリスクもあり、生産性が低下します。
苗の準備と移植のタイミング
いちごの苗は、健全で病害虫がないものを選びましょう。
いちごの苗は一般的には親株からランナーを使って苗作りをします。
よつぼしやベリーポップはるひ、ベリーポップすずのような種子繁殖型品種であれば、種から苗作りができます。
苗を移植するタイミングは、根が十分に発達している時期が最適です。
促成栽培の作型であれば、9月から10月に苗を植えます。
夏秋栽培の作型であれば、3月から4月に苗を植えます。
必要な水温とpH値の管理
いちごをアクアポニックスで育てる際には、水温とpH値の管理が非常に重要です。
水温は13℃から23℃が理想的で、pH値は5.5から6.5の間が適しています。
この範囲を維持することで、いちごの生育が促進されます。
最適な栽培システムの選択
アクアポニックスでいちごを栽培するためのシステムは、多くの選択肢があります。
水耕栽培のNFTかDFTは、いちご栽培に適したシステムとして広く利用されています。
最近では塔のような栽培槽を建てる「垂直栽培」も人気です。
システム選びは、設置スペースや予算に応じて最適なものを選びましょう。
いちごをアクアポニックスで栽培する施設
こちらはいちごをアクアポニックスで栽培する施設の紹介です。
こちらの動画シリーズでは、アクアポニックスでいちごを栽培する様子を毎月1本の動画で紹介しています。
アクアポニックスでいちごを育てる際の注意点
アクアポニックスでいちごを育てる際には、水質管理、光と温度の調整、魚と植物のバランスなど、いくつかの重要な注意点があります。
これらを正しく管理することで、いちごの生育を最大限に引き出すことができます。
水質管理の重要性
水質管理はアクアポニックスの成功において最も重要な要素の一つです。
特にアンモニア濃度やpH値、酸素濃度などを定期的にチェックし、適切な範囲内に保つ必要があります。
水質が悪化すると、いちごの成長が阻害されるだけでなく、魚にも悪影響を与えます。
光と温度の調整
いちごは光合成を行うため、十分な光を確保することが重要です。
ハウス栽培で自然光を利用する場合は、直射日光が当たる場所に設置します。
植物工場でLEDなどの人工光を使う場合は、植物育成用のLEDライトを使用します。
また、温度管理も重要で、冬は夜間の温度が下がりすぎないように注意、夏は昼間の温度が上がりすぎないように注意が必要です。
魚と植物のバランスを保つ
アクアポニックスでは、魚と植物のバランスを保つことが求められます。
魚が多すぎるとアンモニア濃度が上がりすぎ、いちごの生育に悪影響を与える可能性があります。
一方、魚が少なすぎると、水の中の栄養が少なすぎて、いちごの生育が悪くなります。
そのため、いちごと魚のバランスの取れた数量を維持することが大切です。
病害虫のリスクと農薬を使わない対策
アクアポニックスにおいても、いちごに病害虫が発生するリスクはあります。
特に、アブラムシやハダニ、アザミウマなどの害虫が発生しやすいです。
病気では、うどんこ病や灰色かび病、炭疽病、疫病、萎黄病が発生します。
これらのリスクに対処するためには、定期的な観察と農薬を使わない対策が必要です。
養液栽培では農薬を使用できますが、アクアポニックスでは魚に悪影響がある農薬が使用できないためです。
アクアポニックスは農薬を使用せずに、いちごの病気や害虫を予防するのが難易度が高い理由です。
アクアポニックスでいちごを栽培するメリット
アクアポニックスでいちごを栽培することには、多くのメリットがあります。
生産量の増加や環境への配慮、そしてメディアでの露出など、さまざまな利点が期待できます。
多段式ベンチで生産量が増やせる
アクアポニックスは、垂直方向にスペースを有効活用できます。
そのため垂直塔や多段式ベンチを使用していちごを栽培することで、限られたスペースでも生産量を増やすことが可能です。
これは、都市部や限られた土地での栽培において特に有効です。
SDGsで環境に優しい持続可能な方法
アクアポニックスは、肥料や農薬の使用を大幅に削減できるためSDGsの考えに合致し、環境に優しい持続可能な農業方法です。
また、水の使用量も従来の農業に比べて少なく、水資源の節約につながります。
日本では水が無料で使い放題なので利点ではないですが、海外の砂漠地帯では注目を集めています。
メディアに取り上げられイメージアップにつながる
アクアポニックスは新しい農業技術として注目されているため、メディアに取り上げられる機会が増えています。
これにより、アクアポニックスで栽培したいちごのブランド価値が向上し、販売促進にもつながります。
また、アクアポニックス事業は会社の収益目的の事業ではなく、会社のイメージアップが目的な場合がほとんどです。
そのため、メディア露出が増やせることや、一般消費者のイメージアップにつながることが最も重要です。
アクアポニックスの設備を購入するのでなくレンタルすると、費用対効果が高いPR施策ができます。
アクアポニックスでいちごを栽培するデメリット
一方で、アクアポニックスにはデメリットも存在します。
初期投資の高さやシステムの維持管理の手間、さらには魚と植物の病害虫リスクなど、考慮すべき課題がいくつかあります。
初期投資が高額
アクアポニックスのシステムを構築するためには、初期投資が必要です。
水槽やポンプ、照明設備、栽培システムなどの購入費用がかかります。
一般的ないちご栽培の初期投資よりも大きくなります。
これらの初期投資が高額であるため、資金計画が重要です。
システムの維持管理の手間
アクアポニックスは、システムの維持管理が複雑で手間がかかることがあります。
魚の様子、いちごの様子、機器の様子を毎日チェックして、異常があれば修理が必要です。
水質の定期的なチェックや、機器のメンテナンス、魚と植物の健康状態の監視など、日常的な管理が求められます。
一般的な栽培と比べて、手間が2倍かかります。
魚と植物の両方の病害虫リスクがある
アクアポニックスでは、魚と植物の両方に病害虫リスクが存在します。
魚が病気になるとシステム全体に影響を与える可能性があるため、定期的な健康チェックが不可欠です。
また、植物にも特有の病害虫が発生するリスクがあります。
一般的な栽培と比べて、リスクが2倍高いです。
魚の販売が必要
アクアポニックスでは、魚も飼育するため、最終的に魚の処理や販売が必要になります。
魚を適切に販売するための市場や販路の確保が重要です。
魚の販売で利益を確保できないと、事業が赤字になる恐れがあります。
また、魚の成長や健康状態にも細心の注意を払う必要があります。
アクアポニックスでいちごを育てる際のよくある疑問
アクアポニックスでいちごを育てる際には、いくつかのよくある疑問が浮かぶかもしれません。
収穫時期や栽培場所の選択、魚の種類など、これらの疑問について詳しく解説します。
どのくらいでいちごが収穫できる?
いちごの収穫時期は、品種や環境条件によって異なりますが、一般的には苗の植え付けから約2~3か月で収穫可能です。
苗作りには、3か月ほどの時間がかかります。
そのため苗作りから収穫開始までの期間は、およそ半年かかります。
アクアポニックスの環境が適切に管理されていれば、より早く収穫できる可能性もあります。
植物工場とハウス栽培のどちらで栽培すべき?
アクアポニックスでいちごを栽培する際には、植物工場とハウス栽培のどちらで行うかを選ぶ必要があります。
植物工場は、気温や光量を安定的に管理できるため、より確実にいちごを育てることが可能です。
ただし、初期投資やランニングコストが非常に大きくなり、収益化は不可能です。
一方、ハウス栽培は自然光を利用できる利点がありますが、天候の影響を受けやすい点に注意が必要です。
魚の種類は何を選べば良い?
アクアポニックスでいちごを栽培する際に選ぶ魚の種類は、システムや環境に応じて異なります。
一般的には、ティラピアやホンモロコがよく利用されます。
これらの魚は、環境変化に強く、飼育が比較的簡単なため、初心者にもおすすめです。
いちごの栽培に適したシステムは?
いちごの栽培に適したアクアポニックスのシステムとしては、水耕栽培のNFTやDFTが挙げられます。
これらのシステムは、いちごの根がしっかりと酸素を取り込めるため、健全な成長を促進します。
選択する際には、栽培スペースやコストも考慮しましょう。
まとめ:アクアポニックスでいちごは栽培できる
アクアポニックスは、いちごの栽培において多くの可能性を秘めています。
環境に優しく、持続可能な農業方法でありながら、高品質な収穫物を得ることができます。
しかし、初期投資や維持管理の手間といったデメリットも存在するため、しっかりと計画を立てることが成功の鍵となります。
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