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イチゴを栽培していると、冬の燃料費に頭を悩まされますよね。

特にここ数年は燃料費が例年の1.4倍まで値上がりしたので、利益を圧迫しています。

燃料費を節約したいですが、加温機の設定温度を下げると、イチゴの収量は減ってしまいます。

特に高設栽培をしている方は、土耕栽培よりも地温が下がりやすいので、燃料費が問題になりやすいです。

そんな高設栽培の場合は、温湯管による培地加温をすると、燃料費を5割くらい節約できます。

培地加温は局所的に根の周りの温度だけを温められる、省エネな環境制御技術です。

ただし、培地加温にもデメリットや注意点もあるので、ぜひ最後までお読みください。

この記事を最後まで読むと、培地加温のメリットやデメリットを理解でき、冬の燃料費を節約できます。

培地加温なら燃料費を5割ほど節約できる

まずは培地加温の基本的な情報を紹介します。

温湯管や電熱線を土に埋めて培地温度15℃程度を維持

培地加温とは、主にイチゴの高設栽培で使われる局所加温技術です。

高設ベンチの栽培槽に温湯管や電熱線を埋めて、その熱で培地の温度を上昇させます。

温湯管の中には灯油などを燃焼させて作った20℃程度の温水を通します。

局所加温なので燃料費が小さい

一般的な加温機はハウス全体の空気を温めるので、必要な熱エネルギーが大きくなります。

そのため、燃料費が大きくなります。

培地加温は温水を循環させるので、必要な熱エネルギーが小さくなります。

そのため、加温機を使うよりも温水を作る燃料費の方が小さくなります。

加温機の設定温度を下げられて燃料費の節約

培地加温で根域の温度を上げられると、イチゴが感じる温度が上昇し、草勢が維持できます。

そのため、夜のハウス室温を5℃ほど下げることができます。

冬の始まりや終わりの時期には、加温機を停止することもできます。

そのため、加温機の燃料費を節約できます。

燃料費を5割くらい節約できる

加温機の設定温度を5℃ほど下げられ、加温機を停止する期間も作れるので、燃料費を5割ほど節約できます。

ただし、燃料費は重油や灯油などの金額や設定温度、ハウスの断熱性によって変動します。

高設栽培は土耕栽培よりも地温が下がりやすい

高設栽培は空中に栽培槽があるので、土耕栽培よりも培地の温度が低くなりやすいです。

そのため、厳冬期にイチゴの草勢を維持しにくいという欠点があります。

その点、培地加温があれば培地の温度を高くでき、高設栽培の欠点をカバーできます。

栽培槽は断熱性が高い発泡スチロールが多い

培地加温を行う場合、栽培槽は断熱性が高い発泡スチロールを使うことが多いです。

栽培槽は他にも、プラスチック製やシート式、袋式があります。

培地冷却も低コストででき花芽分化を促進できる

培地加温の設備を使うと、気温が高い時期に培地の冷却もできます。

培地の冷却には、井戸水やチラーで冷却した水を使用します。

例えば、9月から10月に培地を冷却することで、第一次腋花房の花芽分化を促進できます。

3月から6月に培地を冷却することで、春の花芽分化を促進し、収穫期間を延長できます。

イチゴはトマトよりも培地加温が有効

施設園芸といえば、トマトの養液栽培が人気です。

トマトの養液栽培でも培地加温をする場合がありますが、イチゴの方が効果が大きいです。

トマトは成長点と根が2m離れている

トマトは根と成長点が2mほど離れています。

そのため、根の加温と成長点の加温は別々に行わないといけません。

イチゴの根の温度は成長点の温度に強く影響する

イチゴは根と成長点が15cmほどしか離れていません。

そのため、根の加温を行うと成長点の温度も上昇します。

クラウン温度制御との比較

培地加温の効果をより高めた栽培技術が、クラウン温度制御です。

クラウン温度制御とは、イチゴのクラウンにチューブや電熱線を当てて、クラウンの温度を制御する技術です。

クラウン温度制御は培地加温よりもクラウンの温度を変動させやすいので、培地加温よりも効果が高いです。

クラウン温度制御は、この動画で紹介しています。

クラウン温度制御のデメリット

ただし、クラウン温度制御にもデメリットがあります。

定植直後はチューブがクラウンに当てられますが、芽が増えたりクラウンが伸びると、チューブがクラウンと密着しなくなることです。

チューブがクラウンと離れると温度制御の効果が弱まります。

そのためクラウン温度制御は素晴らしい技術ですが、その割に普及していません。

培地加温のデメリット

培地加温にもデメリットがあります。

高設ベンチの培地の耕うんや培地の入れ替えをするときに、温湯管が邪魔になります。

そのため、栽培終了後の片付けや栽培開始前の準備に通常よりも時間がかかります。

また、培地加温用の加温機やチューブなどの設備一式が必要になり、初期投資額が増えます。

培地加温なら葉と根を分けて温度制御できる

培地加温のメリットには、葉と根を分けて温度制御できる点があります。

夜の室温を下げて葉の呼吸を抑えられる

例えば、夜の室温を下げて葉の呼吸を抑えながら、根の培地温度を上げて根の生育を促進することができます。

まず、呼吸はエネルギーロスなので、できるだけ抑えたいです。

呼吸は温度上昇と比例して増えるので、葉の呼吸を抑えるためにはハウス室温を低く抑えることが有効です。

根の生育を促進できる

培地加温をすると、培地の温度を上げられて根の生育を促進できます。

理由は、生育適温になるからです。

また、根の温度が他の部位と比べて高めになり、転流の養分分配が根に優先的になる効果も期待できます。

昼は光合成のため室温を上げる必要がある

夜はハウス室温を低く抑えた方が良いですが、昼は光合成のために室温を上げる必要があります。

光合成適温は、23℃程度です。

晴天日であれば、厳寒期でもハウス室温は20℃程度まで上がります。

曇天日だとハウス室温は20℃まで上がりませんが、曇天日は日射不足が光合成の制限要因なので、室温はあまり気にしなくても良いです。

地温測定にはSwitchBotの防水温湿度計やおんどとりがおすすめ

培地温度の測定には、SwitchBotの防水温湿度計やおんどとりがおすすめです。

SwitchBotの防水温湿度計でも、小さなチャック付きの袋に入れて使うのがおすすめです。

SwitchBotの防水温湿度計は土の中に埋めて使い、おんどとりは温度センサーを埋めて使います。

培地加温の注意点、よくある失敗

培地加温の注意点を説明します。

室温が0℃以下だと花や果実が低温障害を受ける

よくある失敗は、培地加温で根の温度だけを維持して、ハウス室温を下げすぎてしまうことです。

例えば、普段は加温機なしでもハウスの最低室温を5℃くらいに維持できていた時に、強い寒波が来てハウス室温が−3℃になることがあります。

そうすると、花や果実がダメージを受けて、低温障害が起きます。

花は雌しべが黒くなり受粉できなくなり、果実は凍って腐ります。

ハチの行動適温は20〜25℃

ミツバチの行動適温も考える必要があります。

ミツバチの行動適温は20〜25℃です。

昼も培地加温だけしてハウス室温が低いと、ハチが受粉しない場合があります。

そのため、日中にハウス室温を20〜25℃にしないと受粉ができず、奇形果が増えます。

果実の着色や転流は20℃以上で促進される

果実の着色や果実への転流は20℃以上で促進されます。

培地加温がある農園は、培地加温に頼りハウス室温を低くしがちです。

そのため、日中や夜間のハウス室温が低いと、果実の着色不良が起きたり、着色に時間がかかり果実の先端が腐ります。

その代わりメリットとして、果実の糖度が高くなったり、サイズが大粒になりやすいです。

培地加温をおすすめする農園

培地加温をおすすめする農園を紹介します。

高設栽培の農園

高設栽培は土耕栽培の畝よりも培地温度が低くなりやすいからです。

燃料費を節約したい農園

培地加温は重油などの燃料費の節約に有効だからです。

冬の最低気温が低い地域

北日本や内陸部などの寒さが厳しい地域は、燃料費が大きくなりやすいからです。

草勢が弱い品種を育てる農園

とちおとめやよつぼしなどの電照が必須な品種を育てる場合、培地加温により厳冬期でも草勢を強く保てるからです。

まとめ 培地加温のメリット・デメリット

今回はイチゴ栽培の培地加温のメリットやデメリット、注意点などを解説しました。

培地加温は局所加温技術の一つで、燃料費の削減に有効な手段です。

培地加温に頼りすぎると問題も発生しやすいですが、寒さが厳しい地域にはおすすめです。

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