いちご農家になりたい人は、まずは研修を受けて技術や知識を身につけたいですよね。
ただ、いちご農家になるための研修については、たくさんの疑問があると思います。
- 研修は何年が良いの?
- 研修はどこで受けるのが良いの?
- 研修に使える補助金はあるの?
このような疑問がある人は、ぜひ最後までお読みください。
いちごの研修の目的は?
まずは、そもそもいちごの研修の目的はなにかを考えてみましょう。
いちご農家に必要な栽培技術と経営能力を身につける
研修の目的の1つ目は、いちご農家に必要な栽培技術と経営能力を身につけるです。
いちご農家として独立した後は、自分でいちごを栽培して、経営者として経営をしていく必要があります。
そのためには、いちご栽培の栽培技術と経営者として経営能力が欠かせません。
その2つを研修期間で身につけましょう。
いちご農家になるための農地を見つける
いちご農家になるためには、農地が必要です。
地主は見知らぬ人に農地を貸さない売らない
しかし、農地を持っている人は見知らぬ人に農地を貸したり売るのを嫌がります。
最近では農地法が改正されたり、農地を借りやすくなる制度ができました。
それでも農地は宅地などと比べると取得するのが難しい土地です。
研修期間中に地主に挨拶したり信頼関係を作ることで、農地を借りたり買いやすくなります。
いちご農園に有利な土地は競争が激しい
耕作放棄地が増えているので農地は簡単に手に入ると考えている人がいますが、それは半分正解で半分間違いです。
いちご農園に不利な条件の農地で良ければ簡単に入手できます。
いちご農園に有利な条件の土地はなかなか手に入りません。
理由はいちご農園に有利な土地は、既存農家が手放さないですし、もし手放す人がいても他の農家がすぐに入手してしまうからです。
そのため、耕作放棄地になっている農地やよそ者が簡単に入手できる農地は、不利な条件の農地の場合がほとんどです。
だからこそ、研修期間に条件が良い農地を探す必要があります。
地域でいちご農家になるために信頼を獲得する
農業が盛んな地域は閉鎖的な村社会の場合が多いです。
よそ者には心を開いてくれず、農地を貸してくれなかったり、就農することを認めてくれない場合もあります。
そのためいきなり就農するのではなく、一旦研修期間を設けて地域の信頼を獲得するのがおすすめです。
研修期間中に地域の農家や住民の信頼関係が築ければ、農地を貸してくれたり、就農することを認めてくれやすくなります。
いちご農家になる覚悟や適正があるか判断する
研修期間には、あなたにいちご農家になる覚悟や適正があるか判断する意味もあります。
また、家族の理解も大切です。
自分自身の覚悟を確かめる
いちご農家はいちごを毎日食べられて楽しそうと思うかもしれませんが、肉体的に辛い作業もありますし、労働時間が長くて大変です。
一度いちご農家になると初期投資が大きいこともあり、途中でやめるのは難しいです。
いちご農家になることがゴールではありません。
いちご農家になる時点がスタートで、そこから数十年に渡っていちご農家として経営をしていきゴールを目指す必要があります。
いちご農家として栽培や経営を数十年も続けていく能力や覚悟はありますか?
本気でいちご農家になりたいのか、これから先ずっといちご農家としてやっていけるのかを自分自身と相談する必要があります。
家族の理解を得る
また、いちご農家になる場合には夫婦で就農したり、家族の協力が必要な場合が多いので、家族の理解を得る必要もあります。
夫婦で就農する場合、パートナーにもいちご農家としての能力や覚悟などの適正が求められます。
あなたは熱い情熱や体力を持っていても、パートナーはそうでないかもしれません。
あなたの両親や兄弟、子どもはいちご農家になることに反対するかもしれません。
いちご農家になることが原因で、離婚したり家族と疎遠になってしまう危険性もあります。
まずは研修期間に家族と相談して、研修中の姿を見せて理解を得られるようにしましょう。
いちごの修行先の選び方は?
次にいちごの修行先の選び方を説明します。
自分の目指すいちご農家像を決める
研修先を考える前に、あなたが目指すいちご農家像をイメージしてみてください。
例えば、あなたは就農後にいちごの販売先はどこを考えていますか?
- 農協
- 市場
- 道の駅
- スーパーマーケット
- ケーキ屋
- 自社でECサイト
- 産直サイトに出店
- ふるさと納税の返礼品
- いちご狩り
- ジャムに加工
などなどいろんな販売先があります。
販売先によっていちごの栽培方法や経営戦略が違うので、同じような販売先に売っている農家で研修しましょう。
その目指すいちご農家像に近い農家で研修する
例えば、あなたがいちご狩りをする観光農園を始めたいと考えていて、研修する農園がいちご狩りをしておらず農協出荷だけだったら必要なスキルが身につかないでしょう。
また、鉄骨ハウスで統合環境制御式のハイスペックないちご農園で研修してもいいですが、あなたも同じ設備を用意できますか?
そのため、あなたが目指すいちご農家像に近い農家で研修してください。
就農したい地域で研修する
栃木県で就農したいと考えている場合は、栃木県で研修を受けてください。
福岡県で就農したい場合は福岡県で研修してください。
極端な話をすると、北海道でいちごの研修を受けて、沖縄でいちご農園を開業するのはやめてください。
また、同じ都道府県内だけではなく、できれば就農する自治体で研修を受けてください。
理由は地域によって気候が違いますし、地域の人の信頼関係を築く必要があるからです。
就農する設備と同じ設備で研修を受ける
就農する予定のハウスが低コスト式のパイプハウスなら、研修を受ける農園も低コスト式のパイプハウスの方が良いです。
就農する予定の農園が高設ベンチを使うなら、研修する農園も高設ベンチを使っている農園の方がいいです。
加温機、光合成促進機、循環扇、電照、自動換気などの設備もできるだけ同じ環境で研修を受けてください。
育苗ハウスや育苗方法も研修先の方法を事前に把握した方がいいです。
いちごの新規就農の研修方法の候補は?
次にいちごの新規就農者向けの研修方法の候補を紹介します。
都道府県の農業大学校で研修
各都道府県ごとに農業大学校という学校があります。
農業大学校は高校を卒業した人や脱サラした人、定年退職をした人が通い、就農を目指す学校です。
学費は低額で、毎日学校で授業や実習を受けられます。
座学も充実しているので、体系的に植物生理を学べたり、農業に役立つ資格を取ったりできます。
ただし、農家とは栽培設備や規模が異なっていたり、リアルな栽培や農業経営とは少し差があります。
農協が運営する研修施設で研修
農協が運営する研修施設もあります。
ただし、全国のどこの地域でもある訳ではありません。
農協が保有するビニールハウスで、いちご栽培を学べます。
農協が新規就農をバックアップしてくれるので、農地を取得しやすく販売先を探す必要もありません。
ただし、新規就農した後は、生産したいちごを農協に販売する必要があります。
また、農協の設備はいちご農家の設備と機能が異なっていることが多く、経営についても農協の目指すことと農家が目指すことに差があることがあります。
いちご農家で研修
全国どこでもいちご農家がいるので、そこで研修を受けることができます。
ただし、すべてのいちご農家が研修を受け入れている訳ではなく、どの農家でも認定新規就農者の研修として認められる訳でもありません。
実際にいちご栽培と農業経営をしている農家から、リアルないちご栽培と農業経営を学べます。
ただし、いちご農家はいちごの植物生理を体系的に学んだ訳ではなく、経営についても座学で学んだ訳でありません。
また、農家は人に技術や知識を教えたり、教育や指導をするプロではありません。
研修を受ける人をただの安い労働力と考える人も中にはいて、問題になることがあります。
いちご農家になるためのおすすめの研修年数は?
いちご農家になるためのおすすめの研修年数を紹介します。
認定新規就農者の研修期間として認められる年数
まず、自治体ごとに認定新規就農者として認められるための年数が決められていることが多いです。
必要な研修期間は、2年か3年のことが多いです。
中には研修期間の制限が特にない場合もあります。
別の作物の農家なら1年でも良い
例えば、すでに農業をしていて新規作物としていちごを始めようとする場合なら、研修期間は1年で十分だと思います。
理由は学ぶべきことが、いちごの栽培だけだからです。
いちごの苗作りから栽培、出荷までも経験すれば、問題なくいちご栽培をスタートできると思います。
新規就農者は最低でも2年が多い
農業経験がまったくない新規就農者の場合は、いちご栽培以外にも学ぶことがたくさんあります。
- 農業経営
- 就農するための農地探し
- 就農するための設備選定
- 就農するための資金調達
- いちごの販売先の模索
- 地域との交流
- 地域からの信頼獲得
そのため、最低でも2年は研修を受けることを推奨します。
多くの自治体でも、新規就農者向けの研修期間は2年以上に設定されています。
不安な人や不安な地域は3年
2年だけの研修期間では不安な人は、3年の研修を受けましょう。
また、地域によっては研修期間を3年と設定している地域もあります。
例えば、過去に新規就農者が問題を起こしていたり、離農する新規就農者が多い地域は研修期間を長めに設定することが多いです。
いちごの新規就農の研修に使える補助金は?
いちごの新規就農の研修に使える補助金を紹介します。
農林水産省の新規就農者向けの補助金
まずは農林水産省の補助金です。
就農準備資金(研修期間中の生活費の援助)
新規就農の研修を受ける人向けの補助金です。
- 月に12.5万円を支給
- 最長2年間で合計300万円
- 交付期間の1.5倍の期間農業を継続しなかった場合は返金が必要
- 原則49歳以下
- 1年以上研修する
- 前年の世帯所得が600万円以下
- 経営発展支援事業の補助金額が減額される
このような条件がありますが、毎月12.5万円を受け取れるので研修期間中に最低限の生活はできます。
期間は2年間なので研修期間も2年間にするか、3年にする場合は別の資金を用意しましょう。
経営開始資金(就農後の生活費の援助)
これは認定新規就農者向けなので、研修期間が終わって就農した後の補助金です。
研修期間中は使えない補助金ですが、研修期間が終わったら使えるので、事前に把握しておきましょう。
- 月に12.5万円を支給
- 最長3年間で合計450万円
- 夫婦は1.5倍を交付
- 交付期間と同期間以上農業を継続しなかった場合は返金が必要
- 原則49歳以下
- 自営就農であること
- 前年の世帯所得が600万円以下
経営発展支援事業(就農するときのハードへの補助金)
認定新規就農者向けなので、就農するときに使える補助金です。
研修中に栽培設備の選定を行い、補助金の準備もしましょう。
- 補助額:750万円(後述の就農準備資金を利用した人は500万円)
- 機械・施設、家畜導入、果樹・茶改植、機械リース等が対象
青年等就農資金(就農時の事業資金の融資)
認定新規就農者向けの補助金なので、研修期間中に準備をしましょう。
いちご農家になるためには初期投資が大きいので、青年等就農資金を活用しましょう。
- 借り入れ限度額3,700万円(特例で1億円)
- 償還期限17年以内のうち据置期間は5年以内
- 無利子
- 実質無担保
- 無保証人
都道府県の補助金
都道府県が研修期間中の生活費や家賃、車両費などを補助する場合があります。
自治体の補助金
自治体が研修期間中の生活費や家賃、車両費などを補助する場合があります。
地域おこし協力隊
補助金ではありませんが、新規就農したい人を自治体が地域おこし協力隊として採用して、研修を受けさせる場合があります。
地域おこし協力隊は総務省による地方への若者の定住を促すプログラムで、任期は最長3年です。
地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です。
総務省 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.html
地域おこし協力隊として採用されると、月収20〜25万円程度の給与が支給されます。
また、給料とは別に活動費というお金を使うこともできます。
自治体によっては、家賃や車両費を補助する場合があります。
農協の補助金
農協が研修期間中の生活費や家賃、車両費などを補助する場合があります。
研修を受け入れる農業法人向け
研修を受け入れる農業法人向けの補助金を紹介します。
研修を受け入れる農業法人に対して補助金が支払われるので、その分だけ研修を受ける従業員に対して給料を払うことができます。
雇用就農資金の雇用就農者育成・独立支援タイプ
研修には雇用就農資金の雇用就農者育成・独立支援タイプが活用できます。
こちらは研修を受けた人が個人農家になることを目指します。
農業法人等が就農希望者を雇用し、当該農業法人等での農業就業又は独立就農に必要な技術・経営ノウハウ等を習得させるための研修を実施する場合に資金を助成します。
農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/keiei/nougyou_jinzaiikusei_kakuho/shikin.html
研修をしたい人の主な条件は以下のとおりです。
- 支援終了後も就農を継続又は独立する強い意欲を有する50歳未満(採用時点)の者であること
- 支援開始時点で、採用されてから4ヶ月以上12ヶ月未満であること
- 過去の農業就業期間が5年以内であること
- 原則として農業法人等の代表者の3親等以内の親族でないこと
- 過去に就農準備資金、農業次世代人材投資資金(準備型)等で同様の研修を受けていないこと
研修の受け入れ組織の主な条件は以下のとおりです。
- 年間最大60万円(新規雇用就農者の増加分が支援対象)
- 最長4年間
- 十分な指導を行うことのできる指導者(当該農業法人等の役員又は従業員で、5年以上の農業経験を有する者等)を確保できること
雇用就農資金の新法人設立支援タイプ
研修には雇用就農資金の新法人設立支援タイプも活用できます。
こちらは研修を受けた人が農業法人を設立することを目指します。
農業法人等が、新たな農業法人を設立して独立就農することを目指す就農希望者を一定期間雇用し、独立就農に必要な技術・経営ノウハウ等を習得させるための研修を実施する場合に資金を助成します。
農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/keiei/nougyou_jinzaiikusei_kakuho/shikin.html
研修をしたい人の主な条件は以下のとおりです。
- 支援終了後1年以内に新たな農業法人を設立して独立する強い意欲を有する50歳未満の者であること
- 支援開始時点で、採用されてから4ヶ月以上12ヶ月未満であること
- 過去の農業就業期間が5年以内であること
- 原則として農業法人等の代表者の3親等以内の親族でないこと
- 過去に就農準備資金、農業次世代人材投資資金(準備型)等で同様の研修を受けていないこと
研修の受け入れ組織の主な条件は以下のとおりです。
- 年間最大120万円(3年目以降は年間最大60万円)
- 最長4年間
- 十分な指導を行うことのできる指導者(当該農業法人等の役員又は従業員で、5年以上の農業経験を有する者等)を確保できること
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