株式会社イチゴテックの宮崎です。

さて今回は、いちごの育苗方法についてご説明したいと思います。

実はいちごの苗の作り方には色んな種類があります。

今回はその中でも10種類をご説明したいと思います。

いちごの苗の増やし方10種類

  1. 地面に植える
  2. 籾殻採苗
  3. ポット受け
  4. すくすくトレイ(かたつむりポット)
  5. 極小ポット
  6. Dトレイ
  7. 雨樋
  8. 空中採苗
  9. メリクロン苗
  10. 種から育てる

細かいことをいうと、他にも苗の増やし方はあります。

ですが、今回はこの10個に絞って説明します。

1.地面に植えるのが家庭菜園では簡単

家庭菜園で一般的なのは、地面に植える方法でしょう。

これが最も簡単な方法だと思います。

手順

  1. 畑に親株を植えます。
  2. 親株からランナーを出します。
  3. ランナーが地面に根を張るのを待ちます
  4. 根が張ったらそのまま育てます
  5. もしくは根が張ったら根を掘り起こして、別の場所に植え替えます

デメリット

地面に植えるデメリットは、畑の土の影響を受けることです。

例えば、炭疽病や萎黄病が発病していると、土にもその病気の菌が含まれています。

その土に親株や子苗を植えると、その病気が感染します。

また別の場所に子苗を植え替える場合には、根の一部を切ることになります。

できるだけ根を切らないように掘り起こしたとしても、どうしても一部は切ってしまいます。

すると、そこから病気の菌が入りやすくなります。

2.籾殻育苗は病気や害虫を感染させない

籾殻を使った籾殻育苗もあります。

土の代わりに籾殻を使って、籾殻に発根させる方法です。

手順

  1. プランターか畝に親株を植えます
  2. 清潔な籾殻を準備します
  3. 地面とは隔離して籾殻を敷き詰める場所を用意します
  4. そこに籾殻を敷き詰めます
  5. 籾殻の上にランナーを伸ばします
  6. 子苗が欲しい時期になったら籾殻に水を撒きます
  7. ランナーから根が生えたらランナーを切ります
  8. 根から籾殻を取り除きます
  9. 苗を植えます

メリット

籾殻は水で簡単に洗い流せるので、根が傷みにくいです。

親株が炭疽病や萎黄病に感染していなければ、病気が発生しにくいです。

3.ポット受けが一般的な方法

ポット受け育苗は、ポットに苗を固定して育てる方法です。

手順

  1. ポットに育苗用の培地を詰めます
  2. ポットの上にランナーを置きます
  3. ランナーピンでランナーを固定します
  4. 根が生えてきたらランナーを切ります

ポット受けは簡単にできて、根が傷みにくいのでおすすめです。

家庭菜園でも商業的ないちご農園でも使える方法です。

4.すくすくトレイ(かたつむりポット)で作業を効率的に

すくすくトレイとは連結ポットのことです。

ポットが24個か35個繋がった状態のものです。

大学院時代に3万株を育苗しましたが、すくすくトレイをメインで使いました。

すくすくトレイはポットよりも作業が効率的にできます。

家庭菜園用よりは、大規模な商業的ないちご農園向けの商品です。

最近ではかたつむりポットという商品もあります。

デメリット

培地の量が少ないので、根の量が少なくクラウンが細くなります。

株と株の間の間隔が狭いので、徒長しやすくなります。

5.極小ポットで花芽分化を促進

極小ポットとはとても小さなサイズの育苗ポットです。

すくすくトレイよりも培地量が少ないです。

培地はロックウールを使ったり、水苔を使います。

高設ベンチを使う場合や、広い棚を使う場合があります。

対象は商業的ないちご農園だけです。

メリット

メリットは花芽分化しやすくなることです。

培地量が多いと肥料分が多くなりやすく、花芽分化しにくくなります。

そこで培地量が少ない極小ポットが生まれました。

ただし、極小ポットが流行ったのはかなり昔で、今はあまり使われていません。

なぜかというと、今は苗を冷却したり肥料をコントロールすることで、花芽分化させることができるからです。

デメリット

クラウンが細くなります

6.Dトレイで育苗する方法

Dトレイとはトマトやメロンとの栽培にも使われている栽培容器です。

2列で6株か8株程度を植えられます。

もともとは育苗用として使われていた容器です。

連結ポットの一種です。

Dトレイは育苗と生産用の栽培を同じ容器で行うのが特徴です。

なので、植え付けという作業がなくなります。

培地量は一株あたり300ml程度です。

通常は一株あたり2,000ml程度なので、Dトレイはかなり少ないです。

培地量が少なくてもいいのか?

植物の生育に必要なものは、水と肥料と太陽光。

なので、極端な話、培地はなくてもいいんです。

培地量が少ない場合にが、水やりの頻度を多くして対応します。

ですが栽培技術が特殊なので、難易度は高いです。

家庭菜園にはおすすめできません。

7.雨樋採苗システム

雨樋は誠和さんから販売されている育苗システムです。

手順

  1. 背が高い高設ベンチを作ります
  2. 高設ベンチの両側にピラミッド状に雨樋を設置します
  3. 雨樋にホースを繋げて水が流せるようにします
  4. 最も高い場所に親株を植えます
  5. 親株から発生したランナーを雨樋に固定していきます
  6. 雨樋で発根させます
  7. ランナーを切って苗を植えます

知り合いのいちご農家がこれを導入しています。

見学させてもらいましたが、大規模で迫力があります。

メリットは狭い面積で、一度に大量の苗を作れることです。

デメリット

ただし、もし一株でも炭疽病や萎黄病に感染していると、その病気が一気に拡大するリスクがあります。

設備費が高いので初期投資が大きくなります。

8.イチゴの空中採苗

空中採苗は高設ベンチからランナーを垂れさせて、根が生えていない苗を切って、挿し苗で増やす方法です。

商業的ないちご農園では使っているところが多いです。

手順

  1. 高設ベンチに親株を植えます
  2. 親株からランナーを発生させます
  3. ランナーを空中に伸ばします
  4. ランナーを切り取ります
  5. ポットやすくすくトレイなどにランナーピンで固定します
  6. 散水ミストなどで水やりを行い、根が生えるまで湿り気を保ちます

デメリット

親株から水分が供給されないので、湿り気を保たいないと枯れます。

慣れない人は枯らせてしまうリスクがあるので、注意が必要です。

9.イチゴのメリクロン(ウイルスフリー苗)

ここからは変わった方法です。

メリクロンとは、茎頂分裂組織を試験管の中で培養して、そこから育てた苗のことです。

メリクロンはウイルスフリー苗ともいいます。

この苗は炭疽病や萎黄病、ウイルスに感染していません。

なので、炭疽病や萎黄病、ウイルス病で悩んでいるいちご農園は、メリクロン苗を購入します。

メリクロン苗は苗業者から購入できます。

ただし、メリクロンは生育が旺盛すぎて収穫量は減るので注意が必要です。

10.いちごの種から苗を作る

いちごの品種によっては、種から増やすこともできます。

最近人気なのは、よつぼしという品種です。

よつぼしはF1品種のいちごです。

なので、種を購入してそれを撒けば、よつぼしが生まれます。

ただし、よつぼしの果実についている種を撒いても、よつぼしは生まれません。

なぜかというと、交配によって遺伝子が変わってしまうからです。

同様に、どんな品種でもその果実についている種は、その品種ではない別物に変わっています。

種で増やすと炭疽病や萎黄病、ウイルスの感染を防げます。

種子繁殖型の場合にはセルトレイで種を撒いて、均一な苗をいつでも作ることができます。

種子繁殖型のいちごが増えると、いちごの生産方法に革命が起きるかもしれません。

苺の一番良い育苗方法は?

「一番良い育苗方法は何ですか?」とよく質問されます。

誰にとっても一番良い方法はありません。

どの方法にもメリットとデメリットがあるからです。

なので、自分に一番合った育苗方法を選ぶことが大切です。

YouTubeでも動画で解説しています

YouTubeでもイチゴ栽培やイチゴビジネスについて解説しています。

こちらは育苗方法を解説した動画です。

イチゴの育苗方法まとめ

今回はいちごの育苗方法を10種類まとめました。

  1. 地面に植える
  2. 籾殻採苗
  3. ポット受け
  4. すくすくトレイ(かたつむりポット)
  5. 極小ポット
  6. Dトレイ
  7. 雨樋
  8. 空中採苗
  9. メリクロン苗
  10. 種から育てる

いろんなやり方があるので、メリットデメリットを比べて、自分に一番合った方法を選んでください。

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