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テレビ番組やウェブメディアなどで、「世界のいちご品種の半分以上は日本の品種です」と紹介されているのを見たことはないでしょうか。

私もこれまで何度か、このような説明を目にしてきました。

日本では、各都道府県の研究機関や民間企業などが積極的にいちごの品種改良を行っています。

「とちおとめ」「あまおう(福岡S6号)」「紅ほっぺ」「章姫」「ゆめのか」「とちあいか」など、たくさんの品種があることは皆さんもご存じだと思います。

ただ、私は以前から少し疑問に感じていました。

「本当に世界のいちご品種の半分以上が日本の品種なのだろうか?」

そこで今回、弊社イチゴテックで海外の品種登録や品種保護に関する情報を調べてみました。

結論から言うと、「世界のいちご品種の半分以上は日本品種です」という意見を「事実」として紹介するのは、少し無理がありそうです。

少なくとも、私が各国の品種登録や品種保護のデータを調べた限り、この説を裏付けるような数字は確認できませんでした。

農林水産省でも「世界の半分以上」と紹介されている

実は、この話はテレビ番組だけで使われているわけではありません。

農林水産省のウェブサイトにも、「日本のいちごは品種も約300種と大変多く、世界全体の品種の半分以上が日本のものだという説もあります」という記載があります。

また、農林水産省が作成した別の資料でも、日本で登録されているいちご品種の数を紹介したうえで、「世界の半分以上の種類を日本のいちごが占めると言われています」と説明されています。

ここで少し注目したいのが、「半分以上です」と断定しているわけではなく、

「説もあります」
「と言われています」

という表現になっていることです。

そして、世界に全部で何品種あるのか、その根拠となる数字は示されていません。

(根拠がないことを言いたいときによく使う手ですね)

それなら実際に海外の品種数を調べてみよう、というのが今回の調査のきっかけです。

どのように調べたのか

世界中のいちご品種を完全に数えるのは、実はかなり難しいです。

日本には「農林水産省の品種登録制度」がありますが、国によって制度が違うからです。

例えばアメリカでは、いちごのような栄養繁殖する植物について「Plant Patent(植物特許)」が使われています。

EUにはEU全体を対象にした「品種保護制度」があります。

中国、韓国、イスラエル、メキシコ、オーストラリアなどにも、それぞれ「独自の制度」があります。

そこで今回は、「その国や地域で、いちごについて公的に登録・保護された品種が累計でどのくらいあるのか」を中心に調べました。

また、昔に登録されて現在は権利が切れている品種(日本でいう一般品種)もあるため、可能な限り、現在有効な品種だけではなく過去に登録されていた品種も含めています。

なお、今回の数字には一つ大きな注意点があります。

同じ品種が、アメリカ、EU、日本、韓国など複数の国で登録されている場合があります。

また、日本の品種登録とは制度が異なる国もあります(植物特許など)。

そのため、各国の数字をすべて足した数字が、そのまま「世界に存在するいちご品種数」になるわけではありません。

今回は、「日本以外の国にも、実際にどのくらいいちご品種が存在しているのか」を見るためのおよその数値を把握するための調査と考えてください。

世界各国のいちご品種を調べた結果

今回調べた結果は、次のようになりました。

  • 日本:約330品種
  • EU:約650品種
  • アメリカ:約498品種
  • メキシコ:約222品種
  • 中国:約166品種
  • オーストラリア:約100品種
  • 韓国:77品種以上
  • エジプト:61品種以上
  • イスラエル:52品種以上
  • ブラジル:21品種以上

繰り返しになりますが、国によって制度や集計方法が違うため、一部は概算です。

また、先ほど説明したように、同じ品種が複数の国で登録されている場合があります。

しかし、大きな傾向を見る目的では使えると思います。

それでも、この数字を見るだけで一つ分かることがあります。

日本以外の国にも、非常に多くのいちご品種があります。

例えばEUでは約650品種、アメリカでは約500品種が確認できました。

どちらも日本の約330品種を上回っています。

今回、調べた国や地域の数字を単純に合計すると、約2,177件になります。

そのうち日本は約330件なので、

330÷2,177=約15%です。

もちろん、これは重複を含んでいるため、「世界のいちご品種の15%が日本品種です」という意味ではありません。

ただし少なくとも、「日本に約300品種あるから、世界の半分以上が日本品種である」という説明は、かなり無理があることがわかっていただけると思います。

しかも今回は、世界中のすべての国を調べたわけではありません。

英国、カナダ、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、トルコ、南アフリカなど、まだ集計していない国もあります。

世界にはおよそ200の国や地域があり、イチゴを生産する国がたくさんあります。

「世界のいちご品種数」を正確に数えるのは難しい

そもそも、「世界にはいちご品種が何品種あるのか?」という問い自体が、簡単ではありません。

例えば、

・品種登録された品種だけを数えるのか?

・品種登録されていない、すごく古い品種も含めるのか?

・品種登録されたが、すでに権利が切れた品種を含めるのか?

・現在、実際に栽培されている品種だけを数えるのか?

・同じ品種が複数の国で登録されている場合は1品種として数えるのか?

こうした条件によって、結果は大きく変わります。

そのため、本当に「世界のいちご品種の半分以上が日本品種」と言うのであれば、まず世界全体の品種数を同じルールで数えたデータが必要になります。

しかし今回調べた範囲では、そのようなデータは見つけられませんでした。

国によって品種登録のルールや仕組みが違うからです。

なぜ「世界の半分以上が日本品種」と言われるのか

では、なぜこの話が広く使われるようになったのでしょうか?

知識不足だから

一つの理由として考えられるのは、海外のいちご品種について、日本ではあまり知られていないことです。

日本で生活していると、スーパーやいちご狩り農園で目にするのは、ほとんどが日本の品種です。

さらに各都道府県から新品種が発表されると、ニュースでも大きく取り上げられます。

そのため、「日本にはものすごくたくさんのいちご品種がある」という印象を持つのは自然だと思います。

その一方で、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国、メキシコ、イスラエルなどでも、多くのいちご品種が育成されていることは、日本ではあまり知られていません。

「日本はすごい」が求められているから

もう一つは、

「日本のいちごはすごい!」
「世界の半分以上の品種が日本にある!」

という説明が、日本人にとって優越感を感じられ、求められているからです。

日本では外国人が日本を褒めるテレビ番組やYouTubeが人気ですよね。

テレビ番組などでも、「日本のイチゴ、農業技術はすごい」という話は紹介しやすく、視聴者にも伝わりやすいテーマだと思います。

私が気になるのは、根拠がはっきりしない数字が何度も紹介されるうちに、いつの間にか事実として扱われるようになってしまうことです。

最初は、「世界の半分以上だという説もある」だったものが、「世界の半分以上です(事実のように断定)」に変わって伝わっている可能性もあると思います。

日本のいちご育種がすごいことに変わりはない

ここまで読むと、「日本のいちごは大したことがないと言いたいの?」と思う人もいるかもしれません。

もちろん、そういう意味ではありません。

日本では非常に多くのいちご品種が育成されています。

各都道府県の農業試験場や国の農研機構、民間企業などが、収量、糖度、酸度、果実の硬さ、色、病害抵抗性、収穫時期、輸送性など、さまざまな特徴を改良しています。

世界的に見ても、日本はいちごの育種が非常に盛んな国の一つだと思います。

だからこそ私は、「日本のいちごをすごく見せるために、根拠のはっきりしない「世界の半分以上」という数字を使う必要はない」と考えています。

実際のデータを見ても、日本が世界有数のいちご育種国であることは十分に伝わります。

まとめ

テレビやウェブメディアなどでよく紹介される、「世界のいちご品種の半分以上は日本品種です」という話について、実際に海外の品種登録や品種保護の情報を調べてみました。

その結果、EUでは約650品種、アメリカでは約498品種、メキシコでは約222品種、中国では約166品種など、日本以外の国や地域にも多くのいちご品種が存在していることが分かりました。

今回調べた国や地域だけでも約2,177件あり、日本の約330件は単純計算では約15%です。

もちろん、同じ品種が複数の国で登録されているため、この15%という数字をそのまま「世界に占める日本品種の割合」と考えることはできません。

一方で、「世界のいちご品種の半分以上が日本品種である」という説についても、それを裏付ける十分なデータは今回確認できませんでした。

そのため、テレビやウェブサイトなどでこの話を見かけたときには、

「世界全体の品種数は、どのように数えたのだろう?」

「その数字の根拠はどこにあるのだろう?」

と少し考えてみるとよいと思います。

日本のいちご育種は、「世界の半分以上」という数字を使わなくても十分にすごいものです。

正確なデータをもとに、日本のいちごの魅力や技術力を評価していくことが大切だと弊社イチゴテックは考えています。

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