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「イチゴの苗に遠赤色LEDの光を当てると、花芽分化が促進される」という研究結果があります。

日本のイチゴ促成栽培では、花芽分化を早めるために「夜冷短日処理」などの花芽分化促進処理が利用されています。

しかし、こうした処理には設備や電気代、労力などが必要です。

もしLEDの光を照射するだけで花芽分化を促進できるのであれば、従来の栽培方法を大きく変える可能性があります。

実際に、2026年には中国で一季成り性の「紅ほっぺ」を使った研究で、「遠赤色LEDの照射によって花芽分化が促進された」という論文が発表されました。

しかし、遠赤色LEDを照射すれば、どんな品種のイチゴでも花芽分化が早まるのでしょうか?

夜冷短日処理のための夜冷庫は不要になり、LEDだけで花芽分化を促進できるのでしょうか?

今回は、国内外の研究論文を調べて、遠赤色LEDがイチゴの花芽分化に与える影響や、実際の農業現場で利用できる可能性について考えてみました。

遠赤色光とは? 遠赤外線とは違う?

まず、「遠赤色光」とは何かを説明します。

光には波長があり、波長によって植物に与える影響が異なります。

人間の目に見える光を可視光と呼びます。

植物の光合成では、主に400〜700 nmの光が利用されます。

今回紹介する遠赤色光(Far-red light)は、一般的に700〜750 nm付近の光を指します。

今回の研究で使われているのは、主に730〜735 nm付近の光です。

なお、遠赤色光と遠赤外線は厳密には異なります。

遠赤色光は近赤外線の領域と重なる光であり、暖房器具などで使われる遠赤外線とは波長が大きく異なります。

植物はフィトクロムという光受容体を使って、赤色光や遠赤色光を感知しています。

この仕組みは植物の茎の伸長や花芽分化などに関係しています。

そのため、遠赤色LEDの光を使って、植物の生育や開花をコントロールする研究が行われています。

イチゴの花芽分化には温度と日長が重要

イチゴの花芽分化を考えるうえで、重要なのが気温と日長時間です。

日長とは、日の出から日の入りまでの時間のことです。

イチゴには大きく分けて、一季成り性と四季成り性があります。

一般的な一季成り性品種では、気温が低く、日長が短くなることで花芽分化が促進されます。

例えば「とちおとめ」「章姫」「紅ほっぺ」などです。

一方、四季成り性品種では、一般的に長日条件で花芽分化が促進されます。

ただし、温度が低いと日長に関係なく花芽分化する場合もあり、高温すぎると花芽分化が抑制されることもあります。

つまり、日長時間が長ければ必ず四季成り性品種の花芽分化が促進されるわけではありません。

また、一季成り性でも、十分な低温条件では日長の影響が小さくなることがあります。

このように、イチゴの花芽分化は、品種、気温、日長などの組み合わせによって決まります。

他にも、苗の年齢である「葉齢」も花芽分化に影響し、苗が幼いと花芽分化が起きにくいです。

一般的な花芽分化促進技術「夜冷短日処理」とは?

日本のイチゴ促成栽培では、花芽分化を人為的に早める方法として、夜冷短日処理や低温暗黒処理(株冷)、間欠冷蔵処理などが知られています。

特に代表的な処理が、夜冷短日処理です。

これは、夜間に苗を冷蔵施設などに入れて温度を下げ、短日条件を与える方法です。

例えば、日長8時間、夜温15℃などの条件で処理することで、花芽分化を促進します。

ただし、適切な条件や処理期間は品種などによって異なります。

夜冷短日処理には、大きく2つのメリットがあります。

1つ目は、通常よりも早い時期に花芽分化を促進できることです。

これによって、収穫開始時期を早め、単価が高くなりやすい年内の収穫量を増やせる可能性があります。

2つ目は、夏の高温から苗を保護できることです。

日本の夏は非常に暑く、育苗ハウス内の気温が高くなります。

高温によって苗の生育や花芽の形成・発達が悪影響を受けることがあります。

夜冷短日処理では、夜間に苗を冷却することで、苗が高温にさらされる時間を減らせます。

そのため、単に花芽分化を促進するだけでなく、暑熱による悪影響を軽減できることも重要なメリットです。

特に令和になってからの温暖化によって、夏の猛暑が厳しくなったので、この効果は大きいです。

ただし、夜間だけを冷却する方式では、昼間の高温まで完全に防げるわけではありません(それでも夜温も高いので良い効果がありますが)。

また、夜冷短日処理には、冷却設備の導入費用、電気代、苗の移動作業などの負担があります。

そこで、遠赤色LEDを照射するだけで花芽分化を促進できるのであれば、こうした設備や作業の一部を削減できる可能性があります。

ただし、LEDには冷却効果がないため、夏の暑さから苗を保護するという夜冷短日処理のメリットはなくなります。

2026年の研究では「紅ほっぺ」の花芽分化が促進された

2026年1月、中国の研究者らが「紅ほっぺ」を使った遠赤色LEDの研究結果を発表しました。

論文のタイトルは「Physiological and morphological responses of strawberry seedlings to end-of-day far-red light」です。

この研究では、遠赤色LEDの照射時間を変えることで、イチゴ苗の生育や花芽分化にどのような影響があるのか調べています。

なぜ、中国で紅ほっぺが研究対象になっているかというと、中国で最も多く栽培されている品種が紅ほっぺだからです。

実験方法

研究は2024年7月から9月にかけて、中国の内モンゴル自治区ウランチャブ市にある温室で実施されました。

主な実験条件は次のとおりです。

項目実験条件
品種紅ほっぺ
実施時期2024年7〜9月
実施場所中国・内モンゴル自治区ウランチャブ市
施設太陽光利用型温室
育苗方法ランナー由来の挿し苗を32穴セルトレーで育苗
培地ピート、バーミキュライト、パーライト、ミミズ堆肥を6:2:1:1で混合
順化期間10日間
LEDの波長730 nm
LEDの光強度25 ± 3 µmol/m²/s
LEDの高さ苗の上方1.3 m
照射時間0時間、3時間、6時間、9時間/日
照射開始時刻日没1時間前
処理期間60日間
調査時期処理開始30日後、60日後

照射時間が0時間の区を無処理区として、LEDを照射した3つの区と比較しました。

例えば6時間照射区では、日没前に1時間、日没後に約5時間の遠赤色光を照射したことになります。

日没前後は、自然光の強度や赤色光と遠赤色光の割合が変化します。

そのため、日没前から照射することで、日没前後の不安定な光環境の影響を小さくする意図があった可能性があります。

ただし、論文では、この開始時刻を選んだ理由までは明記されていません。

なお、各処理は3反復で実施され、茎頂などを採取して顕微鏡による組織観察も行っています。

実験結果

最も良い結果が得られたのは、6時間照射区でした。

処理開始30日後には、6時間照射区で花芽分化の開始が確認されました。

さらに60日後には、6時間照射区で花芽が花弁分化期まで発達していました。

一方、無処理区では花序分化期にとどまっていました。

つまり、遠赤色LEDを6時間照射した苗では、無処理の苗よりも花芽の発達が進んでいたのです。

苗の生育についても、次のような結果が報告されています。

調査項目6時間照射区の変化
草丈(30日後)18.89%増加
葉柄長(30日後)16.16%増加
根長(30日後)27.67%増加
苗の生育指数(60日後)46.32%増加

いずれも無処理区との比較です。

また、9時間照射区よりも6時間照射区の総合評価が高くなりました。

つまり、照射時間を長くすればするほど効果が高くなるわけではありませんでした。

この研究で特に重要なのは、花芽の発達を組織観察によって確認していることです。

単に草丈が伸びたという結果ではなく、花芽分化にも影響したことを確認しています。

ただし、この研究では「花芽分化が何日早まったのか」という正確な日数までは算出できません(途中で2回しか検鏡していないため)。

また、実際の収穫開始日や収量への効果も明らかになっていません。

例えば、花芽分化が早いが、花数が少なく花が小さく収穫量は少ない可能性もあります。

実験場所のウランチャブ市は、日本の青森市とほぼ同じ緯度

今回の研究結果を理解するうえで、実験場所も重要です。

研究が行われたウランチャブ市の実験施設は北緯約41.06度に位置しています。

日本では青森市が北緯約40.82度なので、ほぼ同じ緯度です。

ウランチャブ市の日長時間

日長時間は主に緯度と季節によって決まるため、両都市の自然日長はほぼ同じになります。

緯度が高い方が夏の日長時間は長いので、青森県は日本の中で北海道に次いで日長時間が長い県です。

青森市付近の夏の日長時間は、おおよそ次のようになります。

時期自然日長の目安
7月上旬約15時間
8月上旬約14時間20分
9月上旬約13時間10分
9月中旬約12時間30分

つまり、今回の研究は、自然日長が約15時間から約12時間半へと短くなっていく時期に行われました。

しかし、日長が同じだからといって、栽培環境まで同じとは限りません。

ウランチャブ市は内陸に位置し、日本とは気温、日較差、湿度、日射などの環境が異なります。

また、今回の実験は太陽光利用型温室で実施されているため、屋外の気象条件と温室内の環境も区別する必要があります。

そして、温度が何度で管理されていたのかは不明です。

イチゴの花芽分化は日長と温度の両方に左右されるため、これらの違いが結果に影響する可能性があります。

ウランチャブ市は寒い気候

そこで、ウランチャブ市の月別気温を調べてみました。

7月8月9月10月
最高気温25.423.718.812.1
平均気温19.517.612.15.1
最低気温13.611.95.8-1.0

すると、7月でも最高気温は25℃程度、9月には最高気温が19℃程度でした。

これは日本と比べるとかなり低温で、涼しい環境です。

日本で考えると、北海道の最北端の稚内市か、それ以上に寒い気候だと思います。

参考までに、ウランチャブ市と北海道稚内市の平均気温を紹介します(平成時代の)。

7月8月9月10月
ウランチャブ市19.517.612.15.1
北海道稚内市17.620.317.211.3

北海道稚内市よりもウランチャブ市の方が平均気温が低いですね。

この実験ではビニールハウスを使用したハウス栽培なので、外気温よりは高い室温だった可能性があります。

しかし、紅ほっぺは低温ほど花芽分化しやすいので、低温で管理されていたと思います。

「この実験環境は、日本のイチゴ産地の7月から9月の栽培環境とは、大きく異なる温度条件だった」と推測できます。

2023年には「Elan」と「よつぼし」でも研究されている

2023年には、大阪公立大学などの研究者によって、種子繁殖型イチゴ「Elan」と「よつぼし」を使った研究が発表されています。

この研究では、日長16時間と24時間などの条件を設定し、遠赤色光の有無によって花芽の発達や出蕾がどのように変化するのかを調べました。

その結果、遠赤色光や長日処理によって花芽の発達や出蕾が促進される傾向が確認されました。

ただし、今回使われた品種には注意が必要です。

Elanは四季成り性の品種

Elanは、長日条件で花芽分化が促進される四季成り性の品種です。

そのため、日長を延長すると花芽分化が促進されること自体は、品種の基本的な性質からも説明できます。

遠赤色光を加えた影響を評価する場合には、単純に日長を延ばした影響とは区別して考える必要があります。

よつぼしは特殊な花成特性を持つ品種

「よつぼし」も、一般的な一季成り品種とは異なります。

よつぼしは、一季成り性品種のように低温・短日条件で花芽分化する性質を持ちながら、四季成り性品種のように長日条件でも花芽分化しやすい特殊な品種です。

実際に、2015年の品種育成論文では、早生性と長日性を併せ持つ特異な花成特性が報告されています。

また、千葉県などの研究では、遠赤色光に限定しない「長日処理」によっても、よつぼしの花芽分化が促進されることが確認されています。

2023年の研究では、よつぼしの遠赤色光に対する反応はElanより小さく、花芽発達の促進は遠赤色光と長日条件を組み合わせた場合に認められました。

つまり、よつぼしの研究結果を紹介する場合には、遠赤色光特有の効果と、よつぼしがもともと持っている長日性の影響を区別する必要があります。

Elanとよつぼしの研究結果だけを根拠にして、一般的な一季成り性品種でも遠赤色LEDによって花芽分化が促進されると結論づけることはできません。

逆に、遠赤色光で花芽分化が抑制された研究もある

実は、遠赤色光によって花芽分化が抑制された研究も存在します。

2026年に発表された研究では、一季成り品種「Chandler」に対して、赤色光と遠赤色光を組み合わせた夜間中断照明を行ったところ、花芽形成が抑制されました。

一方、同じ研究では、別の品種や系統で光照射によって花芽形成が促進された例も報告されています。

また、1973年の研究でも、一季成り品種「Cambridge Favourite」に対して夜間の前半に遠赤色光を与えると、花芽分化が抑制されることが確認されています。

つまり、遠赤色光には必ず花芽分化を促進する効果があるわけではありません。

品種、気温、日長、照射時刻などによって、反応が変わる可能性があります。

特に、日没前後の遠赤色光照射と、夜中に行う遠赤色光照射は、植物に与える影響が異なる可能性があります。

一般的な620 nmのLED電照とは何が違う?

イチゴ栽培では、以前からLEDを使った電照が利用されています。

イチゴは冬は矮化し葉が小さくなり、花房が短くなります。

それを防ぐために、秋から冬にかけてLEDで電照を行います。

例えば、愛知県農業総合試験場の『イチゴのLED電照マニュアル』では、波長620 nmの赤色LEDによる電照が紹介されています。

この電照は、主に冬季の草勢維持を目的としたものです。

一季成り性のイチゴは、冬季の低温・短日条件で生育が停滞しやすくなります。

そのため、電照によって葉柄の伸長や葉の展開などを促し、草勢を維持します。

愛知県の試験では、620 nmの赤色LEDを使用した場合、一定の光強度では品種ごとに必要な電照時間が異なることが報告されています。

品種電照時間の目安
章姫4時間以上
ゆめのか6時間以上
とちおとめ8時間以上

これらは、放射照度45 mW/m²程度の条件で得られた目安です。

一方、今回紹介した730 nmの遠赤色LED研究は、夏季の育苗中に花芽分化を促進することが目的の一つです。

つまり、両者は波長、処理時期、目的が異なります。

620 nmの赤色LEDは冬季の草勢維持、730 nmの遠赤色LEDは今回の研究では花芽分化促進というように、区別して理解する必要があります。

もちろん、赤色光も遠赤色光も植物の花成反応に影響するため、波長だけで用途が完全に決まるわけではありません。

同じ研究結果を再現するには、同じ条件が必要

ここまで複数の研究を紹介しましたが、科学的な研究結果を利用するうえでは、再現性が非常に重要です。

再現性とは、同じような実験を行ったときに、同じような結果が得られるかということです。

例えば、今回の紅ほっぺの研究では、730 nmの遠赤色LEDを1日6時間照射することで、花芽分化が促進されました。

しかし、この結果を見て、日本のイチゴ農園でも730 nmのLEDを6時間照射すれば、必ず花芽分化が促進されると考えるのは間違いです。

なぜなら、研究結果には品種や栽培環境など、さまざまな条件が影響するからです。

今回の実験は、中国の内モンゴル自治区で、2024年7月から9月にかけて行われました。

品種は紅ほっぺで、32穴セルトレーを使い、特定の培地で育苗しています。

LEDの波長は730 nm、光強度は25 ± 3 µmol/m²/s、照射開始時刻は日没1時間前でした。

できるだけ同じ条件をそろえれば、同様の結果が得られる可能性は高くなります。

しかし、品種や苗齢、温度、日長、光強度などが違えば、違う結果になる可能性があります。

例えば、ウランチャブ市と青森市は緯度がほぼ同じですが、温度や日射条件は異なります。

おそらく、ウランチャブ市は北海道最北端の稚内市よりも寒い気候なので、日本のどの地域よりも涼しい環境で試験が行われました。

(それだけ涼しい環境なら、遠赤色光なしでも窒素中断だけで花芽分化するのでは!?と思ってしまいます)

また、同じ日本国内でも、北海道と九州では夏季の育苗条件が大きく異なります。

さらに、今回の研究からは、実験期間中の温室内の気温や苗の周囲の光環境を、すべての時間帯について完全に再現できるほどの情報は得られません。

そのため、日本の生産現場で同じような結果が得られるかどうかについては、実際に試験する必要があります。

「研究で効果があった」という情報だけでなく、「どんな条件で効果があったのか」を確認することが重要です。

遠赤色LEDは市販されている?

730 nm付近の遠赤色LEDは、すでに市販されています。

電子部品としてのLED素子だけでなく、植物育成向けの照明器具として販売されている製品もあります。

ただし、730 nmのLEDであれば、どの製品でも今回の研究と同じ効果が得られるわけではありません。

例えば、同じ730 nmでも、照明器具によって光強度、照射範囲、配光特性などが異なります。

今回の研究で使用した光強度は25 ± 3 µmol/m²/sでした。

そのため、研究結果を再現するには、LEDの仕様だけでなく、実際に苗に届く遠赤色光の強さを確認する必要があります。

また、一般的な光合成有効光量子束密度(PPFD)だけを測定するセンサーでは、730 nm付近の遠赤色光を適切に測定できない場合があります。

遠赤色光を測定できる機器が必要です。

なお、日本国内では遠赤色光をイチゴ栽培に利用する技術の特許や、関連する農業用照明製品も存在しています。

しかし、遠赤色LEDによる花芽分化促進は、日本の商業的ないちご農園では普及していません。

遠赤色LEDは夜冷短日や株冷処理の代わりになるのか?

今回の研究を調べて、最も興味深いと感じたのは、遠赤色LEDが夜冷短日処理や株冷処理の代わりになる可能性です。

夜冷短日処理は、苗を冷却して短日条件を与えることで花芽分化を促進します。

一方、遠赤色LEDによって花芽分化を促進できるのであれば、冷却設備や苗の移動作業を減らせる可能性があります。

しかし、夜冷短日処理や株冷処理には、暑い夏に苗を冷却して高温の悪影響を軽減するというメリットもあります(デメリットもありますが)。

遠赤色LEDには、この冷却効果がありません。

さらに、今回の紅ほっぺの研究では、LEDを照射した区と照射しない区を比較していますが、夜冷短日処理を行った区との比較は実施されていません。

そのため、どちらの方法が花芽分化を早く促進するのか、収穫量を増やすのか、費用対効果が高いのかはわかりません。

そもそも、日本ではありえないくらい涼しい環境なので、夜冷処理が必要ない可能性もあります。

また、遠赤色LEDによって花芽分化が促進されても、その後の高温によって花芽の発達が遅れる可能性があります。

農研機構の研究では、花芽分化誘起処理後の苗を高温にさらすことで、花芽の発達や年内収量に悪影響が生じることが確認されています。

今後、遠赤色LEDを実用化するのであれば、同じ品種、同じ育苗条件で、無処理区、夜冷短日処理区、遠赤色LED区を比較する必要があります。

評価すべき項目は、花芽分化日、出蕾日、花房あたりの花数、収穫開始日、年内収量、果実サイズ、総収量、苗の品質、設備費、電気代などです。

こうした比較によって、遠赤色LEDが夜冷短日処理の代替技術になるのか、あるいは補助的な技術として利用できるのかを判断できるようになります。

まとめ

今回は、遠赤色LEDを照射することで、イチゴの花芽分化が促進されるのか、国内外の研究論文を調べてみました。

その結果、2026年の一季成り性の紅ほっぺの研究では、730 nmの遠赤色LEDを1日6時間照射することで、花芽分化の進行が促進されることが確認されました。

一方、四季なり性のElanやよつぼしの研究では、品種がもともと持っている四季なり性の長日性の影響を考慮する必要がありました。

また、一季成り性品種で遠赤色光によって花芽分化が抑制された研究も存在しています。

つまり、遠赤色LEDにはイチゴの花芽分化を促進する可能性がありますが、すべての品種や栽培環境で同じ効果が得られるわけではありません。

また、夜冷短日処理や株冷処理には花芽分化促進だけでなく、夏の暑さから苗を保護するというメリットもあります。

遠赤色LEDだけでは、その役割をすべて代替することはできません。

遠赤色LEDによる花芽分化促進は、科学的な根拠がある程度はある興味深い技術ですが、日本の一般的な促成栽培でも利用できるかどうかは、さらに検証が必要です。

今後、日本の主要品種を使った比較試験や、夜冷短日処理との効果・費用の比較が進めば、新たな花芽分化促進技術として利用できる可能性があります。

弊社イチゴテックとしても、今後の研究の進展に注目したいと思います。


参考文献・資料

  1. Zhang, Y. et al. (2026). Physiological and morphological responses of strawberry seedlings to end-of-day far-red light. BMC Plant Biology.
    https://doi.org/10.1186/s12870-025-08092-3
  2. Effects of far-red light and photoperiod during early growth stages on flower bud development of seed-propagated strawberry seedlings (2023). Scientia Horticulturae.
    https://doi.org/10.1016/j.scienta.2023.112051
  3. 森ら(2015)「共同育種によるイチゴ種子繁殖型品種『よつぼし』の開発」園芸学研究 14巻4号、409–418頁。
    https://doi.org/10.2503/hrj.14.409
  4. 千葉県農林総合研究センター「四季成り性種子繁殖型イチゴ『よつぼし』の花成特性解明」
    https://www.pref.chiba.lg.jp/ninaite/shikenkenkyuu/documents/h28_25.pdf
  5. 農研機構「四季成り性イチゴの連続開花性の強弱と日長処理による花成誘導効果」
    https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2015/tarc15_s10.html
  6. 愛知県農業総合試験場『イチゴのLED電照マニュアル』
    https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/515328.pdf
  7. 農研機構「イチゴの花芽発達に悪影響を及ぼす高温遭遇の程度」
    https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/warc/2007/wenarc07-20.html
  8. Flowering of Strawberry (Fragaria × ananassa Duch.) Under Supplemental LED Lighting During the Nyctoperiod, with Nitrogen and Chilling (2026). Applied Fruit Science.
    https://doi.org/10.1007/s10341-026-01977-z

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