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テレビやインターネットの記事などで、ときどき、

「日本は世界で一番、生食用のいちごを食べる国です」

「日本人はいちごを生で食べる量が世界一です」

といった説明を見かけます。

実は農林水産省のウェブサイトにも、「生食での消費量は日本が世界一だとも言われています」という記載があります。

JETRO(日本貿易振興機構)のウェブサイトにも、「日本は、生食でのイチゴの消費量が世界一だと言われてきました」と書かれています。

テレビ番組やウェブメディアなどのマスメディアでも、この情報をもとに「日本はいちごの生食消費量が世界一」と紹介されることがあります。

私はいちごの仕事をしているので、この話を何度も聞いてきました。

ただ、以前から一つ疑問がありました。

「それは、何の統計を根拠に世界一と言っているのだろう?」

そこで今回、農林水産省、JETRO、農畜産業振興機構、海外政府の統計などを調べてみました。

先に結論を書くと、

「日本は生食用いちごの消費量が世界一」という主張を裏付ける国際統計は、見つけることができませんでした。

それどころか、各国の実際の統計を見ると、日本よりも多くのいちごを購入・消費している国が存在します。

つまり、少なくとも現在確認できる統計から「日本が世界一」と断定するのは間違いです。

【結果】日本よりもいちごを食べる国が存在した

では調査結果を紹介します。

日本人は年間どれくらいいちごを買っているのか

まず、日本のデータを見てみます。

総務省の「家計調査」をもとに栃木県いちご研究所がまとめたデータによると、2024年の日本人1人当たりの年間いちご購入量は、678gでした。

購入金額は、年間1,214円です。

678gというと、栃木県の説明では約2.5パック分に相当します。

つまり、日本人は平均すると1年間に2~3パック程度のいちごを家庭用として購入していることになります。

しかも、日本のいちご購入量は長期的には減っています。

1994年には1人当たり年間1,122g購入していましたが、2024年には678gまで減少しています。

30年間で約40%の減少です。

もちろん、この数字には外食やケーキなどに使用される「業務用いちご」は含まれていません。

しかし、「日本人はいちごをものすごく大量に生食する」というイメージとは少し違う数字ではないでしょうか。

データを見る限り、スーパーなどでいちごを買って家で食べる量は40%も減っています。

スペインでは日本よりはるかに多く購入されている

では海外はどうでしょうか。

スペイン農業・漁業・食料省の家庭消費統計を見ると、2020年のスペインのいちご・大粒いちごの家庭消費量は、1人当たり年間2.89kgでした。

年間購入金額は、1人当たり8.52ユーロです。

同じ「家庭で購入されたいちご」という比較的近い条件で見ると、

日本:678g
スペイン:2,890g

となります。

スペインは日本の約4.3倍です。

年が完全には同じではありませんが、この差はかなり大きなものです。

最近のスペインでもいちご消費は多く、2024年には1人当たり2.33kgというデータが報告されています。

少なくとも、「日本人が世界で圧倒的に生のいちごをたくさん食べている」とは考えにくい結果です。

スペイン人はいちごを生食しないのでは

「もしかして、スペイン人はいちごを生で食べないのでは!?」と考える人もいるでしょう。

私はスペイン語が話せ、スペイン一周旅行をしたことがあり、スペインでいちごを買って食べたこともあります。

スペイン人の食生活も少しは理解していると思います。

スペインでは、いちごをジャムにしたり加熱して食べることもありますが、生食もします。

購入金額で見ても日本が世界一とはいえない

では、「日本のいちごは高いので、重量ではなく購入金額なら世界一なのでは?」とも考えられます。

日本では2024年に1人当たり年間1,214円をいちごに支出しています。

しかし、海外を見ると金額でも日本を上回る例があります。

カナダ統計局の2023年家計支出調査では、カナダの家庭がいちごに使った金額は、1世帯当たり年間72カナダドルでした。

2021年の56カナダドルから28.6%増えています。

2023年の年間平均為替レートでは、1カナダドル ≒ 104円です。

したがって、72カナダドル × 約104円 = 約7,500円です。

日本は世帯で考えると約3,500円です(1人あたり1,214円のため)。

世帯あたりのいちごの購入金額は、カナダの方が日本のおよそ2倍も高いことになります。

物価の違いなどもあるため単純な為替換算だけで国際比較することはできませんが、少なくとも「購入金額なら日本が圧倒的に世界一」というデータも確認できません。

むしろ日本の特徴は、購入量が非常に多いことよりも、いちご1kg当たりの価格が高いことにあると考えた方がよさそうです。

では、なぜ「日本が世界一」と言われるようになったのか

ここを調べると、非常に興味深いことが分かりました。

農畜産業振興機構が2006年に公開した記事には、「日本のいちごの消費量は世界でもトップクラス」と書かれています。

同じ記事では、2005年の世界のいちご生産量についてFAOSTATのデータが掲載されています。

ただし、その統計は「消費量」ではなく『生産量』です。

そしてその直後に、「日本では、生で食べるのが主流ですが、アメリカやヨーロッパでは、ジャムにして食べられることが多い」と説明されています。

つまり、この時点では、

「①日本はいちご消費が世界でも多い」

ことと、

「②日本では加工用ではなく生食用として食べる割合が高い」

という二つの話がされています。

ところが、同じ農畜産業振興機構の2008年の記事になると、「世界一の生食用消費を誇ります」という表現に変わっています。

しかし、この「世界一」について国別の消費量ランキングや統計資料などの根拠は示されていません。

さらに2019年の農林水産省の記事では、「生食での消費量は日本が世界一だとも言われています」という、少し曖昧な表現になっています。

つまり、「統計によると世界一です」ではなく「世界一だとも言われています(根拠がないうわさ話)」です。

ここはかなり重要だと思います。

JETROの英語版を見ると、さらに興味深い

JETROの日本語ページには、「日本は、生食でのイチゴの消費量が世界一だと言われてきました」と書かれています。

しかし、同じ内容の英語版を見ると、

“Japan is said to have the highest consumption ratio of raw strawberries in the world.”

となっています。

注目したいのは「ratio」です。

「amount(量)」ではなく、「ratio(割合)」となっています。

つまり、

「いちご消費量そのものが世界一」

ではなく、

「いちごを加工せず、生で食べる割合が世界的に高い」

という意味として解釈することもできます。

これは日本のいちご市場を考えると、かなり納得できる話です。

日本ではスーパーや直売所などで、生鮮果実として食べることを前提にした高品質ないちごが大量に流通しています。

一方、海外のいちご産業では、冷凍、ジャム、ジュース、ヨーグルト、製菓など加工用途の割合が日本より高い国もあります。

そのため、

「日本はいちごを生で食べる割合が非常に高い国」

という説明であれば、十分にあり得ます。

しかし、「日本人が1人当たり世界で最も多く生のいちごを食べている」とは意味が全く違います。

「世界一」の根拠となる統計が見つからない

今回かなり調べましたが、「世界○か国を比較した結果、日本の生食用いちご消費量が○kgで世界1位だった」という統計資料を見つけることはできませんでした。

農林水産省、JETRO、農畜産業振興機構など、日本の公的機関・公的性格の強い機関が「世界一」と紹介している例はあります。

しかし、肝心の「世界一」を証明する統計への出典がありません。

一方で、実際に海外の政府統計を調べてみると、スペインのように日本を大きく上回る家庭購入量を記録している国があります。

そのため、「日本は生食用いちごの消費量が世界一」という説明は、現在確認できる統計とは整合しないと言えます。

まとめ

今回調べた結果をまとめると、「日本は生食用いちごの消費量が世界一」という情報には、世界各国を比較した統計的な根拠を確認できませんでした。

日本の2024年の家庭におけるいちご購入量は1人当たり年間678g、購入金額は1,214円です。

一方、スペインでは年間2,000gを超えるいちごが家庭で購入されています。

したがって、少なくとも「日本人が世界で最も大量に生のいちごを食べている」と断定するのは適切ではありません。

おそらく、この話のポイントは「量」ではなく「割合」です。

日本では、いちごをジャムや冷凍加工などに回すよりも、品質の高い果実をそのまま生で食べる文化が発達しています。

その「日本はいちごを生食する割合が非常に高い」という特徴が、いつの間にか、「日本は生食用いちごの消費量が世界一」という話にすり替わって、誤って広まった可能性があります。

「日本のいちごは世界一」という話は日本人向けには魅力かつキャッチーな言葉なので、テレビやウェブメディアでは使いやすいでしょう。

しかし、弊社イチゴテックでは、いちごに関する情報を発信する以上、イメージではなくできるだけ統計や客観的なデータを確認することが重要だと考えています。

少なくとも現時点では、「日本は世界一、生食用のいちごを食べる国です」ではなく、「日本は、いちごを生食する文化が非常に発達している国です」と表現する方が正確だと思います。

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