
イチゴ農園の経営者の皆さん、人件費に頭を悩ませていませんか?
イチゴ農園では、人件費が経営を大きく左右します。
特に収穫期には、収穫、選別、パック詰め、出荷などの作業が集中します。収穫量が増えるほど必要な人員も増えるため、売上が増えても人件費が膨らみ、思ったほど利益が残らないことがあります。
・最低時給が上昇して人件費が増えた
・経験が浅い人材は作業効率が悪く人件費が多くなる
その人件費の抑えるために、思い切って人件費を切り詰めていませんか?
そうすると、作業適期に作業が間に合わなくなり、収量が減ったり病害虫が増えたりかえって利益を減らしてしまいます。
人件費が大きいことは問題ですが、無理に削るとデメリットも大きいです。
そのため、イチゴ農園の利益を増やすには、単純に人を減らすのではなく、農園全体の作業を見直し、少ない労働時間で運営できる仕組みを作ることが重要です。
この記事では、イチゴ農園の人件費を抑えるための主な方法を解説します。
1. イチゴ狩りや量り売りを始める
イチゴ農園の労働時間のうち、非常に大きな割合を占めるのが、収穫とパック詰めです。
農園の条件によって異なりますが、収穫と出荷調製だけで、全体の労働時間の半分近くを占める場合があります。
そのため、人件費を大きく抑えたいのであれば、まず収穫とパック詰めの作業を減らすことを考える必要があります。
その方法の一つが、イチゴ狩りです。
イチゴ狩りでは、来園者が自分でイチゴを収穫します。そのため、農園側がすべての果実を収穫する必要がありません。
また、収穫したイチゴをサイズごとに選別し、パックに詰めて出荷する作業も大幅に減らせます。
日本各地にイチゴ狩り園が多い理由の一つには、収穫とパック詰めに必要な人件費を抑えられることがあります。
量り売りも有効
食べ放題形式のイチゴ狩りだけでなく、量り売り方式も考えられます。
来園者に自分で購入したいイチゴを収穫してもらい、収穫後に重さを量って販売する方法です。
この方法であれば、農園側が収穫する必要がなく、パック詰め作業も最小限にできます。
来園者にとっても、自分で好きな果実を選べるという楽しさがあります。
一方で、イチゴ狩りや量り売りは、どの農園でもできるわけではありません。
次のような条件が必要です。
・消費者が来園しやすい場所にある
・駐車場を確保できる
・ハウス内を安全に歩ける
・受付やトイレなどの設備がある
・予約や接客に対応できる
・農園を知ってもらうための集客力がある
収穫やパック詰めの人件費を減らせる一方で、受付、接客、清掃、予約管理、広告宣伝などの仕事は増えます。
そのため、自分の農園の立地や設備が観光農園に向いているかを確認したうえで判断する必要があります。
2. 家族や友人、知人に手伝ってもらう
新規就農でイチゴ農園を始めたばかりの時期は、運転資金に余裕がないことがあります。
苗、肥料、農薬、包装資材、燃料などに多くの資金が必要になるため、十分な人数を雇用できない場合もあります。
そのようなときには、家族や友人、知人に農作業を手伝ってもらう方法があります。
特に定植や収穫のピークなど、短期間だけ多くの人手が必要なときには有効です。
本来であれば、作業に応じた賃金を支払うことが望ましいです。
しかし、開業直後で十分な報酬を用意できない場合には、収穫が始まったときにイチゴをプレゼントしたり、別の機会にお礼をしたりするなど、必ず感謝を形にすることが重要です。
無償で手伝ってもらうことを当然だと考えると、関係が悪化する可能性があります。
誰が、いつ、何時間、どの作業を担当するのかを事前に決め、無理な依頼にならないように注意しましょう。
農業体験やボランティアを活用する
農業に興味があり、農作業を体験したいと考えている人もいます。
特に都市部の近くでは、
「農業に関わってみたい」
「休日に土や植物に触れたい」
「イチゴ農園の仕事を体験してみたい」
という人を見つけられる可能性があります。
イチゴ農園は、イチゴが好きな人にとって関心を持ちやすい仕事です。
無償でも農作業を手伝ってみたいという人や、場合によっては体験料を支払って参加したいという人もいます。
農業ボランティアや農業体験として、簡単な作業を手伝ってもらう方法も考えられます。
ただし、通常の従業員と同じように継続的な業務を担当させながら、単にボランティアという名目で無償労働を求めるのは適切ではありません。
体験として行う場合には、次の点を明確にしておく必要があります。
・体験の目的
・実施時間
・作業内容
・安全管理
・保険の有無
・報酬や参加費の扱い
・収穫物の持ち帰り条件
ボランティアや体験参加者は、必ずしも作業に慣れているわけではありません。
効率だけを求めるのではなく、安全に楽しんでもらえる仕組みを作ることが重要です。
3. 機械化と自動化を進める
人件費を抑えるためには、人が行っている作業を機械や設備に置き換えることも重要です。
イチゴ栽培には、人の手でなければ難しい作業が多くあります。
収穫、摘花、芽かき、葉かきなどは、完全な自動化が難しい作業です。
だからこそ、換気、灌水、施肥、運搬など、自動化しやすい作業はできるだけ設備に任せる必要があります。
ハウスの開閉を自動化する
ビニールハウスの側窓や天窓を、毎日手動で開閉している農園があります。
ハウスの棟数が増えるほど、朝夕の開閉だけでも多くの時間が必要です。
自動巻き上げ機や環境制御装置を導入すれば、設定温度に応じて自動で換気できます。
これにより、開閉作業の時間を減らせるだけでなく、作業者が不在のときでも温度管理を行いやすくなります。
育苗や本圃の灌水を自動化する
育苗中の苗や、本圃のイチゴに手作業で水を与えている場合も、多くの労働時間が必要です。
タイマー、電磁弁、液肥混入機などを使い、自動灌水に変更することで、水やりの時間を大幅に短縮できます。
自動灌水には、作業時間の削減だけでなく、毎回の灌水量や時間をそろえやすいというメリットもあります。
ただし、設備の故障や目詰まりが起きる可能性があるため、完全に任せきりにせず、定期的な点検が必要です。
作業を省力化する
機械を導入しなくても、作業方法を変更することで労働時間を減らせます。
例えば、作業動線を短くする、資材の置き場所を統一する、収穫物の運搬回数を減らすなど、小さな改善を積み重ねる方法です。
イチゴ農園では、次のような省力化が考えられます。
・収穫かごや台車を作業場所の近くに置く
・資材の保管場所を固定する
・作業順序を統一する
・ハウス内の通路を歩きやすくする
・収穫物の運搬距離を短くする
・作業台の高さを調整する
・計量器やラベル発行機を使う
・選別とパック詰めの配置を見直す
一つひとつの削減時間は小さくても、毎日繰り返す作業であれば、年間では大きな差になります。
商品規格や資材を統一する
パック詰めでは、使用する容器や商品規格が多いほど作業が複雑になります。
例えば、複数のサイズのパック、異なる重量の商品、贈答箱、直売用商品、ネット通販用商品などを同時に作ると、作業者はその都度、容器や詰め方を変えなければなりません。
商品ごとの判断も増えるため、作業速度が遅くなり、間違いも起きやすくなります。
可能であれば、パッケージや規格を統一し、商品数を減らすことをおすすめします。
例えば、次のような方法があります。
・使用するパックの種類を減らす
・重量規格を統一する
・ラベルの種類を減らす
・贈答品の規格を絞る
・発送用の箱を共通化する
・選別基準を分かりやすくする
商品数を増やせば、さまざまな顧客に対応できます。
一方で、作業効率が下がり、人件費や資材管理の負担が増えます。
売上の少ない商品や、作業時間がかかりすぎる商品については、廃止も検討する必要があります。
高設栽培の培地の片付けも機械化する
栽培終了後には、株の撤去、培地や土の処理、栽培槽の清掃などの作業があります。
高設ベンチ内の土や培地を手作業で耕している農園では、非常に大きな負担になります。
高設ベンチ用の小型耕うん機などを使用すれば、手作業よりも短時間で作業できます。
片付け作業は収穫期ほど注目されませんが、翌作に向けて短期間で終わらせる必要があります。
収穫期以外の作業についても機械化できるものを探し、年間全体の労働時間を減らすことが重要です。
4. パート従業員の技術習得を早める
イチゴ農園では、パート従業員を雇用しているところが多くあります。
人件費を抑えるためには、単に時給を下げるのではなく、1時間当たりの作業量を増やすことが重要です。
同じ時給であっても、作業者の技術によって、収穫量やパック詰めできる数量は大きく変わります。
そのため、新しく採用した人が、できるだけ早く技術を習得できる研修プログラムを作ることをおすすめします。
作業をマニュアル化する
作業方法を口頭だけで教えると、教える人によって内容が変わる可能性があります。
また、新しい人が入るたびに、経営者やベテラン従業員が最初から説明しなければなりません。
次のような内容をマニュアルにしておくと、教育を効率化できます。
・収穫する果実の基準
・果実の持ち方
・収穫かごへの入れ方
・葉かきや芽かきの方法
・摘花する花の基準
・選別基準
・パック詰めの方法
・衛生管理
・農具の保管場所
・作業終了後の報告方法
写真を使ったマニュアルにすると、文章だけよりも分かりやすくなります。
動画を研修に使う
農作業は、文章や写真だけでは伝えにくい場合があります。
手の動き、作業の速度、果実の扱い方などは、動画の方が理解しやすくなります。
作業を動画で撮影しておけば、新しく入った従業員が繰り返し確認できます。
経営者やベテラン従業員が、毎回同じ説明をする時間も減らせます。
私が公開しているイチゴ栽培の動画についても、パート従業員の研修に利用しているという声を、複数の農園からいただいています。
外部の動画教材も活用しながら、自分の農園独自の作業については、専用の研修動画を作る方法が有効です。
優秀な従業員の離職を防ぐ
作業に慣れたパート従業員が辞めると、新しい人を採用し、最初から教育し直さなければなりません。
求人広告、面接、雇用手続き、研修などにも時間と費用がかかります。
さらに、新しい作業者は、ベテランと比べて作業速度が遅く、ミスも発生しやすくなります。
そのため、人件費を抑えるうえでは、離職率を下げることも非常に重要です。
離職を防ぐためには、次のような点を見直します。
・作業内容を明確にする
・無理な勤務を求めない
・繁忙期の残業を減らす
・休憩時間を確保する
・作業しやすい設備を整える
・職場内の人間関係を改善する
・頑張りを評価する
・意見や要望を聞く
・シフトを早めに伝える
・長く働く人の待遇を見直す
農作業が得意な人を採用できたとしても、働きにくい職場であれば定着しません。
採用に力を入れるだけでなく、長く働いてもらえる組織を作る必要があります。
規模拡大には人材マネジメントが必要
個人や家族だけで運営していた農家が規模を拡大し、パート従業員を雇用し始めると、人材管理の悩みが増えます。
自分で農作業ができることと、他の人に仕事を教え、組織を運営できることは別の能力です。
規模拡大後には、次のような仕事が必要になります。
・求人の作成
・面接と採用
・シフト管理
・勤怠管理
・教育
・作業指示
・評価
・職場内のトラブル対応
・リーダーの育成
これらを経営者一人で抱えると、栽培や販売に使える時間が減ります。
必要に応じて、社会保険労務士、人材育成の専門家、農業コンサルタントなど、外部の力を借りる方法もあります。
規模拡大を成功させるためには、農場を大きくするだけでなく、組織化を進めることが重要です。
5. 収穫量のピークを減らす
イチゴ農園では、年間を通じて同じ人数が必要になるわけではありません。
収穫量が少ない時期には少人数で対応できても、収穫のピークには多くの人手が必要になります。
このピークに備えて従業員を多く雇用すると、収穫量が少ない時期には人員が余ります。
反対に、普段の作業量に合わせた人数しか雇用していないと、ピーク時に作業が回らなくなります。
そのため、収穫量のピークをできるだけ小さくし、繁忙期と閑散期の差を減らすことが、人件費削減につながります。
定植時期をずらす
収穫量のピークを分散する方法の一つが、定植時期をずらすことです。
すべての苗を同じ日に定植すると、開花や収穫の時期も集中しやすくなります。
定植時期を早植え、中植え、遅植えなどに分けることで、収穫開始時期や収穫ピークをずらせます。
これにより、次のような効果が期待できます。
・収穫作業を平準化できる
・パック詰めのピークを減らせる
・急な求人を減らせる
・従業員の残業を抑えられる
・販売先へ安定供給しやすくなる
ただし、定植時期を変えると、年内収量や花芽分化にも影響します。
品種や地域の気候に合わせて計画する必要があります。
収量や売上の最大化を狙わない
収量や売上を最大化しようと思うと、定植時期は一つの方が良いです。
すべての苗をできるだけ早く植えましょう。
そうすれば、収量や売上が最大化できます。
ただし、そうすると、必要な労働力の波が大きくなり、労働力が足りなくなったり、過剰になりやすいです。
その結果、利益の最大化に繋がらない場合があります。
摘花でピークを調整する
収穫量が集中すると予測される場合には、その約1か月前の花を摘花し、果実数を減らす方法もあります。
摘花した分、その時期の収穫量は減少します。
しかし、収穫、選別、パック詰めに必要な作業時間を減らせます。
また、果実に使われる予定だった養分が、その後の株や花房に使われるため、株の負担を軽減できる可能性があります。
収穫量が一度に増えすぎると、株が疲れて、その後の生育や収量が落ちる「なり疲れ」が起きる場合があります。
摘花によってピークを抑えることで、後半の生育が安定する可能性もあります。
ただし、摘花自体にも作業時間が必要です。
削減できる収穫やパック詰めの時間と、摘花に必要な時間を比較して判断しましょう。
収穫時期の違う品種を組み合わせる
品種によって、花芽分化や収穫開始の時期が異なります。
早く収穫が始まる品種、標準的な品種、収穫開始が遅い品種を組み合わせることで、農園全体の収穫ピークを分散できます。
複数品種を組み合わせることで、次のようなメリットがあります。
・収穫量を平準化できる
・人員配置を安定させられる
・販売期間を長くできる
・特定時期の不作リスクを分散できる
・販売先に継続的に納品しやすくなる
一方で、品種ごとに栽培管理や収穫基準が異なるため、作業が複雑になる可能性があります。
品種を増やしすぎると、かえって教育や管理に時間がかかるため、収穫分散の効果と管理負担を比較する必要があります。
人件費削減だけを目的にしない
人件費を抑えることは重要ですが、単純に従業員の人数や賃金を減らすだけでは、農園経営が悪化する可能性があります。
人が足りなければ、収穫が遅れ、果実が過熟になります。
芽かき、葉かき、摘花、防除などが遅れれば、収量や品質が低下します。
過度な作業負担を求めれば、従業員が疲弊し、離職率も高くなります。
目指すべきなのは、人を減らすことではありません。
必要のない作業を減らし、少ない時間で同じ成果を出せる仕組みを作ることです。
省力化によって生まれた時間を、品質改善、販売、接客、新しい商品開発などに使うことができれば、農園全体の利益を増やせます。
まとめ:少ない人数で回る農園の仕組みを作ろう
イチゴ農園の人件費を抑える主な方法は、次のとおりです。
・イチゴ狩りや量り売りを始める
・家族や友人、知人に協力してもらう
・農業体験やボランティアを適切に活用する
・ハウスの開閉や灌水を自動化する
・手作業を機械化する
・商品規格やパッケージを統一する
・パート従業員の研修を効率化する
・優秀な人材の離職を防ぐ
・人材マネジメントと組織化を進める
・定植時期、摘花、品種によって収穫ピークを分散する
特に重要なのは、労働時間の多くを占める収穫とパック詰めを見直すことです。
イチゴ狩りや量り売りができれば、この二つの作業を大幅に減らせます。
出荷販売を続ける場合でも、商品規格の統一、作業動線の改善、パックセンターの利用などによって効率化できます。
また、機械化や自動化では、設備の購入価格だけを見るのではなく、その設備によって年間何時間の作業を減らせるのかを計算してください。
人材についても、採用人数だけでなく、技術習得の速さと定着率が重要です。
作業をマニュアル化し、動画を研修に使い、長く働いてもらえる職場を作りましょう。
さらに、収穫量のピークを分散すれば、繁忙期だけのために多くの人を雇用する必要が減ります。
人件費を抑えるとは、単純に人を安く使うことではありません。
作業、設備、商品、栽培計画、人材育成を見直し、少ない人数でも無理なく運営できる農園を作ることです。
省力化によって農園の利益を増やし、経営者と従業員の両方が長く働ける仕組みを作りましょう。
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