
イチゴ農園への新規参入では、ハウスや高設栽培設備に注目しがちですが、それより前に重要なのが農地選びです。
農地は賃貸契約したり購入すると簡単には変更できません。
ハウスや高設ベンチ、養液システムを引っ越すことは費用が大きすぎ、引っ越せないためです。
日当たり、水、排水、電気、道路、農地転用、周辺農地、周辺住民、水害被害などに問題がある土地を選ぶと、その後どれだけ良い設備を導入しても経営上の不利を抱え続けることがあります。
そのため、農地選びで失敗すると、イチゴ農園の経営も失敗する確率が高くなります。
今回紹介するお客様は、イチゴ農園への新規参入を検討し、農地の候補もある程度決まっていました。
しかし、その土地が本当にイチゴ農園に適しているのか、事業として成立する場所なのかを判断することに不安がありました。
そこで、弊社イチゴテックに支援のご依頼をいただきました。
そして弊社では、単に「イチゴを栽培できる土地か」だけではなく、栽培、設備、販売、雇用、将来の拡張性まで含めて候補地を確認しました。
その結果、当初検討していた農地をそのまま利用するのではなく、事業計画により適した別の農地を選ぶことができました。
お客様の属性
今回のお客様は、新しくイチゴ事業への参入を検討していた企業です。
イチゴ農園を始めるための候補地域や農地について検討を進めていましたが、農業やイチゴ栽培の経験が十分ではなく、土地の良し悪しを何を基準に判断すればよいか分からない状態でした。
自治体に農業参入を相談すると、いくつかの農地の候補地を提案してくれたそうです。
しかし、どの農地を見ても何か問題があるように感じ、不安を感じていました。
ビルや店舗などの不動産の場合は、価格、面積、駅からの距離など比較しやすい条件があります。
しかし、イチゴ農園の農地では、それだけでは判断できません。
見た目では問題がない土地でも、栽培を始めると水や排水、電気などの問題が分かることがあります。
お客様は既存事業で不動産物件を保有しており、立地条件がビジネスに与える影響度を理解していました。
そのため、「農地選びで失敗したら後から挽回できない」と考え、弊社に支援を依頼されたそうです。
契約前に抱えていた悩み
お客様が抱えていた大きな悩みは、「候補地が本当にイチゴ農園に向いているのか判断できない」ということでした。
農地には十分な広さがあり、土地として利用できそうに見えても、イチゴ農園として長期間経営できるかどうかは別の問題です。
候補地を決めてからハウスや設備の計画を進めた後に問題が見つかれば、それまでに使った時間や費用が無駄になる可能性もあります。
また、農地の選定では、栽培条件だけでなく販売方法との相性も重要です。
市場やJAへの出荷を中心にする農園と、直売やいちご狩りを中心にする農園では、適した場所が違うからです。
お客様は土地そのものは見つけられていましたが、「この場所でどのような農園経営ができるのか」まで判断できていませんでした。
イチゴテックが最初に確認したこと
弊社では、候補地だけを見て農地の良し悪しを評価するのではなく、まずどのようなイチゴ農園を作りたいのかを確認しました。
栽培面積、販売方法、目標売上、従業員数、設備規模、将来の事業規模の目標、事業戦略などによって、適した農地の条件や優先順位が変わるためです。
例えば、市場出荷中心であれば、栽培条件や物流の利便性、日当たりなどが重要になります。
一方、いちご狩りを行うのであれば、人口、道路、駐車場、アクセス、農地転用の容易さ、周辺環境、競合の数なども重要です。
そのため、農地を選んでから経営を考えるのではなく、経営目標や事業計画から農地の条件を逆算することを提案しました。
支援内容1.日当たり・気象条件の確認
イチゴ栽培では日射や気温が収量や品質に影響します。
そのため、候補地の日当たり、周辺地形、気象条件などを確認しました。
特に冬季は太陽高度が低いため、山や建物、森林、周辺農地、周辺住宅の影響を受けることがあります。
夏に見ると日当たりが良い土地でも、冬には長時間、影になることもあるんです。
地域の気温についても、育苗期の高温、冬の暖房負荷、春の高温などを考え、イチゴ栽培にどのような影響があるかを検討しました。
そのためには、気象庁のデータベースやGoogleマップ、Google Earth、現地視察が役に立ちます。
支援内容2.水・排水条件の確認
養液栽培をするイチゴ農園では安定した水源が必要です。
一般的な水稲や路地野菜作では、雨水や農業用水を使用します。
しかし、養液栽培をするイチゴ栽培では、雨水や農業用水に頼るのはおすすめしません。
農業と一言で言っても、その栽培方法はさまざまで水や農地に求める優先順位も違います。
そこで、水道や井戸水が使えるかなど、どの水源を利用できるのかを確認しました。
水が存在するだけでは不十分です。
イチゴ栽培に必要な水量を確保できるか、養液栽培でも水質に問題がないかも重要です。
特に水質については、養液栽培では水質に異常があると致命的です。
ある程度の特徴であればカバーもできますが、大きな異常がある場合は、栽培に悪影響が出ます。
一般的な農業では問題にならない水質でも、イチゴ栽培では使えないことがあるんです。
また、排水条件についても確認しました。
大雨の際に周囲から水が流れ込む土地や、排水先がない土地では、追加工事が必要になる可能性があります。
特に最近では線状降水帯や大型台風が発生し、冠水被害や川の氾濫も増えています。
水と排水はハウス完成後に変更することが難しいため、土地を決める前に確認することが重要です。
お客様に話を伺うと、「イチゴ栽培でここまで水が大切だとは知らなかった」と話していました。
支援内容3.電気・道路・インフラの確認
イチゴ農園では養液設備、暖房、環境制御、冷蔵庫などで電気を使用します。
そのため、候補地まで容易に電気が引けるか、必要な電気容量を確保できるかを確認しました。
また、農園までの道路についても確認しました。
ハウス建設時には資材を積んだトラックや重機が出入りします。
大型トラックや重機が農地まで入れないとハウスを建設できない場合があります。
完成後も出荷や資材搬入の車両が出入りするため、道路条件は重要です。
農地の前が狭い道で、周辺農家が軽トラを路上駐車していたり、周辺住民に抜け道として利用されていると問題になることがあります。
土地そのものが安くても、電気や道路の整備に高額な追加工事が必要であれば、事業全体では割高になる場合があります。
いちご狩りや直売所、カフェなどを併設する場合には、特に道が重要です。
一般のお客様が自家用車で来れるか、大型観光バスが入ってこれるか、近隣の駅から徒歩でたどり着けるかも要検討になります。
支援内容4.販売方法との相性を確認
農地選定では、イチゴが育つかどうかだけでなく、「その場所でイチゴをどのように売るか」も考えるべきです。
直売やいちご狩りを行う場合には、周辺人口、交通量、道路からの入りやすさ、駐車場、トイレ、農地転用できるかなどが重要になります。
一方、市場出荷やJA出荷を中心にするのであれば、観光客が多い場所である必要はありません。
集荷場や物流拠点へのアクセスの方が重要になることがあります。
スーパーやケーキ店、道の駅、直売所などに出荷する場合には、それらの施設まで配達する必要があります。
ECサイトや産直サイトでネット販売する場合には、クロネコヤマトや佐川急便などの宅配のトラックに来てもらう必要があります。
販売方法に合った立地であるかを確認しました。
支援内容5.将来の拡張性を確認
最初は小規模で始めても、事業が順調に進めば栽培面積を増やしたいですよね。
このお客様もスモールスタートで始めて、徐々に規模拡大を希望していました。
そのため、現在の面積だけでなく、将来周辺へ拡張できる可能性も確認しました。
現在必要な条件だけで農地を選ぶと、数年後に「隣に住宅があり拡張できない」といった問題が起こる可能性があります。
周辺の農地や土地などの状態を確認して、「数年後にここも入手できるのか」を確認しましょう。
全く別の場所に新しい拠点を作ることもできますが、投資効率が悪くなります。
一方で、将来使うか分からない土地まで最初から確保すると、その取得費用や維持費が増えます。
ハウスを建設しない場合、別の作物を育てるか、耕運や除草する必要が出てきます。
事業計画に合わせて拡張性を判断しました。
支援内容6.必要な広さを確認
意外とやってしまうミスが、必要な広さを確保しないことです。
20aのビニールハウスを建てたい場合、必要な農地面積は20aではありません。
20aのハウスなら、農地は最低でも25〜30aは必要です。
ハウスを建てる場合、周辺環境にもよりますが、農地の外周の少し内側に建設します。
周辺の土地との境目にぴったりと建設することは少ないです。
また、駐車場、トイレ、作業小屋、物置小屋、機械室などをハウス外に用意するためには、土地が必要です。
支援内容7.現在の状況を確認
農地の現在の状況も確認しました。
農家が農作物を栽培しているのか、栽培はしていないが耕作して雑草は生えていない状態か、耕作放棄地で雑草が多いか、荒廃農地で雑木が生えているか。
そもそも、なぜこの農地を入手できるのかも確認した方が良いです。
良い農地だが高齢化でもて余しているのあればいいですが、まだ把握していない欠点があり、その欠点を隠して他人に渡そうとしている可能性もあります。
支援の結果|事業計画に合った農地を選定
候補地を栽培条件だけでなく、設備、販売、人材、将来性まで含めて確認した結果、当初想定していた農地を選ぶのは中止しました。
想定していた農地では、農地そのものと周辺環境で問題が発覚したためです。
現在の最新の状態を確認してもらうと、農地には雑草や雑木が生えており、ハウスを建てるためには整備の必要がありました。
さらに、雨が降った後に農地を確認してもらうと、雨水が抜けにくく排水性が悪いことも判明しました。
大雨が降った場合、大きな被害を受けるリスクもあります。
その後、別の地域で農地を探し、最終的には事業計画に合った農地を選定することができました。
農地選びの段階で問題を発見できれば、その土地へ大きな設備投資を行う前に計画を変更できます。
もしハウスや設備を発注した後に土地の問題が分かれば、その事業は失敗する確率が高くなります。
今回の支援では、「良さそうな土地を見つけること」ではなく、「その場所で長期間イチゴ農園を経営できるか」を判断することを重視しました。
その後の支援
農地が決まった後は、設備投資の支援をしました。
ハウスや高設ベンチ、養液システム、環境制御システム、加温器など、イチゴ栽培に必要な設備を選定し、発注しました。
そして、イチゴ栽培と育苗を開始し、栽培や販売も支援しました。
事業計画から農地の選択まで支援しているので、設備選定や栽培、販売の支援もスムーズに行えました。
この事例から分かること
農地は、価格と面積だけで決めるものではありません。
日当たり、水、排水、電気、道路、周辺環境などを総合的に判断する必要があります。
また、良い農地の条件は農園によって異なります。
市場出荷中心の農園と観光農園では、重要な条件が違います。
そのため、「イチゴ栽培に向いている土地」を探すだけではなく、「皆さんが計画しているイチゴビジネスに向いている土地」を探すことが重要です。
まとめ
今回のお客様は、イチゴ農園への新規参入に向けて候補地を検討していましたが、その土地が本当にイチゴ農園に適しているか判断できないという悩みを抱えていました。
弊社イチゴテックでは、日当たり、水、排水、電気、道路などの栽培・設備条件に加えて、事業計画や販売方法や将来の拡張性まで含めて候補地を確認しました。
その結果、問題を抱えた当初の候補地を入手することを回避でき、事業計画により適した農地を選ぶことができました。
農地は一度決めると引っ越せません。
だからこそ、設備を発注する前の段階で、農地と事業計画が本当に合っているかを確認することが重要です。
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イチゴビジネスに新規参入したいけど…
◆イチゴ農園を始めたいけど、どうすればいいかわからない…
◆イチゴ農園の事業戦略や事業計画づくりに不安がある…
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