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イチゴ農園への新規参入や経営改善を考えている方の中には、

「コンサルを依頼した方がよいのか?」

「自分たちだけでもできるのではないか?」

と迷う方もいると思います。

結論からいうと、すべてのイチゴ農園にコンサルが必要なわけではありません。

地域のJAや普及指導員、近所の農家などから支援を受けられる場合もありますし、時間をかけて自分たちで試行錯誤できる場合もあります。

一方で、農業未経験の企業が農地を選び、数千万円規模の設備投資をする場合には、判断を間違えたときの損失も大きくなります。

この記事では、イチゴ農園でコンサルを利用した方がよいケース、利用しなくてもよいケース、依頼するならどのタイミングがよいのかを解説します。

イチゴ農園では何を判断する必要があるのか

イチゴ農園を経営するには、栽培方法だけを考えればよいわけではありません。

農地、栽培面積、品種、栽培方式、ハウス、設備、苗、目標収量、販売先、販売単価、雇用、初期投資、借入、利益など、多くのことを判断する必要があります。

これらはそれぞれ独立しているわけではありません。

例えば、いちご狩りを中心にするなら、立地、駐車場、品種構成、作型まで変わります。

市場やJAへの出荷から直売へ切り替えるなら、品質だけでなく、パッケージ、価格、販売場所、集客、ブランドづくりなども必要になります。

そのため、新規参入では、事業全体を見ながら判断することが重要で、それができていない会社が多いです。

「全体最適」を考えることができず、「部分最適(全体としてはマイナス)」になっています。

例えば、設備業者から設備の提案を受けても、設備が販売や経営を支援していないので、それは部分最適です。

コンサルを利用した方がよいケース

まずはコンサルを利用した方が良いケースです。

1.農業やイチゴ栽培の経験がほとんどない

農業未経験の企業や、これまで別の作物を栽培していた方がイチゴに新規参入する場合は、専門家の支援を受けるメリットが大きくなります。

イチゴは、育苗、花芽分化、定植、温度管理、肥培管理、病害虫対策など、年間を通して多くの判断が必要な作物です。

農作物の中で最も栽培が難しいと言っても過言ではありません。

設備を完成させても、栽培がうまくいかなければ売上は発生しません。

特に農業未経験の場合は、事業計画だけでなく、実際の栽培開始後まで支援を受けられる体制を考えておくことが重要です。

2.数千万円以上の設備投資を予定している

投資額が大きいほど、専門家に相談する価値も高くなります。

例えば、5,000万円の設備投資を予定している場合、設備選定を間違えて10%余計に支払えば500万円の損失です。

反対に、必要な設備を削ってしまい、後から追加工事が必要になる場合もあります。

コンサル費用を節約することよりも、設備投資全体を適切にする方が経営への影響は大きくなります。

3.企業として農業に新規参入する

企業の農業参入では、個人の新規就農とは違う問題も発生します。

農業経験のない社員が担当者になる、経営陣と現場で考え方が違う、設備投資の社内承認が必要、担当者の異動があるなどです。

また、「農業を始めること」自体が目的になり、誰に何を売って利益を出すのかが曖昧になることもあります。

さらに、会社だと公的機関の農業普及センターなどからの支援を受けづらい場合もあります。

JAに農作物を出荷する場合はJAから支援を受けられますが、JAに出荷しない場合には支援を受けられません。

そのため、企業参入では栽培だけでなく、事業計画やプロジェクト管理まで含めて考える必要があります。

4.大規模農園を計画している

10aと1haでは、単純に面積が10倍になるだけではありません。

従業員数、管理体制、作業動線、設備、収穫量、販売量など、事業全体の複雑さが大きくなります。

例えば、年間50tのイチゴを生産する計画であれば、それだけの量をどこへ販売するのかも事前に考える必要があります。

大規模化するほど、一つの判断ミスによる損失も大きくなるため、専門家の意見を入れる価値は高くなります。

5.いちご狩りや直売を中心にする

いちご狩りや直売を中心にする農園では、栽培以外の要素も重要になります。

立地、交通量、周辺人口、駐車場、受付、予約管理、トイレ、営業時間、接客、人員配置などです。

いちご狩りでは、単にイチゴをたくさん作ればよいわけではありません。

来園者が必要な時期に十分な果実を確保できるように、品種や作型も考える必要があります。

マーケティングやSNSの活用など集客も重要です。

栽培とサービス業の両方を設計する必要があるため、事業全体を見られる支援が役立つ場合があります。

6.設備会社から見積もりが出ているが判断できない

新規参入者に多いのが、「見積もりはもらったが、内容が適切なのか分からない」という状態です。

ハウス、高設ベンチ、養液設備、暖房、環境制御装置など、初めて農園を作る方がすべての仕様を判断するのは簡単ではありません。

特に複数社の見積もりを比較する場合は、仕様や工事範囲が同じかを確認する必要があります。

設備を発注した後では変更しにくいため、この段階で第三者の意見を聞く価値があります。

7.社内にイチゴの専門家がいない

企業参入では、経営や財務に詳しい人材がいても、イチゴ栽培に詳しい人材がいないことがあります。

その場合、設備会社、苗会社、資材メーカーなどから多くの提案を受けても、どれを採用すべきか判断できません。

外部の専門家を利用することで、社内に不足している知識を補う方法があります。

8.既存の農園を継承したが、栽培技術が十分に引き継げない

家族経営のイチゴ農園や他社が経営していたイチゴ農園を継承する場合でも、必ずしもコンサルが不要とは限りません。

長年イチゴを栽培してきた親世代や従業員が高い技術を持っていても、その技術が感覚や経験に依存していて、言葉や数字として説明できないことがあります。

例えば、「この時期は少し水を減らす」「株を見れば分かる」「昔からこの方法でやっている」といった技術は、本人には理解できても、後継者が再現することは簡単ではありません。

その場合、栽培管理を数値化したり、作業をマニュアル化したり、判断基準を言語化したりするために第三者を利用する方法があります。

9.気候変動で従来の栽培方法が通用しにくくなっている

長年、イチゴ栽培をしてきた農家でも、昔と同じ栽培方法を続ければ同じ結果が得られるとは限りません。

夏の高温、秋の高温、暖冬などによって、育苗、花芽分化、定植時期、暖房開始時期、病害虫の発生などが変化します。

「この地域では30年間この方法で栽培してきた」という経験があっても、気象条件そのものが変われば、管理方法を変更する必要があります。

すでに気候変動が起きて、平成時代の栽培方法は通用しなくなりました。

従来の経験を尊重しながら、現在の気象データや栽培データを使って栽培方法を見直したい場合には、外部の専門家を利用する価値があります。

10.経営者が代わり、新しいことに挑戦したい

農園を継承した後、新しい経営者がこれまでとは違う経営をしたい場合もあります。

例えば、従来はJA出荷だけだった農園で直売を始める、いちご狩りを始める、自社ブランドを作る、EC販売を始める、栽培データを活用する、新しい品種を導入するなどです。

このような場合、先代の経験は非常に重要ですが、新しい取り組みについては十分なノウハウがないことがあります。

「これまでの農園をそのまま継ぐ」のではなく、「経営者が代わったことをきっかけに農園を変えたい」という場合には、外部の知識を取り入れる意味があります。

11.土耕栽培から高設栽培へ変更したい

既存農園が栽培方式を大きく変更する場合も、コンサルを利用する価値があります。

例えば、土耕栽培から高設栽培へ変更すると、単にベンチを導入すればよいわけではありません。

培地、養液管理、灌水、栽植密度、作業方法、設備費、収量、人件費など、多くの条件が変わります。

長年の土耕栽培経験があっても、高設栽培では新しく覚えることがあります。

設備投資も必要になるため、導入前に収支や栽培方法を十分に検討することが重要です。

高設栽培に詳しい専門家の知識や経験を活用した方がスムーズです。

12.JA・市場出荷から直売やブランド販売へ大きく変えたい

販売方法を大きく変える場合にも、外部支援が役立つことがあります。

例えば、これまでJAへほぼ全量を出荷していた農園が、直売、EC、飲食店販売、いちご狩りなどへ移行する場合です。

JA出荷では、出荷規格や販売先がある程度決まっていて、販売業務はJAに委託します。

一方、直売では皆さん自身で価格、商品、パッケージ、販売場所、集客、顧客対応などを考える必要があります。

さらに、自社ブランドを作る場合には、「おいしいイチゴを作る」だけでは不十分です。

誰に売るのか、どのような価値を伝えるのか、競合農園とどう違うのかまで考える必要があります。

マーケティングやブランディングが必要です。

栽培技術は十分にあるものの、販売やブランドづくりの経験が少ない場合には、外部の専門家を活用する方法があります。

コンサルを利用しなくてもよいケース

ここからはコンサルを利用しなくてもいいケースです。

1.十分なイチゴ栽培経験があり、現在の経営方法を大きく変えない

すでに長年イチゴを栽培しており、育苗から収穫まで皆さん自身で判断でき、現在の栽培方法や販売方法を今後も大きく変えない場合は、外部コンサルの必要性は低くなります。

設備、販売、経営についても十分な経験があり、現在の農園が安定して利益を出しているのであれば、無理に新しい支援を受ける必要はありません。

今まで通りのことを、今後も続けましょう。

2.既存農園を継承し、技術を十分に引き継げる

すでに運営されている農園をそのまま引き継ぎ、親世代から栽培技術や経営方法を十分に学べる場合は、外部コンサルを使わなくてもよいことがあります。

農地、ハウス、設備、販売先、栽培方法などがすでに確立されており、後継者がその方法を再現できるのであれば、外部支援の必要性は低くなります。

一方で、技術が十分に言語化されていない場合や、新しい経営へ転換したい場合は、先ほど説明したように外部支援を検討する余地があります。

3.JAのイチゴ部会に所属し、部会の方針に沿って栽培・出荷する

JAのイチゴ部会に所属し、JAから栽培指導を受け、部会を通じて出荷する場合は、個々の農家が外部コンサルを利用する必要性は低くなります。

多くの産地では、部会として栽培する品種、作型、栽培方法、出荷規格、販売先などについて一定の方針が決められています。

部会員は基本的にその方針に沿って栽培や出荷を行うため、個々の農家だけで品種や栽培方法、販売方法を大きく変更することは難しい場合があります。

例えば、外部コンサルから「別の品種に変更した方がよい」「直売中心にした方がよい」「栽培方法を大きく変えた方がよい」と提案されても、部会のルールや共同出荷の仕組み上、実行できなければコンサルを利用する意味は小さくなります。

また、JAや部会から栽培技術、病害虫対策、出荷方法などについて十分な指導を受けられるのであれば、同じ内容を外部コンサルへ依頼する必要もありません。

部会としてコンサルを活用する

一方で、部会全体として外部コンサルを活用する方法は有効です。

例えば、部会として収量向上、人件費削減、病害虫対策、新しい栽培技術などについてコンサルティングやセミナーを依頼し、その内容を部会全体で検討する方法です。

株式会社イチゴテックでも、個々の農家だけではなく、産地や部会などの組織を対象にコンサルティングやセミナーを行った実績があります。

個々の農家が部会の方針とは別にコンサルを利用するよりも、部会全体として専門家を活用した方が、実際の栽培や経営改善につなげやすいケースがあります。

4.地域の支援体制が充実している

地域によっては、JA、県の普及指導員、研究機関、地域の先輩農家などから十分な支援を受けられます。

特に産地としてイチゴ栽培が盛んな地域では、地域に合った品種、作型、病害虫対策などの情報が蓄積されています。

無料または低コストで十分な支援が受けられるのであれば、無理に民間コンサルを利用する必要はありません。

5.投資規模が小さい

小規模な農園を自己資金で始める場合など、失敗したときの金銭的な影響が比較的小さいケースでは、コンサル費用の割合が大きくなることがあります。

例えば事業予算が数十万円から数百万円の場合です。

その場合は、公的な支援機関や地域の農家から学びながら、小さく始める方法もあります。

6.資金はほとんどないが、時間と家族労働力が豊富にある

使える資金がほとんどなく、一方で時間と家族の労働力を十分に使える場合には、コンサルを利用せず、自分たちで長期間試行錯誤する方法もあります。

例えば、新しい栽培方法や販売方法を一度に大きく導入するのではなく、小さな面積から試し、結果を見ながら改善します。

この方法では、5年から10年程度かけてPDCAを回すつもりで取り組む必要があります。

失敗したら原因を調べ、翌年に改善し、それでもうまくいかなければさらに変更するという方法です。

また、家族労働力を使って、自分たちで施工できるものは施工する、中古設備を探す、自分たちで販売するなど、できるだけ現金支出を減らす方法もあります。

最大のデメリットは時間がかかることです。

専門家を利用すれば1時間で避けられる失敗でも、自分たちで試行錯誤して答えを知るためには10年かかることがあります。

これは「車輪の再開発」と呼ばれるもので、皆さんが何年も試行錯誤して苦労して得た発見は、その10年以上前から専門家はすでに知っていることです。

一方で、資金が非常に少ない場合には、「お金を使って時間を買う」という方法そのものが選べません。

その場合は、時間と労働力を使って、お金の浪費を防ぐという経営方法も合理的です。

資金が豊富な企業と、資金はないものの家族労働力と時間が豊富な個人農家では、最適な方法は違います。

コンサルを依頼するならいつがよいのか

コンサルを利用する場合、重要なのは「いつ相談するか」です。

おすすめなのは、大きな意思決定をする前です。

農地を決める前

農地は一度契約や購入をすると簡単には変更できません。

日射、水、排水、電気、交通アクセス、周辺環境など、イチゴ農園に向いているか確認する必要があります。

「土地を買ったので、ここでイチゴ農園を作りたい」という相談よりも、「この土地で問題ないか確認したい」という段階の方が選択肢は多くなります。

設備を発注する前

ハウスや高設設備を発注した後では、大きな変更が難しくなります。

設備会社へ相談する前、または見積もりを受け取った段階で確認する方が修正しやすくなります。

特に土耕栽培から高設栽培へ切り替える場合など、大きな設備投資が必要なときは発注前の確認が重要です。

事業計画を確定する前

融資や補助金のために事業計画を作ることがありますが、提出用の数字を作ることが目的になってはいけません。

収量、販売単価、人件費、設備投資などが現実的なのかを確認し、実際に経営できる計画にする必要があります。

事業計画を確定する前に第三者から確認してもらうことで、修正できる余地があります。

栽培方法や販売方法を大きく変える前

既存農園の場合は、新規参入とは別のタイミングがあります。

例えば、土耕から高設へ変更する、JA出荷から直売へ切り替える、いちご狩りを始める、自社ブランドを立ち上げる、新しい品種を大規模に導入するといった場合です。

このような変更は、実行した後に元へ戻すのが難しいことがあります。

設備投資や販売戦略を変更する前に、採算性や実現可能性を確認する方が安全です。

一番避けたいのは「大きな決定をした後で初めて相談する」こと

コンサルを利用するかどうかに関係なく、避けたいのは大きな投資や重要な決定をした後で、初めて専門家に相談することです。

例えば、農地を契約した後に水の問題が分かった、設備を発注した後に事業計画と合わないことが分かった、高設栽培を導入した後に運用方法が分からない、直売所を作った後に集客方法を考え始めた、といったケースでは修正できる範囲が限られます。

問題が起きてから直すよりも、大きな意思決定の前に問題が起きる可能性を減らす方が、費用も時間も少なくて済む場合があります。

コンサルを使えば必ず成功するわけではない

当然ですが、コンサルを契約すればイチゴ農園が必ず成功するわけではありません。

農業は天候、病害虫、人材、販売環境など多くの要因に影響されます。

また、最終的に経営判断を行い、現場を運営するのは皆さん自身です。

コンサルに的確な指示をされたとしても、それを実行しなければ効果は得られません。

コンサルの役割は、経営を代わりに行うことではなく、専門知識や過去の事例を使って判断材料を増やし、失敗する可能性を下げることです。

そのため、コンサルを利用する場合でも、すべてを任せるのではなく、皆さん自身が事業内容を理解して判断することが重要です。

まとめ

イチゴ農園で、すべての方にコンサルが必要なわけではありません。

農業未経験の企業が新規参入する、数千万円以上の設備投資を行う、大規模農園を作る、土耕から高設へ変更する、JA出荷から直売やブランド販売へ変えるなど、大きな投資や経営改革を行う場合には、専門家へ相談する価値が高くなります。

家族から農園を継承した場合でも、先代の技術が十分に言語化されていない、気候変動によって従来の栽培方法が合わなくなっている、新しい経営者がこれまでとは違う栽培や販売に挑戦したい、といった場合には外部の知識が役立つことがあります。

一方で、十分な栽培経験がある、JAの部会から十分な支援を受けて部会方針に従って経営する、地域の支援体制が充実している場合には、個々の農家が外部コンサルを利用する必要性は低くなります。

部会については、個人ではなく部会全体としてコンサルやセミナーを利用する方法があります。

また、資金はほとんどないものの、時間と家族労働力が十分にある場合には、5年から10年かけて自分たちで試行錯誤し、低コストでPDCAを回す方法もあります。

時間はかかりますが、現金支出を抑えながら経験を蓄積できます。

コンサルを利用するかどうかは、単純に「専門家を使った方がよいか」で決めるものではありません。

皆さんが持っている資金、時間、経験、人材、地域の支援体制、そしてこれからどれくらい大きな変化を起こそうとしているのかを考えて判断することが大切です。

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