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株式会社イチゴテックの宮崎です。

いちごの灰色かび病で悩んでいるいちごの生産者は多いですよね。

・農薬を散布しても灰色のカビが消えない...

・どの農薬がおすすめか?

・有機農法の場合、どうしたらいいのか

このような質問をよく受けます。

そこで今回は、苺の灰色かび病の説明とその対策をまとめてみました。

いちごの灰色かび病とは?名前の由来は?

まずはいちごの灰色かび病の基礎知識について、説明しますね。

灰色かび病の名前の由来は、その名の通り、「灰色のカビ」が発生するからです。

灰色カビ病と表記されることもあります。

灰色かび病のカビの部分は、灰色から黒色をしています。

いちごの実に灰色か黒色のカビが生えていたら、まずは灰色かび病を疑いましょう。

灰色かび病の原因、感染ルート

まずは、灰色かび病の原因を説明します。

灰色かび病の原因は糸状菌

灰色かび病の原因は、糸状菌(しじょうきん)という菌です。

糸状菌の中でも、Botrytis cinerea によって引き起こされます。

灰色の部分から胞子が出て感染する

灰色のカビが、胞子の塊です。

そして、そこから胞子を発生させて、別の植物に感染を広げていきます。

灰色かび病は空気感染する

なので、灰色かび病は空気を伝って感染します。

それから 灰色かび病は多犯性なので、いろんな作物に発生します。

例えば、トマトやナスでも灰色かび病が問題になります。

灰色かび病の問題点、デメリット

灰色かび病に感染した場合の問題点を説明しますね。

カビが生えて商品価値がなくなる

灰色かび病に感染すると、実にカビが生えて腐ります。

そのため、いちごの実の商品価値がなくなります。

果実に灰色かび病が発生してしまうと、ジャム用としても使えません。

無価値なので、廃棄するしかありません。

しかも、そこから胞子が発生して他の実に伝染します。

誤って出荷するとクレームにつながる

いちごの果実に灰色かび病が少しでも発生すると、商品価値がなくなり出荷できなくなります。

もし、灰色かび病の果実を見逃して販売してしまうと、お客様や取引先からクレームを受けてしまいます。

たまに、わずかにだけ灰色かび病が発生して、見逃されることがあります。

そうすると、輸送される間にカビが繁殖し、お客様の手元に届いたことに真っ黒なカビだらけのいちごになります。

灰色かび病のいちごは食べられるのか?

極たまに、聞かれる質問は「灰色かび病になったイチゴを食べても大丈夫なの?」というもの。

灰色かび病のいちごは食べられない

灰色かび病が重度に発生すると、完全に腐ってぐちゃぐちゃになります。

なので、通常は食べようとは思いません。

ただし、ヘタの部分にわずかに発生しただけだと、他の部分は食べられます。

うどんこ病は果実の表面だけを犯しますが、灰色かび病は果肉の内部を腐らせます。

そのため、基本的に灰色かび病になった実は食べられません。

灰色かび病は人間には感染しません

灰色かび病は植物の病気なので、人間には感染しません。

ただし、果肉を腐らせるので、食べるとお腹を壊す可能性があります。

食べるのはやめましょう。

灰色かび病の見分け方

次に、灰色かび病の見分け方を解説しましょう。

実に灰色か黒色のカビが着いていたら灰色かび病

灰色かび病の見分け方は簡単です。

いちごの実を見て、灰色か黒色のカビが着いていたら、灰色かび病です。

葉やランナー、花などに発生することもあります。

ただし、それらの部分に発生しているときには、その何倍も実に発生してるはずです。

基本的には実に発生して、その実から他の部分へ広がります。

感染がひどいと果実が腐り落ちる

灰色かび病の感染がひどい場合には、いちごの果実が腐って落ちます。

地面やマルチの上に黒くて腐った実が落ちていたら、灰色かび病を疑いましょう。

また、その腐った実を残しておくと、それが感染源になり被害が拡大します。

腐った実は必ず取り除いてください。

傷やぶつかりと似ている

いちごの実は高設ベンチのパイプとぶつかって、黒く変色することがあります。

また、収穫に慣れていない人が強く触って、潰れて変色することもあります。

その変色の黒色とは別物です。

殺菌しても黒いカビは消えない

灰色かび病の黒いカビは農薬などで殺菌しても、消えません。

なので、「農薬を撒いたのに黒いカビが消えなくておかしい!」と悩まないでください。

殺菌できたとしても、黒い粉のようなものは消えずに残ります。

灰色かび病が発生しやすい時期と気温

次に、灰色かび病が発生しやすい時期を説明します。

発生しやすい気温は20度前後、春と秋

灰色かび病が発生しやすい時期は、主に気温もしくは室温が20度前後の時期です。

季節でいうと、屋外では春や秋に発生しやすくなります。

そして、自然条件では真夏や真冬には発生しにくくなります。

家庭菜園の人は、これを参考にしてみて下さい。

しかし、これはあくまでも露地栽培の話。

商業的な農家の人は、条件が違います。

促成栽培では冬の発生が多い

ただし、促成栽培といわれる秋から暖房機で加温して栽培する場合には、真冬でも発生します。

なぜかいうと、ビニールハウスを二重や三重にして温かい空気を締め切っているからです。

むしろ、冬が灰色かび病が最も多い時期です。 

その理由は、冬は寒いのでハウスを閉め切るから。

そうすると、空気の移動が減って灰色かび病の菌密度が高くなります。

そのため、春夏秋冬でいうと、冬が最も発生しやすいです。

次いで、春でしょう。

春になると葉が大きくなり、作業も遅れがちになり、収穫し忘れた実が残ります。

さらに気温が高くなり、カビの生育速度が早くなり、実が柔らかくて傷つきやすくなります。

夏秋栽培では秋の終わりに発生する

いちごの夏秋栽培ではどうかというと、秋の終わりに発生します。

なぜかというと、秋の終わりは保温のために、ハウスを閉め切るから。

逆に夏はほとんど発生しません、果実を取り忘れない限りは...

よくあるのは、夏の生育が盛んな時期に作業が間に合わなくて、実が残り灰色かび病が発生すること。

そうなる前に、人手を確保してなんとかしましょう。

灰色かび病が発生しやすい条件

次に、灰色かび病が発生しやすい条件を説明しますね。

湿度が高いほど発生しやすい

灰色かび病は湿度が高い状態で感染しやすいです。

なので、湿度が低く乾燥していれば発生しにくくなります。

密閉していると発生しやすい

また、ビニールハウスやビニールトンネルなどで閉鎖している場合には、空気の入れ替えをしないと感染が広がりやすくなります。

そのため、空気の入れ替えをして菌密度を減らすことが大切です。

古い葉やわき芽を残していると発生しやすい

また、古い葉を残していたり、わき芽を取っていないと葉が過密状態になり、風通しが悪くなるので感染しやすくなります。

そのため、古い葉やわき芽を取って、風通しを良くしてあげましょう。

花びらが残っていると発生しやすい

もう一つ、重要なことは、花びらです。

ヘタの部分に花びらが付いていると、灰色かび病が発生しやすいのです。

その理由は、そこに水分が溜まったり、花びらがカビの栄養源になるから。

そのため、できるだけ花びらを取りましょう。

といっても、咲いたばかりの花の花びらは取ってはいけませんよ笑

花びらを取るのは、受粉し終わって花びらが落ち始めた花だけです。

農家の人によってその方法はさまざまです。

  • 花びらを取らない人
  • 花びらを手作業で取る人
  • 花びらをピンセットで取る人
  • 花びらを手で叩いて落とす人
  • 花びらをブロワーで風で吹き飛ばす人

また、いちごの品種によっても花びらの落ちやすさが違います。

結露が発生していちごの株が濡れると発生しやすい

結露(水滴)が発生していちごの株が濡れると発生しやすいです。

その水滴によりカビが増殖しやすくなるから。

そのため、できるだけ結露を発生させないこと、発生した結露がいちごに当たらないようにしましょう。

いちご以外でも灰色かび病は発生する

灰色かび病はありとあらゆる植物に寄生します。

例えば、花、野菜などです。

なので、いちご農園だけでなくいろんな農園が灰色かび病で困っています。

例えば、ナスやトマト、キュウリでも問題になっています。

いちごの灰色かび病の対策

灰色かび病の解説が終わったので、次は対策について説明しましょう。

灰色かび病の対策にはいろんな方法があります。 

化学農薬(殺菌剤)の散布

最も一般的なのは、化学農薬(殺菌剤)の散布です。

化学農薬はホームセンターや農協、ネット通販で売っています。

化学農薬は効き目が強く即効性がある

化学農薬のメリットは効き目が強く、即効性があることです。

そのため、商業的にいちごを栽培しているほとんどのイチゴ農園が化学農薬を使用しています。

例えば、ポリオキシンAL水和剤などが使われています。

化学農薬を使用したいちごは安全なのか

「化学農薬を使用したいちごを食べても平気なの??」

と心配になるかもしれませんが、大丈夫です。

なぜかいうと、日本の化学農薬は登録制になっていて、安全性を確認するテストに合格したものしか使われていないからです。

そして、化学農薬には希釈倍率や散布から収穫までの日数、使用回数などのルールが細かく決まっていて、安全性が守られています。

ただし、これは生産者が農薬のルールを守った場合の話。

もし農薬の使用ルールを守らないと、それは危険です。

化学農薬以外の対策が増えてきた

しかし、化学農薬の使用した慣行栽培は有機栽培や減農薬栽培、無農薬栽培と比べてイメージが悪いのも事実です。

また、もし万が一化学農薬を誤った使い方をすると、農薬が残留する危険性もあります。

さらに化学物質アレルギーの方は、基準値以下の残留農薬でもアレルギー症状を引き起こすかもしれません。

そのため、化学農薬以外の対策が少しずつ増えてきました。

くん煙剤

正確には農薬の一種ですが、くん煙剤も使われています。

くん煙剤とは、加熱によって有効成分を煙状の微細な粒子として空中に拡散し、作物の表面に付着させ、あるいは病害虫に直接接触・吸入させて効力を発揮させる薬剤を言います。

引用元:日曹のくん煙剤

簡単に説明すると、ビニールハウスを締め切って、ハウスの内部を農薬の煙で覆い尽くします。

くん煙剤は主に予防のために使われています。

例えば、フルピカくん煙剤が使われています。

施設栽培の主要病害である灰色かび病・うどんこ病に、優れた防除効果を発揮します

引用元:フルピカくん煙剤

 

ケイ酸カリウムの施用は効果なし

うどんこ病対策としては、ケイ酸カリウム(珪酸カリウム)の効果があります。

しかし、灰色かび病には効果がないといわれています。

理由は、灰色かび病は果肉を腐らせる病気だから。

葉を固くするケイ酸カリウムでも、果肉の腐敗を止めることはできません。

納豆菌の一種を使った微生物殺菌剤

納豆菌の一種を使った微生物殺菌剤も、灰色かび病の対策に使われています。

微生物殺菌剤の効果は、植物にとって有益もしくは無害な菌が植物の表面を覆うことで、灰色かび病の病原菌の増殖を防ぎます。

バチスター水和剤・ボトキラー水和剤

例えば、バチスター水和剤やボトキラー水和剤が市販されています。

納豆菌の仲間である、バチルス菌のバチルス・ズブチリスが使われています。

バチルス菌はいちご以外の作物の病気を防ぐためにも使われる有益な菌です。

 

緑色LED光の照射

LEDの色を変えることで、病害虫の防除や植物の生育をコントロールする研究が行われてきました。

灰色かび病に対しては、緑色のLEDが有効だといわれています。

(株)四国総合研究所によると、夜間に約2時間緑色光を照射すると、イチゴやシクラメンなどの炭疽病、及びキュウリやピーマンなどの果菜類に発生する灰色かび病を抑制できたという。

引用元:LEDの農園芸利用

緑色の光には、カブリダニを誘引する効果などの効果も確認されています。

灰色かび病の抵抗性品種はない

今の所、灰色かび病に抵抗性を持ったいちご品種はありません。

例えば、4つの病気に抵抗性を持ったいちご品種といえばカレンベリーが有名です。

しかし、抵抗性を持っているのは炭疽病、うどんこ病、萎黄病、疫病の4つです。

灰色かび病には抵抗性を持っていません。

栽培管理による予防

最後に栽培管理による予防です。

総合的防除IPM

最近では化学農薬に頼らない防除方法として、総合的防除(IPM)が注目されています。

IPMとは化学農薬だけでなく、栽培方法や光源の利用、天敵益虫の理由などのさまざまな対策を組み合わせて防除することです。

耕種的防除

その一環として、耕種的防除があります。

耕種的防除とは品種の選定や畑の選択、栽培管理のやり方などによって、病害虫を防ぐ方法です。

ですので、抵抗性品種の導入も耕種的防除の一種です(灰色かび病は抵抗性品種がないですが)。

古い葉は取り除く

まず、古い葉は取り除きましょう。

なぜかいうと、古い葉には灰色かび病の菌が着いていることが多いので、菌密度を下げるためです。

また株元の風通しが良くなるので、菌密度を下げることができます。

ただし、葉を取りすぎると光合成量が減り、生育が悪くなります。

葉の取り過ぎには注意してください。

わき芽は取り除く

無駄なわき芽も取り除きましょう。

わき芽が多すぎると過繁茂状態になり、菌密度が増えて風通しが悪くなります。

ただし、わき芽を取りすぎると収穫量が減るので、出荷方法に合わせて調節してください。

花びら(花弁)を落とす

先程も説明しましたが、花びらがヘタに残っていると、そこから灰色かび病が発生します。

なので、できるだけ花びらを落としてください。

花びらを落とすのは、受粉し終わった花だけです。

花びらを落とす作業には、充電式のブロワーを使うのがおすすめです。

結露を落とさない

結露をいちごの上に落とさないことも大切です。

  • ハウス室温の急激な変化をさせない
  • 湿度を高めない
  • 結露がいちごに当たらないようにする
  • 結露が発生しやすい部分は結露を落とす場所を作る

できるだけ結露を発生させないことと、発生した結露をいちごの上に落とさないように意識してください。

例えば、エアプラスのような結露がつきにくい内張りを使うのがおすすめです。


毎日観察して早期発見

病害虫対策で大切なことは、早期発見と早期対策です。

毎日植物を観察して灰色かび病を早く見つけましょう。

特に、果実のヘタの近くや収穫し忘れた実に発生しやすいので、要チェックです!

灰色かび病が発生すると、果実の商品価値が完全になくなってしまいます。

果実が腐る前に、灰色かび病の対策を講じてください。

家庭菜園向けの有機栽培に使える農薬

家庭菜園でイチゴを育てている場合には、できるだけ化学農薬の使用は控えたいですよね?

また、有機栽培でイチゴを育てたい農園もあるでしょう。

そんな場合には、有機栽培にも使える農薬を使ってみてはいかがでしょうか。

例えば灰色かび病の対策としては、カリグリーンがあります。

カリグリーン

カリグリーンは食品添加物の膨張粉として使われる「炭酸水素カリウム」が主成分です。

カリグリーンは有機農法の野菜栽培にも使われています。

主成分の炭酸水素カリウムは、食品や医薬品に使用されており、人畜に安全性が高く、本剤の分解物であるカリウムイオンおよび炭酸イオンは広く天然に存在しており、環境にやさしい病害防除剤です。

JAS(日本農林規格)が定める有機農産物にも使用することができます。

引用元:カリグリーン

 

家庭菜園向けのカリグリーン

農家向けのカリグリーン

イチゴの灰色かび病対策まとめ

今回はイチゴの灰色かび病の対策をまとめました。

一般的には商業的なイチゴ農園では、化学農薬が散布されています。

しかし最近では、納豆菌の仲間を使った農薬や緑色のLEDも使われています。

家庭菜園でイチゴを育てている場合や有機栽培をしたい農園は、カリグリーンなどのオーガニックな農薬を使ってみてください。

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