いちご農園の10aの栽培株数,収穫量,売上,利益,労働時間,初期投資額を紹介します。

いちご農園は10aを最小単位として考えるので、10aあたりの数字を把握すると事業計画が作りやすくなります。

  • 10aの栽培株数は?
  • 10aの売上は?
  • 10aの初期投資額は?
  • 10aの労働時間は?

このような疑問をお持ちの方はぜひ最後までお読みください。

なぜいちご農園は10a規模で考える?

最初に、なぜいちご農園は10a規模で考えるのかを説明します。

10aの面積は1,000㎡

10a(アール)とは1,000㎡のことで、およそ300坪の面積です。

昔ながらの農家の言い方

昔ながらの面積の言い方(尺貫法)では、一畝、一反、一町を使います。

今でも農家はこちらを多く使います。

尺貫法の呼び方面積坪数
一畝(いっせ)99.1㎡30坪
一反(いったん)991.7㎡300坪
一町(いっちょう)9,917.36㎡3,000坪

最近の面積の言い方

最近は1a、10a、1haというアールやヘクタールを使うことが多いです。

1aが10個で10aになり、10aが10個で1haになります。

10aは厳密に言うと302.5坪ですが、一般的には「およそ300坪」と表現することが多いです。

呼び方面積坪数
1a(いちあーる)100㎡30.25坪
10a(じゅうあーる)1,000㎡302.5坪
1ha(いちへくたーる)10,000㎡3,025坪

施設園芸の基本単位が10a

いちご栽培では10aを一つの単位として使用しています。

理由は、農業業界の中のビニールハウス栽培をする施設園芸業界では、10aを基本単位として考えているからです。

水稲や麦などの作物は大規模に栽培するので、1ha(100a)を基本単位として考えることがあります。

いちご農家の栽培面積は20〜30aが多い

いちご栽培は10aを基本単位として考えますが、農家の栽培面積は10aではありません。

農家ごとに栽培面積は異なりますが、いちごの個人農家なら栽培面積は20〜30a程度が多いです。

日本最大級の太陽光利用型の植物工場と言われるいちご生産施設でも、200〜400a程度です。

いちご農園の種類栽培面積
試験的な栽培2〜10a
小規模な個人農家20〜30a
中規模な農業法人50〜100a
日本最大級の大規模な施設200〜400a

農地面積と栽培面積は違う

農地面積と栽培面積は違う点は注意してください。

いちご農園は「農地面積が50aだが栽培面積は20a」ということがよくあります。

理由は農地の中に栽培用のビニールハウス以外の設備があったり、育苗用のビニールハウスがあったり、他の作物用の畑があるからです。

概算の数値を求める方法

そのため、いちごの個人農家の平均的な数値を知りたい場合は、10aの数値に「2.5」をかけてください。

日本最大級のいちご施設の数値を知りたい場合は、10aの数値に「30」をかけてください。

規模や栽培方法によっていろんな数値が変わるので精度は低いですが、およその金額感は把握できます。

例えば、10aのいちご農園の初期投資額が3,000万円だったとしても、20aの規模は6,000万円にはならず、5,000万円程度になります。

実際には規模を2倍にしても初期投資額は2倍にはならないので、その点はご注意ください。

いちご農園の10a栽培株数

いちご農園の10aの栽培株数を紹介します。

いちごの土耕栽培と高設栽培

いちごの栽培方法には大きく分けて、土耕栽培と高設栽培があります。

それぞれメリットとデメリットがあります。

栽培方法初期投資額栽培株数適性
土耕栽培小さい多いベテラン農家向け
高設栽培大きい一般的には土耕栽培よりも少ない
多段式だと土耕栽培よりも多い
新規就農者向け
法人参入向け

いちごの高設栽培について詳しく知りたい人は、こちらの記事を読んでください。

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10aのいちごの栽培株数

10aの栽培株数は土耕栽培ですと8,000株程度、高設栽培ですと6,500株程度です。

定植株数が多い高設栽培の場合は、7,500〜12,000株程度です。

栽培の種類10aの栽培株数
一般的な土耕栽培8,000株
一般的な高設栽培1段式6,500株
定植株数が多い高設栽培2段式
ひな壇式
2列式
移動式
7,500〜12,000株

必要な苗数は栽培株数よりも多くなる

いちごの苗を準備するときには、購入するか育苗するかの2つの方法があります。

どちらの場合でも栽培株数よりも多めに作ってください。

苗を購入するなら10%多く買う

いちごの栽培株数が6,500株の場合、苗は10%程度多く購入することをおすすめします。

理由は購入した苗のうち数%は生育不良苗が混じっていて、植え付けた後に生育が悪くなる株もあるからです。

そのため6,500株を栽培するなら、7,150株ほどの苗を購入してください。

育苗はロスを見込んで20%多く作っておく

また、苗作りをする場合は、苗作りの途中や定植前に数%の苗が生育不良や病気になることを見込んで苗を多めに作ってください。

例えば、10%多めに作っておく場合は、定植後の不良の見込みと合わせて20%程度多めに作っておくのがおすすめです。

いちご農園の10a収穫量(反収)

次にいちごの10a収穫量を紹介します。

農家の人が話す場合は、10aの収穫量は「反収(たんしゅう)」という言葉で表現されることも多いです。

いちごの収穫量と出荷量の違い

いちごの経営上の重要な数値として、収穫量と出荷量があります。

この2つは似ていますが違うものなので、他人と話をするときは収穫量なのか出荷量なのか確認するようにしましょう。

「収穫量−冷凍量−廃棄量=出荷量」です。

出荷量は収穫量よりも少なくなります。

名称内容
収穫量収穫した果実の全量
出荷量収穫した果実の全量のうち、生食用として販売した数量
冷凍処理や廃棄した果実の数量を除外した数値

土耕栽培と高設栽培の収穫量は3,000〜4,000kg

いちごの高設栽培の10aの収穫量は、3,250kg程度です。

この収穫量はいちごの全国平均の10aの収穫量と一致しています(3,200kg程度)。

土耕栽培や定植株数が多い高設栽培の場合には、一般的な高設栽培よりも10aの収穫量が多い場合が多いです。

栽培の種類1株の収穫量10aの株数10aの収穫量
土耕栽培0.5kg8,000株4,000kg
一般的な高設栽培0.5kg6,500株3,250kg
定植株数が多い高設栽培0.4kg10,000株4,000kg

一般的な高設栽培の収穫量の最大値

一般的な高設栽培で収穫量を最大化させることを追求すると、どれくらいの収穫量になるでしょうか。

栽培の前提条件

高設ベンチは1段式で、栽培株数は10aあたり6,500株。

作型は促成栽培で、収穫期間は11月下旬から5月下旬までとします。

品種は収穫量が多い品種で、栽培設備は一般的な物を通常通り使います。

地域は太平洋側の冬の日射量が多い地域です。

10aの収穫量は1,000〜5,000kg

設備や環境などの条件が同じであれば、栽培を担当する人の熟練度によって収穫量が変わります。

栽培技術が未熟な人の場合は収穫量が少なくなり、栽培が上手な人の場合は収穫量が多くなります。

10aあたりの収穫量は1,000〜5,000kgの範囲内に入るでしょう。

栽培の熟度10aの収穫量
未熟な人1,000kg
中程度の人(全国平均)3,000kg
上手な人5,000kg

前提条件を変えれば収穫量は何倍にも増やせる

上記の収穫量は上記の前提条件を守った場合です。

前提条件を変えれば収穫量は何倍にも増やせます。

例えば、以下の方法があります。

  • 収穫期間を長くする
  • 高設ベンチを多段式に変える
  • 設備を増やして環境を改善する

ただし、収穫量を増やすことが利益につながるとは限らず、利益は減少する場合も多いです。

いちご農園10a規模の売上と利益

次にいちご農園10a規模の売上と利益を紹介します。

冬春期のいちごのキロ単価は1,000〜2,000円

促成栽培のいちごが出荷される冬春期のいちごのキロ単価は、市場卸売価格の平均がキロ1,500円程度です。

市場卸売価格は時期によって変動しますし、サイズや産地などによっても変わります。

いちご1パックは最近は小さめが250g程度なので、1パックあたり375円です。

農協出荷や市場出荷の場合は、市場卸売価格よりも安い場合があります。

契約出荷や直接販売の場合は、市場卸売よりも高い場合があります。

高級いちごは1パック2,000円で農家から業者などへ出荷される場合もあります。

いちごの種類キロ単価パック単価(250g)
低単価1,000円250円
中単価1,500円375円
高単価2,000円500円
高級いちご8,000円2,000円

いちご農家の10aの売上は100〜1,000万円

いちご農家の10aの売上は100〜1,000万円の範囲内が多いです。

栽培と販売の両方がうまく行かなければ、売上は100万円以下になります。

栽培と販売がうまく行けば、売上は1,000万円を超える場合もあります。

農家の種類出荷量キロ単価売上
栽培と販売が苦手な人1,000kg1,000円100万円
栽培と販売が普通な人3,000kg1,500円450万円
栽培と販売が得意な人5,000kg2,000円1,000万円

いちご農園の利益率は10〜30%

いちご農園の利益率を紹介します。

いちご農園の利益率は10〜30%程度の範囲内に収まることが多いです。

利益率には収穫量や売上、重油などの燃料代も影響しますが、初期投資額や労働力の種類も利益率へ影響します。

農園の種類初期投資額労働力利益率
利益率が低い農園大きい
補助金なし
雇用が中心10%以下
利益率が中程度の農園中程度
補助金を一部活用
家族と雇用20%程度
利益率が高い農園小さい
補助金を大きく活用
家族が中心30%以上

いちご農園の10aの営業利益は45〜300万円

いちご農園の10aの利益は45〜300万円程度です。

農園の種類売上利益率営業利益
売上が中程度で利益率が低い農園450万円10%45万円
売上が中程度で利益率が高い農園450万円30%135万円
売上が大きく利益率が低い農園1,000万円10%100万円
売上が大きく利益率が高い農園1,000万円30%300万円

いちご農園1軒の営業利益額は90〜900万円

いちご農園の1軒の栽培面積は20〜30a程度が多いので、1軒の売上は90〜900万円程度です。

いちご農園1軒の税引後利益(手取り)は67.5〜675万円

税金の割合を25%程度と仮定してみましょう。

そうすると、いちご農園1軒の税引後利益(手取り)は67.5〜675万円になります。

いちご農園の10aの初期投資額

次にいちご農園の10aの初期投資額を紹介します。

土耕栽培の10aの初期投資額

土耕栽培のいちご農園は10aを始めるのに、新品のハウスや設備を購入すると3,000万円程度かかります。

初期投資額に含む設備は以下のとおりです。

  • ビニールハウス
  • 加温機
  • 潅水装置
  • 動力噴霧機
  • 畝立て機
  • 冷蔵庫
  • 作業小屋
  • 軽トラ
  • その他資材類

初期投資額を抑える方法

10aで3,000万円の初期投資額だと経営が成り立たないことが多いです。

そのため初期投資額を抑える必要があります。

  • 補助金を使う
  • 中古のビニールハウスや機械類を使う
  • ハウスや機械類を借りる
  • 栽培面積を20aに増やして10aあたりの費用を減らす

高設ベンチの10a価格

いちごの高設ベンチの価格は、10aあたり500〜1,500万円程度です。

この金額は施工費込みです。

ベンチの種類10aあたりの価格(施工費込み)
安価な高設ベンチ一式500万円
一般的な高設ベンチ一式900万円
高価な高設ベンチ一式1,500万円

高設栽培の10aの初期投資額

高設栽培の10aの初期投資額は、新品のハウスや設備を購入すると4,000万円程度かかります。

初期投資額を抑える方法

10aで4,000万円の初期投資額だと経営が成り立たないことが多いです。

そのため初期投資額を抑える必要があります。

  • 補助金を使う
  • 中古のビニールハウスや高設ベンチ、機械類を使う
  • ハウスや機械類を借りる
  • 栽培面積を20aに増やして10aあたりの費用を減らす

いちご農家10aの労働時間

最後にいちご農家の10aの労働時間を紹介します。

農林水産省の労働時間の指標は2,000時間程度

農林水産省が公開している10aの労働時間は、2,000時間程度です。

これは従業員向けの法定労働時間が2,080時間であることを意識していると予想します。

ただ、以下のような理由でなかなか2,000時間では済まないことが多いです。

  • 作業の早さは人によって違う
  • 栽培以外にもいろんな作業があり時間が取られる
  • 農家は個人事業主なので長時間労働をしてしまう

実際の労働時間の目安は3,000時間程度

実際の10aあたりの労働時間は、3,000時間程度と考えるのがおすすめです。

会社員の法定労働時間が2,080時間なので、1.5倍ほどの労働時間です。

実際には忙しい時期と忙しくない時期があるので、忙しい時期は一般的な会社員の2倍は労働時間があります。

忙しくない時期でも会社員と同じくらいは働きます。

家族経営の場合はできるだけ家族だけで作業を行い、足りない労働時間はパート雇用やアルバイト、作業実習生によってまかないます。

職業年間労働時間忙しい時期忙しくない時期
会社員2,080時間労働時間はあまり変わらない労働時間はあまり変わらない
いちご農家3,000時間会社員の2倍は働く会社員と同じくらい働く

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いちご農園10a規模情報まとめ

今回はいちご農園10a規模の情報を紹介しました。

いちご農園を開業しようと考えている人は、参考にしてみてください。

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