今回は農業DXいちごセミナーの環境制御のケーススタディ【ハウスの室温が高くなった理由を分析】を解説します。
農業DX、スマート農業、イチゴ栽培、環境モニタリング、環境制御に興味がある人は、ぜひ最後までお読みください。
今回はハウス室温が高くなった要因を外気温データや環境制御から調べました。
気象庁の気温データを活用
今、ご紹介しているのは兵庫県の宝塚市と神戸市の位置関係を表示しているものになります。
なぜこちらを表示しているのかと言いますと、兵庫県神戸市の気象庁の外気温のデータを今後活用して比較をするからです。
宝塚市の気温のデータがあれば良かったんですけれども、気象庁の方では観測をしていません。
そこで、一番距離が近く温度が似ているところとして神戸市が良いと考え、今回は神戸市のデータを活用することにしました。
神戸市と宝塚市の直線距離は23kmほどですので、比較的距離が近く、多少気温は違うとは思うんですけれども、かなり似た傾向になると思います。
ですので、今回この兵庫県の神戸市の外気温のデータを使って兵庫県宝塚市のハウスの気温の比較を行っていきます。
2021年の外気温とハウス室温の比較
では、まず兵庫県神戸市の外気温とハウスの気温2021年の比較をしていきます。
まずこちら縦軸で温度を示しておりまして、最低温度が15℃、最高が35℃です。
それから横軸で時期を表示しておりまして、9月の下旬から10月の下旬までを表示しております。
こちら黒の線についてが2021年の外気温で、点線が2021年のハウスの室温です。
2021年は外気温とハウス室温が同じ
こちらについて見てみますと、外気温とハウスの気温がほぼ一致していることが分かると思います。
この時期はハウスを開けっぱなしにしていることが多いので、「ハウスの気温と外の気温はほぼ同じになる」ことが見て取れると思います。
2021年と2023年の外気温の比較
次に表示しているのが兵庫県神戸市の外気温の2021年と2023年の比較をし たグラフになります。
縦軸が温度で、横軸が9 月下旬から10月下旬までの時期を示しています。
黒の線が2021年、オレンジ色の線が2023年になっています。
こちらを見てみますと、多少時期によって温度が違う部分があるんですけれども、2023年は2021年と外気温についてはあまり変わらない、ほぼ同じと言っていいのではないかと思います。
2021年と2023年のハウス室温の比較
次に見ていただきたいのが、イチゴハウスのハウス室温の2021年と2023年の比較したグラフです。
縦軸が温度で15℃から35℃、横軸が時期で9月下旬から10月下旬までです。
黒の点線で表示しているのが2021年のハウス室温で、オレンジの点線で表示しているのが2023年のハウス室温です。
これを見てみますと、2023年は2021年よりも温度が高い傾向にことが分かります。
10月上旬については同じぐらいなんですけれども、9月下旬から10月中旬から下旬にかけては温度の差がかなり大きく、2023年の方が温度が高いというのが分かると思います。
10月上旬については同じぐらいなんですけれども、先ほどのグラフで紹介した通り、10月の上旬については2023年が2021年よりも温度が低いという傾向にありました。
そのため、外温度が低いにも関わらずハウス室温が一致するというのは、結局同じようにハウスの室温について高めになっているんじゃないのかなと推測できます。
2023年の外気温とハウスの室温
次に紹介するのは、兵庫県神戸市の外気温とハウス室温の2023年の比較です。
縦軸は温度で15℃から35℃、横軸は時期で9月下旬から10月下旬です。
こちらオレンジ色の線が2023年の気温で、それから点線が2023年のハウス室温になっております。
これを見てみますと、全ての期間でハウス室温が外気温よりも5℃ほど高くなっているのが分かるかと思います。
温度の上げ下げについては一致しているんですけれども、5℃ぐらいずっと高い状態で維持しています。
これがおかしいことが分かっていただけるのではないでしょうか。
先ほど紹介した2021年のグラフをもう1回見てみましょう。
2021年の外気温とハウスの室温
2021年で外気温とハウス室温を比べると、このように外気温とハウス室温がほぼ同じになっています。
ということは2023年も同じになっているはずなのに、2023年はハウス室温が外気温よりも5℃ほど高いということになっているのでおかしいんです。
2021年から2023年でこんなに温度が変わってしまうというのはおかしいですよね。
ここで、なぜこれが起きたのかについて考えてみました。
2023年はハウスの室温が高温になった理由は環境制御では?
この時、私が最初に思いついた理由として、環境制御の設定が間違っていたのではないかと思いました。
例えば、夜間にハウスが閉まるような設定にしていたか、何かしらのタイミングでハウスが閉まるか、もしくは保温をするような設定に間違えてしまって、その結果ハウスの温度が5℃ほど高くなったのではないかと考えました。
多くの人々も同様の推測をしたのではないでしょうか。
2023年のハウス室温が高い理由
実際の理由は次の通りです。
2023年にハウス室温が高い理由は、主に2つの点が考えられます。
イチゴハウスの隣に隣接してハウスを建てて風通しが悪化
1つ目は、2023年にイチゴハウスの隣にアクアポニックス用のハウスを建設したことです。
こちらは連棟ハウスではなく、単棟ハウスです。
しかし、ハウスとハウスの間の通路幅が非常に狭く、単棟ハウスが密接した状態で横並びになっています。
その結果、ハウスのサイドの風通しが悪化し、ハウスの熱が排熱されにくくなってしまい、ハウスの温度が高くなったのではないかと考えています。
ビニールハウスの隣にビニールハウスが立ってしまうと風通しが悪くなって、その内側のビニールハウスの温度が上がるというのは、よく知られていることです。
例えば、ハウスを5棟建てたとして、そのうちの中央のハウスについては温度が高くなりやすく、両端のハウスについては温度が低くなりやすいというのは有名なので、皆さんも知っていることだと思います。
循環扇を静音タイプに交換して風通しが悪化
もう1つの要因は、2023年にこれまで使っていた循環扇を交換し、静音設計の出力が弱いタイプのものに変更したことです。
その結果、循環扇の出力が弱くなり、換気能力が失われてしまい、ハウスの熱が排熱されずに高温になったのではないかと考えています。
循環扇について少し補足しますと、一般的に巨大な大きなビニールハウスの場合、循環扇はハウスの中で風を循環させるものであり、ハウスの外に向けて熱を排熱する効果はありません。
ただ今回イチゴの栽培に使っているハウスはかなり小型のハウスで、その循環扇の風がしっかりとハウス内の温度をなくし、かつ風がハウスの外まで突き抜けるようなものを使っておりました。
ですので、一般的に循環扇はハウスの中で空気を動かすだけなんですけれども、今回のこのハウスについては、循環扇はほぼ換気扇としての役割を果たしていました。
ですので、循環扇と言っているんですけれども、「換気扇」と考えていただいてもいいのかなと思います。
環境制御の設定は間違っておらずハウスは全開の状態
それから、ハウスを締め切っていたのではないか、もしくは環境制御の設定が間違っていたのではないかという点については、栽培を担当されていた方に確認をしたところ、そういったことはしていませんでした。
9月下旬から10月下旬までのハウスは常に開けっぱなしの状態で、夜間に閉めるとか、温度によるハウスの制御設定にはしておらず、常に解放状態であったということです。
2021年と2023年の変更点については、ハウスの建設、それから循環扇の変更というのが大きいと思います。
ハウスの質問が高くなった原因というのはここにあるのではないかなと考えております。
2023年のイチゴの花芽分化が遅れた原因は2つの設備変更
今回の説明で見てきた内容が、2023年のイチゴ栽培の問題は、かおり野の第1次腋花房が遅れたこと、よつぼしの頂花房が遅れたことです。
そして、その問題は2023年の9月下旬から10月中旬までのハウス室温が高かったからだということはもう明らかになりました。
そのハウス室温が高かった理由は気温もしくは環境制御が影響したのではないかなと考えました。
そして気温を比較したところ、2023年の方が高かったという事実はありませんでした。
それから環境制御についてもハウスを閉めるような設定をしたということもないということが分かりました。
ただその代わり、すぐ隣に新しくハウスを建設したですとか、循環扇を交換したという設備の変更をしたということが分かりました。
おそらくこのハウス室温が高かったという要因は設備の変更によるものだと考えております。
2023年のハウス室温が高い原因はハウス建設と循環扇の変更
簡単にまとめますと、2023年はアクアポニックス用のハウスを建設し、循環扇を交換したことによるこの設備の変更によって、2023年は9月の下旬から10月中旬までのハウス室温が高くなってしまいました。
その結果、かおり野の第1次腋花房の花芽分化が遅れて、よつぼしの頂花房が遅れたのではないかと考えております。
環境制御のケーススタディ【ハウスの室温が高くなった理由を分析】まとめ
今回は環境制御のケーススタディ【ハウスの室温が高くなった理由を分析】について解説しました。
次回は環境制御のケーススタディ>>次作に同じ失敗を繰り返さないことが大切について解説します。
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