今回は農業DXいちごセミナーの環境制御のケーススタディ【2023年にイチゴの花芽分化が遅れた原因を分析】を解説します。
農業DX、スマート農業、イチゴ栽培、環境モニタリング、環境制御に興味がある人は、ぜひ最後までお読みください。
今回は花芽分化が遅れた原因をハウス室温のデータを基に分析します。
イチゴの一季成り性品種が花芽分化する条件
まず、イチゴの一季成り性品種が花芽分化する条件についても説明します。
イチゴ栽培では花芽分化や温度条件が非常に重要になってきまして、これを理解していないと全然理解できないと思います。
一つ目は一季成り性品種というものがあり、一季成り性品種については温度が非常に花芽分化に影響を与えます。
例えば、5℃以下の条件ですと花芽分化しません。
5℃から15℃だと花芽分化します。
15℃から25℃は長日条件なら花芽分化しません。
短日条件なら花芽分化するという条件になっています。
それから最も重要な点が25℃以上だと花芽分化をしないという点です。
温度以外にも色々と影響するものはあるんですが、今回は温度について絞って話をします。
特にこの「25℃以上だとイチゴは花芽分化をしない」という点について頭の中に入れておいてください。
データ分析により花芽分化の遅れの原因を特定
ここからイチゴの花芽分化が遅れてしまった原因について、気象データを使って分析しています。
使っているデータというのは悠々ファームさんに設置されている、悠々システムさんが開発したデータロガーです。
このデータロガーは環境モニタリング装置で、ハウスの中の温度や湿度、CO2濃度などの環境データを取得しています。
取得したデータの中で、今回はハウスの質問だけを抜き出して、私の方でグラフ化して表示しています。
色々なメーカーから環境モニタリング装置が出ておりますが、CSV形式で過去のデータをダウンロードできたり、そのシステムの中でグラフ化をさせることもできます。
そういった使い方を今回紹介しているということです。
2023年のハウスの平均室温のグラフ
今、紹介しているグラフは、イチゴのハウスの平均気温データです。
期間は2023年8月1日から11月30日までです。
縦軸は温度で、0℃から50℃までの範囲を示しています。
横軸には8月1日から11月30日までの日付が1週間ごとに表示されています。
グラフを見ると、まず8月1日から9月5日までの値は、30℃から40℃の間になっており、平均温度は約38℃です。
非常に高い温度です。
その後、9月下旬から少しずつ下がり、30℃前後から25℃前後になります。
最終的には、10月下旬には約20℃まで下がっています。
その後、11月上旬に少し温度が上がり、急激に下落し、11月中旬から11月下旬にかけては平均温度が約10℃になっていることが分かります。
このグラフは、温度の記録を取っているものですが、注目したいのは花の開花が遅れたことです。
具体的には、「9月下旬に開花が予定されていたのが、10月下旬になってしまった」という問題が起きました。
ですので、こちらの8月から11月までのデータの中で、9月下旬から10月下旬までのデータを詳細に見ていきたいと思います。
9月下旬から10月下旬のハウスの平均室温
こちらのグラフはイチゴハウスの平均気温を9月下旬から10月下旬までのデータをグラフ化したものです。
縦軸は温度で、最低値は20℃、最高値は36℃です。
横軸は日付で、9月20日から10月30日までの2日ごとの日付が記載されています。
温度について詳しく見ていきますと、例えば9月20日から10月4日までの期間の平均温度は大体26℃から36℃の間に入っていると思います。
次の期間は10月5日から11月20日あたりまでで、温度は22℃から28℃の範囲になっていることが分かります。
その次の期間は10月の20日から10月30日あたりで、温度は20℃から25℃の範囲になっていることが分かります。
9月下旬から10月下旬までの期間を大まかに3つに分けて考えると、温度が高いところから中ぐらいになって、もう少し下がっているという感じで温度が少しずつ下がっていることが分かります。
「この温度の変化が花の分化や成長に影響しているのではないか?」という仮説が考えられますので、さらに詳しく見ていきましょう。
3年間の8月から11月のハウスの室温の差
次に注目したのは3年間の8月から11月のハウスの室温の差です。
こちらのイチゴのハウスでは4年間、イチゴの栽培を行っています。
2020年のデータは載せていないんですけれども、2021年、2022年、そして今年の2023年の3つのデータを比較してみることにしました。
こちらのグラフについてはまず縦軸が温度です。
最も低い数値が10℃で、最も高いものが40℃です。
それから横軸が月です。
8月から11月までの月ごとのハウスの平均室温を表示しております。
青色の棒が2021年、オレンジ色の棒が2022年、グレー色の棒が2023年です。
8月から10月は2023年が最も高い温度
こちらのグラフを見てみますと、この8月から10月までの3ヶ月を見てみますと、グレーの棒が最も高い値になっています。
2番目がオレンジ色、3番目が青色です。
月別に比較してみると、2023年がハウスの室温が最も高く、ついで2022年、ついで2021年というように月ごとに年によって温度が違うという結果でした。
ですので簡単に言うと、8月から10月については2023年がハウスの室温が最も高かったです。
次は3年間の9月下旬から10月下旬までのハウスの質問について比較をしてみました。
9月下旬から10月下旬までのハウスの室温
こちらのグラフと表は一体化しており、グラフには縦軸が温度で、15℃から33℃までの温度を表示しています。
横軸は時期で、9月下旬、10月上旬、10月中旬、10月下旬となっています。
また、棒グラフについては、先ほどのグラフと同様で、青色が2021年、オレンジ色が2022年、グレー色が2023年です。
温度が25℃よりも低くなった時期はいつか?
こちらのグラフから読み取れる点ですが、まず25℃のところに黒い点線を引いてみました。
なぜかと言うと、「イチゴの一季成り性品種は25℃以上では花芽分化をしない」と言われているからです。
そのため、この25℃よりも温度が低くなるというのが花芽分化するかどうかの非常に重要な分岐点になります。
そこで見てみると、温度が25℃以下になるのは、例えば2023年の場合は10月下旬に平均温度22.3℃になりますので、この10月下旬のタイミングになります。
それから昨年の2022年については、9月下旬のデータについては欠損してしまっていますが、10月上旬のデータで22.1℃になっておりますので、10月上旬の時点で25℃以下になっておりました。
それから2021年について見てみると、10月中旬の温度が21.4℃ですので、10月中旬の段階で25度℃以下になっていました。
2023年については25℃以下になったのが10月下旬で、2022年や2021年と比べて遅かったということが分かります。
ですので、これが花芽分化を遅らせた原因なのではないでしょうか。
2023年のイチゴ栽培の2つの問題
2023年に起きたイチゴ栽培の2つの問題は、まず第一次腋花房の遅れと、次によつぼしの頂花房の遅れです。
この問題がなぜ起きたのかという視点で、ハウスの温度について注目してみます。
2023年は9月下旬から10月中旬までの室温が高く25℃以上で、10月下旬にようやく25℃以下になったからではないかということが分かりました。
おそらくこれが大きな影響を与えている点で、イチゴの花芽分化が遅れた要因と考えられます。
なぜハウス室温が高くなったのか?
次に、もう1つ考えてみましょう。
「なぜハウス室温が高くなったのか?」という点です。
これについては外気温が影響しているかもしれません。
また、ハウスの室温の影響ですので、環境制御が影響しているという可能性もあります。
この要因についても考えてみましょう。
環境制御のケーススタディ【2023年にイチゴの花芽分化が遅れた原因を分析】まとめ
今回は環境制御のケーススタディ【2023年にイチゴの花芽分化が遅れた原因を分析】について解説しました。
次回は環境制御のケーススタディ>>ハウスの室温が高くなった理由を分析について解説します。
【農業DX13】環境制御のケーススタディ【イチゴのハウス室温が高くなった理由を分析】
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