いちご栽培のアブラムシ駆除におすすめの農薬を紹介します。
以下のカテゴリごとにアブラムシ駆除におすすめの農薬や農薬の特徴を紹介します。
- 有機栽培でも使用可能
- 気門封鎖型
- 育苗期間中
- 開花前
- 収穫開始前
- 天敵製剤
いちごを栽培していてアブラムシに悩まされている人は、ぜひ最後までお読みください。
いちごに寄生するアブラムシの特徴
まず最初にいちごに寄生するアブラムシの特徴を紹介します。
いちごに寄生するアブラムシの種類
いちごに寄生するアブラムシは、10種類以上が確認されています。
- イチゴクギケアブラムシ
- イチゴネアブラムシ
- モモアカアブラムシ
- ワタアブラムシ
- ジャガイモヒゲナガアブラムシ
- チューリップヒゲナガアブラムシ
- ムギヒゲナガアブラムシ
- ニワトコヒゲナガアブラムシ
- バラミドリアブラムシ
- キイチゴヒゲナガアブラムシM
- ノイバラヒゲナガアブラムシ
アブラムシの種類 | 特徴 |
---|---|
イチゴクギケアブラムシ | 株全体に寄生する |
イチゴネアブラムシ | 株元に寄生しアリと共生する |
モモアカアブラムシ | 古葉に寄生する |
ワタアブラムシ | 新葉に寄生する |
ジャガイモヒゲナガアブラムシ | 株全体に寄生し密集しない |
チューリップヒゲナガアブラムシ | 株全体に寄生し密集する |
ムギヒゲナガアブラムシ | いちごでは多発しない |
ニワトコヒゲナガアブラムシ | 古葉に寄生する |
バラミドリアブラムシ | 北米でウイルス媒介が多い |
キイチゴヒゲナガアブラムシ | 岐阜県で発生 |
ノイバラヒゲナガアブラムシ | 神奈川県で発生 |
いちごに寄生するアブラムシの見た目
アブラムシはいちごの葉の裏や新葉、花のガクや果実のヘタに寄生します。
アブラムシの色はクリーム色や緑色、黒色です。
白いものはアブラムシの脱皮殻です。
アブラムシはいちごのランナーにも寄生します。
アブラムシは花やヘタにも寄生します。
いちごにアブラムシが寄生するデメリット
いちごにアブラムシが寄生するデメリットを説明します。
養分を吸われて収穫量が減る
アブラムシが寄生することで、いちごの株から養分を吸われて生育が悪くなり、収穫量が減ります。
イメージとしては、吸血鬼に血を吸われて元気がなくなるようなイメージです。
ウイルスを媒介し収穫量が減る
アブラムシが寄生することで、アブラムシからいちごにウイルスが移動して、ウイルスに感染します。
いちごがウイルスに感染すると、生育が悪くなり収穫量が減ります。
排泄物で汚れて実の商品価値がなくなる
アブラムシが寄生すると、排泄物を出し葉やビニールマルチが汚れ、いちごの実に付くと商品価値がなくなります。
排泄物に黒色のカビが生えて、カビが多発します。
いちご栽培のアブラムシに登録適用がある農薬
いちご栽培のアブラムシに適用がある農薬を紹介します。
有機栽培でも使える殺虫剤
まずは有機栽培でも使える殺虫剤を紹介します。
有機栽培でも使用できる殺虫剤の系統と有効成分
農薬 | 系統とIRAC | 有効成分 |
---|---|---|
サンクリスタル乳剤 | 食用オイル | 脂肪酸グリセリド |
サフオイル乳剤 | 調合油 | 調合油 |
ボタニガードES | 微生物 | ボーベリア・バシアーナ GHA株 分生子 |
金鳥除虫菊乳剤3 | 3A ピレトリン系 | ピレトリン |
有機栽培でも使用できる殺虫剤の特徴
サンクリスタル乳剤は、ハダニの殺卵効果と産卵抑制効果があります。
サフオイル乳剤には、ハダニの殺卵効果があります。
ボタニガードESはアザミウマにも効果があります。
サンクリスタル乳剤、サフオイル乳剤、ボタニガードESは使用回数の制限はありません。
金鳥除虫菊乳剤3の使用回数は5回までです。
有機栽培でも使えるおすすめの殺虫剤
こちらの農薬がおすすめです。
気門封鎖型で使用回数の制限がない殺虫剤
気門封鎖型で使用回数の制限がない殺虫剤を紹介します。
気門封鎖型とは、虫の呼吸をできなくして殺虫するタイプのことです。
殺虫剤の系統と有効成分
農薬名 | 系統 | 有効成分 |
---|---|---|
アカリタッチ乳剤 | 食品添加物 | プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル |
サンクリスタル乳剤 | 食用オイル | 脂肪酸グリセリド |
サフオイル乳剤 | 調合油 | 調合油 |
ピタイチ | 食品添加物 | グリセリンクエン酸脂肪酸エステル |
フーモン | 食品添加物 | ポリグリセリン脂肪酸エステル |
エコピタ | 水あめ | 還元澱粉糖化物 |
ムシラップ | 界面活性剤 | ソルビタン脂肪酸エステル |
粘着くん液剤 | でんぷん | ヒドロキシプロピルデンプン |
農薬の特徴
アカリタッチ乳剤はうどんこ病にも効果があります。
サンクリスタル乳剤は、アブラムシとコナジラミ、うどんこ病にも効果があります。
サフオイル乳剤はチャノホコリダニやアブラムシ、コナジラミ、うどんこ病にも効果があります。
ピタイチはアザミウマにも一定の密度抑制効果があります。
フーモンは展着剤としても使用できます。
エコピタは2022年製造品より有機農産物の日本農林規格へ非適合に変更になりました。
粘着くん液剤はいちごに使用できますが、「粘着くん水和剤」はいちごに使用できません。
サンヨール液剤も気門封鎖型の農薬ですが、使用回数が6回までです。
農薬の主な成分と倍率
気門封鎖型で使用回数の制限がない農薬は、主な成分と希釈倍率に違いがあります。
希釈倍率が高い農薬の方が1回あたりのコストは安くなりやすいです。
商品名 | 主な成分 | 主な倍率 |
---|---|---|
アカリタッチ乳剤 | プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル | 2,000倍 |
フーモン | ポリグリセリン脂肪酸エステル | 1,000倍 |
ピタイチ | グリセリンクエン酸脂肪酸エステル | 500倍 |
ムシラップ | ソルビタン脂肪酸エステル | 500倍 |
サンクリスタル乳剤 | 脂肪酸グリセリド | 300倍 |
サフオイル乳剤 | 調合油 | 300倍 |
エコピタ | 還元澱粉糖化物 | 100倍 |
粘着くん液剤 | ヒドロキシプロピルデンプン | 100倍 |
気門封鎖型で使用回数制限がないおすすめの農薬
こちらの農薬がおすすめです。
いちご育苗期間中におすすめのアブラムシ対策の農薬
いちご育苗期間中におすすめのアブラムシ対策の農薬を紹介します。
育苗期間中は花が咲かないので、受粉昆虫に悪影響がある農薬を優先的に使用してください。
育苗期間中は天敵製剤を使用しないことが多いので、天敵製剤に悪影響がある農薬を優先的に使用してください。
いちごの育苗期間中におすすめの農薬リスト
いちごの育苗期間中におすすめの農薬を紹介します。
育苗期間中は本圃で使えない農薬を優先的に使ってください。
農薬の系統とIRACと有効成分
農薬名 | 系統 | IRAC | 有効成分 |
---|---|---|---|
モベントフロアブル | テトロン酸およびテトラミン酸誘導体 | 23 | スピロテトラマト |
マラソン乳剤 | 有機リン系 | 1B | マラソン |
コルト顆粒水和剤 | ピメトロジン | 9B | ピリフルキナゾン |
ベストガード水溶剤 | ネオニコチノイド系 | 4A | ニテンピラム |
農薬の特徴
ミツバチやクロマルハナバチなどの受粉昆虫に悪影響がある農薬は、育苗期間中に使用するようにしてください。
モベントフロアブルは、マルハナバチに45日の悪影響があります。
マラソン乳剤は、ミツバチに10日以上の悪影響があります。
コルト顆粒水和剤は、ミツバチに28日以上の悪影響があります。
ベストガード水溶剤は、ミツバチに45日の悪影響があります。
いちごの育苗期間中の散布におすすめの農薬
こちらの農薬がおすすめです。
定植前の灌注処理におすすめな農薬はモベントフロアブル
定植前の灌注処理は、モベントフロアブルがおすすめです。
灌注処理とは、苗の培地に農薬の希釈薬液をかけて、根から農薬の成分を吸収させる処理のことです。
モベントフロアブルはマルハナバチに45日以上の悪影響があるので、クロマルハナバチを使用する場合は使用しないでください。
モベントフロアブルは天敵製剤への悪影響が強いので、天敵製剤を使用する場合はこの農薬は使用しないでください。
農薬のサイズと処理苗数
モベントフロアブル100mlで、およそ1,000個の苗に灌注処理ができます(苗1個25ml、250倍希釈)。
モベントフロアブル1Lで、およそ1万個の苗に灌注処理ができます(苗1個25ml、250倍希釈)。
いちごの苗の定植時に植穴混和する粒剤
いちごの苗を定植するときに植穴混和する粒剤を紹介します。
植穴混和とは、粒状の農薬を苗を植える植え穴に入れる処理のことです。
粒剤の系統とIRACと有効成分
農薬名 | 系統 | IRAC | 有効成分 |
---|---|---|---|
モスピラン粒剤 | ネオニコチノイド系 | 4A | アセタミプリド |
アドマイヤー1粒剤 | ネオニコチノイド系 | 4A | イミダクロプリド |
ベストガード粒剤 | ネオニコチノイド系 | 4A | ニテンピラム |
粒剤の特徴
モスピラン粒剤は天敵製剤に30日以上の悪影響があります。
モスピラン粒剤はコガネムシ類の幼虫に効果があります。
アドマイヤー1粒剤はミツバチに30日の悪影響があります。
ベストガード粒剤はミツバチに40日の悪影響、マルハナバチに20日の悪影響があります。
定植時の植穴混和のおすすめの粒剤
いちごの苗定植から開花2週間前までの散布におすすめの農薬
いちごの苗定植から開花2週間前までに散布するのがおすすめの農薬を紹介します。
いちごの苗を定植してから開花2週間前までは、受粉昆虫に悪影響がある農薬を優先的に使ってください。
農薬リスト
- マラソン乳剤(ミツバチへの悪影響が10日以上)
- ロディー乳剤(ミツバチへの悪影響が14日以上)
- コテツフロアブル(ミツバチへの悪影響が10日以上)
- ハチハチフロアブル(一番花の開花まで)
農薬名 | 系統 | IRAC | 有効成分 |
---|---|---|---|
マラソン乳剤 | 有機リン系 | 1B | マラソン |
ロディー乳剤 | ピレスロイド剤 | 3A | フェンプロパトリン |
コテツフロアブル | クロルフェナピル | 13 | クロルフェナピル |
ハチハチフロアブル | METI剤 | 21A | トルフェンピラド |
農薬の特徴
マラソン乳剤とロディー乳剤、コテツフロアブルはミツバチへの影響が10〜14日以上あるので、開花2週間前までに使用してください。
マラソン乳剤とロディー乳剤、ハチハチフロアブルは天敵製剤への悪影響が強いので、天敵製剤を使用する場合はこの農薬は使用しないでください。
ハチハチフロアブルは一番花の開花までに使用してください。
いちごの苗定植から開花2週間前までにおすすめの農薬
こちらの農薬がおすすめです。
いちご開花から収穫期間中の散布におすすめなアブラムシ駆除の薬剤
いちごの開花から収穫期間中に散布するのがおすすめのアブラムシ駆除の農薬を紹介します。
いちごの収穫期間中に登録適用がある農薬
殺虫剤の系統とIRACと有効成分
農薬名 | 系統 | IRAC | 有効成分 |
---|---|---|---|
サンヨール液剤 | 有機銅系 | M1 | DBEDC |
チェス顆粒水和剤 | ピメトロジン | 9B | ピメトロジン |
マブリック水和剤 | ピレスロイド系 | 3A | フルバリネート |
アーデント水和剤 | ピレスロイド系 | 3A | アクリナトリン |
バリアード顆粒水和剤 | ネオニコチノイド系 | 4A | チアクロプリド |
モスピラン顆粒水溶剤 | ネオニコチノイド系 | 4A | アセタミプリド |
日曹ピラニカEW | METI剤 | 21A | テブフェンピラド |
ベネビアOD | ジアミド系 | 28 | シアントラニリプロール |
ウララDF | フロニカミド | 29 | フロニカミド |
殺虫剤の特徴
サンヨール液剤は、気門封鎖型の農薬で、うどんこ病や灰色かび病に優れた効果があります。
チェス顆粒水和剤とウララDF、モスピラン顆粒水溶剤は、アブラムシの駆除効果が高いです。
マブリック水和剤は、カブリダニなどの天敵製剤とミツバチに悪影響があります。
アーデント水和剤は、ミカンキイロアザミウマにも殺虫効果があります。
日曹ピラニカEWは、ハダニ類に効果があります。
ベネビアODは、銅剤や展着剤との混用で薬害が発生します。
おすすめの農薬
こちらの農薬がおすすめです。
いちごのアブラムシの抑制に効果がある天敵製剤
いちごのアブラムシ対策に効果がある天敵製剤を紹介します。
コレマンアブラバチ
いちごのアブラムシにはコレマンアブラバチが効果があります。
コレマンアブラバチがアブラムシを駆除する仕組み
コレマンアブラバチは、アブラムシの幼虫に卵を産み付けて、幼虫がアブラムシの体内で育ちます。
そのコレマンアブラバチの幼虫がアブラムシの幼虫をマミー(蛹)にして、成虫になって体外に出てきます。
そうすると、アブラムシは死にます。
成虫になったコレマンアブラバチは、他のアブラムシの幼虫に卵を産み付けます。
日本では2つの会社からコレマンアブラバチの天敵製剤が販売されています。
アリスタ社のアフィパール
アリスタ社のアフィパールという商品があります。
>>アフィパール
アグリセクト社のコレトップ
アグリセクト社のコレトップという商品があります。
おすすめの天敵製剤
アブラムシの天敵製剤はコレトップがおすすめです。
弊社の実験農場でもコレトップを使用しており、アブラムシを低密度で抑制できています。
農薬を使用するときの注意点
農薬を使用するときの注意点を説明します。
農薬は使用ルールを守ってお使いください。
農薬の適用などの最新情報を確認する
こちらのページで紹介している情報は誤っている可能性や古い可能性があります。
正式な情報は商品の公式サイトやメーカーにお問い合わせしてご確認ください。
こちらのサイトでは一切の責任を負いかねます。
複数の系統の農薬でローテンション散布をする
農薬には商品名とは別に、有効成分があります。
その有効成分は、数十個の系統に分類されています。
1つの系統に複数の有効成分があり、複数の農薬が存在します。
同じ1つの系統の農薬を連続して使用すると、病気や害虫がその有効成分に対して抵抗性を獲得しやすいです。
病気や害虫が抵抗性を獲得すると、その農薬が効きにくくなります。
そのため、農薬を散布するときは1つの系統を連続して使用せずに、複数の系統の農薬をローテンションしながら散布してください。
農薬の系統は「作用機構分類(RACコード)」を確認することで、どの系統の農薬か判別できます。
展着剤を混用するか判断する
展着剤を使用することで効果が高くなることが多いので、展着剤の使用を推奨します。
ただし、農薬の中には展着剤を使用しても効果がない農薬や使用すると薬害が発生する農薬があります。
展着剤を混ぜても良いかどうかは商品の公式サイトやメーカーにお問い合わせしてご確認ください。
混用や高温、低温などで薬害が発生するリスクがある
複数の農薬との混用や高温や低温によって、薬害が発生することがあります。
薬害とは、葉やガクの焼け、果実の汚れなどです。
ミツバチやクロマルハナバチに悪影響がある
農薬はミツバチやクロマルハナバチなどの受粉昆虫に悪影響があることがあります。
悪影響が出ると、ミツバチやクロマルハナバチが大量に死んだり、イチゴの花に寄りつかなくなります。
カブリダニなどの天敵製剤に悪影響がある
農薬はカブリダニなどの天敵製剤に悪影響があることがあります。
悪影響が出ると、カブリダニなどの天敵製剤が死にます。
アブラムシの本
アブラムシの勉強をしたい人には、こちらの本がおすすめです。
いちご栽培のアブラムシ駆除におすすめ農薬まとめ
今回はいちご栽培でアブラムシ駆除に使用するおすすめの農薬を紹介しました。
アブラムシで悩んでいる方は参考にしてみてください。
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